#2 どの世界でも定番はありテンプレの様な出来事だけとしょうがないよね

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全く持って雨が嘘の様に晴れやかだ、それに伴って幾分、湿気って肌寒のが玉に瑕だが。。

その日は朝の身だしなみを整え、食堂で先に朝食を食べているルイーンに挨拶を交わすも何も。突飛に食って掛かられた。


「お早うございます、坊ちゃん!!話を聞きましたよ!!」

「忙しい中で急に話を振ったのは、俺の方です。それにこちらとの事実確認をした方が良いかと思いまして・・・。」

「ふむ・・・実は・・・『アマチ黒魔獣化襲撃事件』と関係して・・・情報が錯綜さくそうしておりまして・・・」


こんな始まりから、朝食を並行して進める。

例のアマチの一件以降、ルイーンさんは色々手筈を整える為に屋敷を留守にしていた。原因はドーニンドー商会からの俺からの手紙だった。


「実を言うとその手紙で知って。ラグナ様達もスレイヤー村から離れて旅を・・・。私とオマリー様で奔走していました。ラグナ様の目的は、魔銀鋼とその武具に関する事です。」

「魔銀鋼の武具・・・それって・・・」


思い当たる節がありその事をルイーンさんに話す。

それは、一連の黒化魔獣との戦闘。ゼノス騎士団長からの純魔剣以外の無効化の事実。

それを聞いてルイーンさんは頷いて、口を開いた。


「はい・・・石持ち魔獣の案件はラグナ様にも思う節があるそうで、直にグランシェルツへと・・・。ラグナ様にとっては第二の故郷でもあります、因果なものですが・・・。」


石持ちの魔獣に関しては元来の魔獣に比べて厄介奴しかイメージが沸かず。内心ぼやき交じりで俺は喋った。


「石持ち魔獣・・・黒化魔獣と言えば良いか・・・俺の魔剣では何ら問題なかったが、ゼノス騎士団長は従来の魔剣では通じなかったとおっしゃられた・・・。」

「その石・・・たしか『黒妖石』でしたね・・・私も又聞きですが驚きました。その個体は純粋な魔銀鋼以外ではと・・。その一連に関して、ラグナ様は騎士団長様と直でお会いするそうです・・・何事も無ければいいんですが・・・ん・・・おや・・・坊ちゃん御存じで?」


怪訝な顔をするルイーンさんは、俺は彼の疑問に答える。


「ああぁ・・実は・・・その辺りは・・・ネイア姫の従姉にあたる・・・ダルク侯爵様から伺った・・・父さん達が囚人城でひと暴れしたらしいって・・・グランシェルツでの目的って言うのは・・・魔銀鋼?魔剣?・・・両方?」


俺のイントネーションで察してくれる。聞き入れない気遣い・・・流石商人・・・!!


「あ~~~・・・・はい・・・じ・・実は魔銀鋼の魔剣には、素材と使用者以外にも課題があるのです。それを踏まえた上で考えても、昨今の事態は異常なのですよ・・・」


それは俺が想像以上の事実を知った。

魔剣のもう一つの秘密を聞かされて。魔剣の素材以上に秘められた事がそこで関与している事に驚きもあったし困惑もした・・・。


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ルイーンさんとの相談事の後、俺は一人ダルダの家に向かう事にした。

シャラハはミスティアと同伴でネイア姫の飛行魔法の習得と共に体術の鍛錬だそうだ。


俺は、レイグローリー中央街道区画へと進んで・・・更に中央街道中心に枝分かれの中にある、ある街道へと歩を進めた。


そこは『ギルド街道』読んで字の如くだ。

大半の通行人の殆どは、物騒な獲物を主張するし。如何にも重そうな鎧と盾を担ぐ気性の荒そうな連中街道一帯を染めていた。


大元の総合ギルド本部も薄っすら見え、すれ違いざまに横目でチラチラと目配せする。


「随分と青臭い奴だぜ・・・」

「ナリが御大層な格好を・・・見ろよあの傷・・・」

「・・・ご立派なのは刀剣と眼帯かよ・・・ケケケ・・・」


黒皮とファー付きフードの革ジャン姿の俺は恰好の嘲笑対象らしい。眼帯に顔の傷・・・そりゃぁ絡みたくもなるだろうな・・・。

それでも俺は気にも留めず、歩いていく。


ギラギラとした面々の合間を縫う様に歩を進める。


目的地は、鍛冶、冶金を主とした地人系の鍛冶屋ブラックスミスギルドだ。そこにダルダが居るのだ。


しかも、その前には随分と人だかりが出来上がっている・・・それは野次馬だった。


「おいおい?俺達・・・『ゲスノズ商会』が親切心で魔銀鋼を回してやろうって言うんだよ?」

「随分、不足してるんだろう?なぁ・・・?」

「なぁあに、俺達だって悪魔じゃねーよ・・・ちゃんと傘下に入れば・・・なぁ?」


野次馬の集まりの向こうからでも聞こえる怒号に次ぐ怒号は焼けた様な声を張り上げていた。野次馬に押し競饅頭されながら入っていくと・・・。


それはそれは、胡散臭ささと脂臭く加齢臭が凄まじく臭いそうなジャガイモの左右に青い毛を生やした。

食べたらお腹を壊しそうな芋禿爺と、その後ろにはどゾロゾロと並んでいた。連中に目を疑う。


なんせ、ここは異世界、剣と魔法とファンタジーである。

なのにその面々は、ボッチでは生きていけ無さそうなパリピ勢を彷彿とさせるガングロ。しかも芋禿げをリスペクトしてそうな髪型と髪染めをしていた。

モヒカン、ロン毛、ダブルモヒカン等々、チンピラの異世界離れと言う言葉がしっくりくる。世紀末ルックが如何にもな浮いておりお前生まれた世界違うだろうって心の中で突っ込んでいた。


「ったく・・・ガビー共が・・・」


野次馬の一人が愚痴った。「ガビー」と言うのはこの世界のチンピラの蔑称だ、虚栄と虚偽でイキリ散らす連中を指す。


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「グフフ・・そうそう・・・魔銀石の価格の跳ね上がりは個人経営の貴方がたには・・・」


最初に思った事は、見栄張っただけの様なガビーの安否だ。

おいおい・・・地人族の怖さ知らねーのかよ・・・。


「あぁん?だからなんでぇい!!法外に魔銀石を売りつけようとする奴なんぞに下げる頭は持っとらんわ!!ヴォッ・・・ゲェイ!!」


そう言ってギルド面子は血でも吸ってそうな、年季と手入れの入った鉄槌を皆持ち出す。ギラギラした殺意に似た眼光で一触即発の一方的殺戮ショーが始まろうとしていた。その面々の後ろに、心配そうに立っているダルダを見つける。


「お!いた!!・・・おーーーい!!ダーーーールダ!!」


野次馬掻き分け、騒動の広場へ乱入し。ダルダが驚いて顔を向けるよりも早く、如何にも頑固おやじと言わんばかりのオッサンが、俺に鉄槌を向けた。

「あんれまぁ?レージさん?いやな時に来たダスね・・・」

「なんじゃぁい!!あのクソガキ!!こんな時にうちの娘をナンパかぁ?!・・今は悶着の・・・んん!!アンタその剣!!」


『娘命』なダルダの父が婿ですら撲殺しそうな鉄槌を置いて、俺の腰元の魔剣を見て目を見開く。

それを隙と言わんばかりに『ゲスノズ商会』かびたジャガイモが声を上げる。


「やれぇ!!」


第一声に、卑怯常套ひきょうじょうとうを絵に描いて形にした様な。世紀末チンピラシリーズ『ガビー』の先鋒が『ヒャッハーーー!!』と言いそうな勢いで駆け出す。足が速く中々だ。

「ぬぅ!!」

卑劣漢の卑劣な策に驚くダルダの父親。そんな中で俺は膝を曲げて、ワザとらしく剣の柄尻に手をかけ、鞘尻が上がっていく。

それがガビーの下顎をせり上がって、喉仏に直撃。


ドゥウ!!


奴は物の見事な程に、不自然な程に後方に吹っ飛んでいだ。

屈強な野次馬達がガッツリ肉壁キャッチ、俺に向けてサムズアップ。俺もサムズアップで返す。こういう空気は、一度流れたらどうしようもないよな・・・。


「親父さん、ちょっとこれ、持ってて。」

と黒皮のファー付きフードジャケットを脱ぐ。こういう場合のご退場方法はこの手に限る。


バッサァアア!!


一気に歓声が上がる。


「おいおい!!アイツ!!ガビーとやる気だぜぇ!!!!」

「みろよ!!あのガダイ!!いい体してんねぇ!!」

「キャーーーーー、甘い顔しているのに、首から下がヤジューーヨ!!!」

「ヒューーーー鋼の野獣の様な身体しやがって!!!!おらぁガビー共!!つえぇんだろ!!」


と・・・無責任な声援が一気に湧き上がった。

一年の旅先で、一つ覚えた事がある。


言葉が理解できても話の通じない者には拳が黙らせる、異世界の風物詩である。


そんな俺の行動に、驚くダルダの父親らしき地人族が俺を凝視する。


「こぞう?」

「この喧嘩は・・・俺が買ったぁ!!」


俺は、見栄を切ってから腰元にあった十手を手にする。世紀末シリーズでは火炎放射器が似合いそうな実行部隊の三人組が舐め擦りまわして、俺の獲物を見て失笑。


「ナリとガタイはご立派で、腰の剣はお飾りかぁ??ああぁ??」

「俺らはこの獲物で魔獣を狩りまくってる魔獣ハンター様々だぜぇ!!??」

「そんな鉄のきれっぱしなんぞ・・・」


最後のセリフを吐き捨てたモヒカンガビー。彼が俺に目掛けて、唯々ぶ厚いだけの佩刀を振り上げ、振り下ろす。一回、二回、三回。中々のへっぴり腰具合が様になって、とうとうモヒカンガビーが肩で息しはじめる。

おいおい・・・盛ってんなぁコイツ・・・。俺以外にも奴に失笑の声が上がる。


俺は首をかしげて鼻で笑った。


そして、奴が深呼吸し、呼吸を整え、ようやく渾身の一撃を繰り出す。俺はそれを見越して、十手で受け止め払い落とした・・・が。


バギン!!


「げぇええ!!」

「あ?」



思わぬ驚きの一言を俺が発し、ついつい咄嗟にそいつの鼻の骨をへし折る。十手の先からベキッという痛々しい。白目むき、上半身を仰け反ると、反応的に横っ腹に蹴り飛ばす。


ボッゴォオオ!!!


魔法力もふんだんに放出し吹き飛ばした先は、フィジカルな野次馬にキャッチさせる。悲鳴も上げれず、ジャガイモ爺とその仲間は只々仲間の醜態ぶりに狼狽する。


「おいおい・・・なに驚いてんだ?」


俺はすでに畳み掛ける行動を起こしていた。

連中の死角から駆け出し接近し、我に返ったハゲ頭の顎髭ガビーの鎖骨に、十手を振り下ろして撃ち込む。


ヒュッボ!!!ビギィイ!!


鎖骨がビキッとなり、電撃よりもキツイ痛みで悶絶の声を上げ。痙攣し後方によろめいた。刹那、奴の重心を蹴り崩し、顎を掴んで持ち上げてからの・・・ギュルッとハゲ顎髭ガビーをひっくり返した。

「なんだぁ??・・・あ?」

ロン毛ガビーが気づくも振り向いた時には。ハゲのさかさまになった・・背中だ。俺はその時一歩踏み込み、ひっくり返った奴の腹に発機の声を上げて。ドストレートのパンチを見舞う。

「オゥ・・・るぁっ!!」


ズドォオッ!!!


十手を持った拳で、思い切って二人同時に吹き飛ばし。歓喜交じりに野次馬にキャッチさせる。連中をガッツリ受け止め。容赦なく、のびたチンピラを輪の真ん中に投げ返す。ビタンと痛々しい石畳に叩きつけられた。


「爺さん、半分はノしてやったんだ。この意味わかる?」

禿げたジャガイモ爺は驚愕する。


「な・・・なにぃ??」


「わかんないのか?ジャガイモのお連れさんがお持ち帰りするんだよ?」


その言葉を聞かせると。

今度は一気に野次馬達が『帰れコール』。

見事に空気は一転し、アウェーと化したジャガイモ爺とそのガビーズ。歯軋りとしながら負傷者を担いでズルズルと退散する。


「くそがき!!貴様の特徴覚えたからな!!あとで後悔するなよ!!」


定番のセリフを吐き捨てる後ろ姿は、何と言うか・・・なんも言えない・・。

いつの世でも、こういう連中がいるもんだと感心するには少々頂けない事だと知る。

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