#8 命のやり取りをする中で未知との敵との遭遇は警戒すべきだよね


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新霊峰大陸は三つの地方に分け、その内の一つ大南東地方にレイグローリーはある。

今向かっている目的地は大体的な街道の道半ばにある、中継都市に向かっていた。


『三国街道』というのは『南西洋海岸街道』とも言われており。

神聖国家サーヴェランスを始点とし、騎士国家グランシェルツ。そこから魔導国家スフィア・アーツと一本線に繋げた大体的な商業街道の事を指す。


街旅籠が各所に繋げており、長旅から旅行者、冒険者と目的は様々だ。

目下旅路と言うよりは所謂お遍路の様な気楽に歩ける道として有名で。治安も警邏騎兵の巡回が密である事もあり、春先から夏にかけては年若い子供や老人が旅する姿が名物だった。

旅慣れぬものからすると、最初はこの道を通る事から始まっており。各都市の大体的な生命線である。


遠くに見える南西洋が広がっており。それを見渡す位置に存在する大街道の道を荷馬車で揺られていた。そこからでも数々の帆船が横行しており、それを名物とする港町も海岸沿いに広がって居た。


「この道通ったのは久々だス~」

「私は随分通っていないので・・・様変わりしすぎて驚きました・・・」


ダルダの言葉に調子を合わせるミスティア。ネイアは一度あり、ヴィラは無いと話していた。意外なのがハルーラで、よくこの街道を移動しており。様々な旅籠街での名物料理を知っていた。


「すっげ・・・・こんな整備された道・・・初めてみたな・・・」

「レージ様は北回りでしたよね?」

「そうそう・・・ホント、驚くよこういうインフラ整備。」


途方もない道なき道を進んだからだ・・・。

白耳長の言葉を薄っすらと理解した。


馬車の数は一クランに一台、そして前衛特化のクランチームが6チーム分の馬車と補給用の馬車が2台。8台の大所帯。

皆、受験時の私物装備で身を包み、そこにクランの刻印とエンブレムシードを所持している。

レイグローリー同盟学園の紋様を掲げ。それをみて、道端の子供らがごく稀に手を振っている。人の良い、ヴィラやミスティア、ダルダが手を振り返している。


ベース拠点としている『街道中央都市アマチ』。

北方に位置する大森林を目標とし、小型魔獣が散在しており。三国の学徒組織に加えて、レイグローリー同盟学園の面々との混合組織による掃討が開始される予定だった。


だった・・・そう俺達に言い渡されたのは、未帰還の斥候の捜索と言う任務。

夕方頃に到着した俺達に司令官と言う男から無理やり、言い渡されたのだった。


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「空飛ぶ魔獣・・・なんて・・・」


アマチ北方の門から5㎞にある大森林、前日から斥候のグランシェルツ騎士団の一師団。0910部隊は意味不明な言葉を残して音信不通し失踪したという。

その部隊の捜索をレージ達、クラン白竜ナーガに捜索任務を与えた。

俺はヴィラの言葉に続いて、口を開いた。


「嘘か誠か分からないけど、もし事実なら警戒は密にした方が良い。」


鬱蒼な森を突き進んだ。ネイアはこの理不尽な任務を与えた人間を見知っていた。


「魔法国家のジーベル伯爵は、ハンスとは知人同士でしたからそれが原因でしょうね・・・」


成る程・・・。あのハンスと仲が良いと言う事は・・そういうことか・・・。

失踪者である部隊が持っている魔法具の反応を利用し。

俺、ミスティア、ネイア、ハルーラの魔力感知を駆使して捜索する。俺は幸い、彼らの持っている魔法具は感知出来た。あまりにも呆気ない程見つかったので、かなり拍子抜けした。

「っていうか、何でこの程度の感知能力を感知できないんだ・・・?」


何気なく出た愚痴にヴィラとハルーラは口をそろえてツッコミを入れる。


「「君(貴方)が規格外なのよ!!」」


だが、ツッコミ直後に俺の表情を読み取る。それを察して皆駆けだし始める。それは無数の魔獣の反応を感知したからだ。


「・・・急ぐぞ!!みんな!!連中が危険だ!!!」


俺に続いて、一同迷いなく駆け出していく。


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「ひぃいい!!クソ!!クソ!!」

「援軍はもう来ない!!・・俺らを置いてけ!!」

「バカ野郎!!仲間を置いていけるかよ!!!」


「くそったれ!!」



それから5分も経たず。0910部隊を視野に入れた、数人は一部赤く染まって負傷し動けず。一人が奮戦して、魔獣になぶり殺しされる間際だ。


「くそ!!赤蟻獣だなんて・・・・・ぐぅうう!!!」


深紅の身体から口から溶解液を吐き出す。赤霧の飛び散った。恐怖に身を丸める騎士部隊の面々。諦めの断末魔を上げる、俺の詠唱でそれを遮る。


灼炎閃しゃくえんせんッ!!」


ビュォ!!ッ!!ジョアアアアアアアアアア!!!!


「なっ!?」

「火の魔法?!誰が??」


俺の魔法に騎士達が驚いていた、『灼炎爆』とは異なる炎の魔法。『マジックブラスター』の炎版。閃光の様に速い弾速と熱線による対象の蒸発を目的とした高殺傷魔法。俺の露払いにヴィラの戦技、『螺獣旋風』が一瞬に赤蟻獣を殲滅する。

俺がその撃ち漏らしを切り捌いていく。


「ご無事の様子で?0910部隊の皆さま?」


「じゅ…獣人?!お前らは・・・?」


「俺達はレイグローリー同盟学園のクラン白竜ナーガ!!命令で君たちを助けに来た、殿しんがりは俺に任せてヴィラはネイアと一緒に彼らの護衛!!ネイアはダルダ達が来るまでの援護と護衛!!」


「レージ殿、わかりましてよ。ハルーラ!!痛み止め飲ませたら撤退します!!」

「レージ様!!そちらに敵増援が・・・軽く30体はいます・・」


ヴィラが忠犬の様に負傷者近隣への周辺へ、そこにネイアが警告しダルダ達が到着する。ヴィラとネイアが負傷者の護衛に付き、ハルーラとダルダが怪我人を簡単に診察。幸い致命傷を防げたのは立派な鎧のお陰らしい。


「俺・・・以外は自力で歩けない・・・歩けないやつが・・・気を付けろ!!赤蟻獣と緑蟻獣の混成で・・・!!それだけじゃない・・!!」


彼らを守り通したリーダ格の騎士の一人が切れ切れに明白な説明。森の陰からの、緑蟻獣の爆破液が飛び散った。それに気づくも彼も体に疲弊の痕跡があったのか反応があまりにも遅すぎた。


せきっ!えんっ!!・・・しょおぉおおおおっ!!!!」


ミスティアの『赤焔衝』が爆破液を相殺。そのまま、緑蟻獣を薙ぎ払う。熱量によって一気に自爆を起こして、飛び散る様にに皆驚愕する。

「ヒエッ??」

「一瞬かよ・・・」


「ハイハーイ、痛み止め飲んだ・・・?ダルちゃん何人担げる?」

「ホイホイホイ!!大丈夫だス!!ホイホイホーイ」


「オイオイ?!まじかよ!!」

「アバババ!!アバーーーーー!!」

「面目ねぇ・・・」

ダルダは大の鎧をまとった男を三人、事も無げに軽々担ぎ上げる。ハルーラが肩を貸して騎士を歩かせる。


「レージ君?こっちは撤退準備完了よ!!・・・ん?」

「なんだスか?この音?」


そんなハルーラとダルダに妙な音が耳に入る。その音を聞いた騎士達が恐怖した。

「アイツだ!!」

「空飛ぶ魔獣だ!!」


「なに?」


俺はその羽音は聞いた事があった、それは蚊とか蠅とかに似た規則的なノイズ。俺は上を見上げる。

新緑の陰から黄色いシルエット・・・黒と黄色のツートン。爪が真っすぐ伸びた、長い先細りの槍の如くに伸ばしていた。虫特有の手長足長の容姿に一番の面積を持っていたのは、臀部で異様なふくらみ、その切先にも針を生やす。間違いなくそれは前世の世界では「蜂」にそっくりな魔獣だ。

数は3体、バチバチと光る茨を放っていた。


連中は、空中から雷魔法を、撤退するヴィラたちに向けた。

ミスティアが警戒するも、この手の相手には対処が早いネイア姫が咄嗟に『水流膜』と詠唱する。


ボワッ、ザッバァアアアアア!!!


青白い淡い柔らかな発光、共に白波の透き通る水の膜を一面に放って。雷撃の光が外周へ飛び散ると一瞬に夕闇の森の光景を辺りを照らす。

あーこりゃ、厄介だな・・・とりあえず勤勉なリーダーさんも下がって貰おう。


「くそ!!あいつらやって来やがった!!マズイ!?」


「リーダー君もこれ以上は戦えないだろう?・・・仲間と一緒に下がれ!!!」


「はぁ?!空飛ぶアイツらから逃げられねぇーぞ!!?」


押し問答する暇はない・・・誠実な人だ・・・心苦しいが力技でご退場願おう。

ヴィラにアイコンタクトする。


「まったく・・・連中は貴方に任せます!!フン!!」

「が・・ッ・・は・・・」


ヴィラの強烈な当身に、一気にリーダー格の男は悶絶しながら膝をついた。打たれ強い男らしい。彼を肩に担がれる、ヴィラに向けて言い放った。

「アラ・・・頑丈?レージ殿・・・」


「まぁ・・事前対策は織り込み済みだ・・・俺に任せろ!!ネイア姫!!後の処理よろしくお願いします!!」


俺は剣をスラッと引き抜いて身構える。それを見てヴィラとネイア頷いた。


『蜂』共は再び電撃魔法を繰り出す。目標は逃走する面々だった、俺は咄嗟に『螺閃輪』を放つ。雷魔法は面攻撃、面範囲に対して『螺閃輪』はそういう相手と相性の良い媒体だ。

『螺閃輪』の軌道を大きく遠回しに駆使し。相手の広範囲で能率いい雷魔力を吸収させた。


「はぁ?!!なんだアレ!?」

「あの男の規格外ぶりが理解出来て万々歳ですわ。安心できるでしょ?」

「しゃ・・しゃれにならん・・・あの男・・・」


一度手前に戻った『螺閃輪』を再度放った。その一体は咄嗟に回避する。その軌道の先に、飛行魔法を乗せた突貫剣撃を『置いた』

その軌道は地上から空中と言う常識外れの剣閃だ。


ヒュッボ!!ジュッバァアアアア!!!


一撃が『蜂』の身体を真っ二つにした。連中からすれば予想外の相手、空が飛べる相手と相対する事に驚いている様子。チャンスだこっちは畳みかける。


「俺が『飛べない』相手と思ったか?蜂野郎!!行くぜ!!」


飛行魔法の挙動を駆使し、無詠唱の『マジックブラスター』で乱射弾幕を展開。残りの『蜂』共の軌道を制限する、制止した連中の動きを見計らって一気に詰める。

飛行魔力の急加速に、自身の剣撃動作の噛み合わせはまだ甘い。


「フン!?」


ヴォン!!ビュォッ!!


剣撃の振りと飛行魔法とのタイミングは中々難しく。地上戦とはまるで違う。剣撃の空振りからの敵の反撃をかわし、真上を取る。


ヴォン!!ビュォッ!!


急降下のその一撃は『蜂』の腕部の刺突針の様な爪を斬り落とし、敵眼前で急停止の際に咄嗟に腰元の「十手」を引っ張り出す、一気に中枢の厚い装甲の隙間に目掛けて突き立てた。


ズ!!ゴッ・・・ズズ!!!


十手を通して、無属性魔法の強力な発勁の様な浸透するインパクト内側から破壊する。


ボゴボゴゴッ!!ゴオッ!!


口元から血が噴き出し一気に墜落する。それを見た最後の一体が、電撃の球を放ちながら後退しようとする。逃げて増援でも呼ばれたら厄介だ、しかし向こうもかなりの速度で逃げる。


「厄介だ・・逃がすか!!」


掌に圧縮された純魔力を、更に指先で電磁バレル状の力場を展開し。瞬発力を一気に爆発させて飛ばす。『インパルスブラスター』・・・腕部の魔脈と指先の力場のタメを徹底的に簡易化させ、鍛錬していた。実射は今回初めてだ。


ギュルルルル・・・・ヴォオオオオオオ・・・・ゴォッ


螺旋状の閃光が伸びる。

軌道の先にあった、電撃の球が螺旋の渦に吸着消滅。どんどん迫る『蜂』への螺閃の閃光弾。

奴にはスローに見えたのだろう、身動きできない様子だ。


ゴッ!!ヴォヴォヴォヴォ・・・・!!!!ゴォオオオ・・・・・!!!


「・・・やりすぎたか・・・。」


飛行魔法で漂いながら消えていく光る球体を見届けた。球体直下の森一面は酷く焦げた茶色く染まって、煙が上がっていた。

両手で放つよりはるかに実践的で威力もそこそこだが、着弾後の周辺影響はネックだな・・・。


「おっと、帰る前に・・・」


先ほど倒した原型を限りなく留まった蜂魔獣の一体を回収しベース拠点へ戻る事にした。


「とりあえず、こいつを持っていけば上の連中も理解を示すだろう・・・多分・・!!」


内心不安を過らせつつも帰路に向かった。なんせ全体未聞の新個体の存在に上の連中がどう反応するか・・・。

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