第24話 終末のレイオーク辺境伯領

 

 夕方近くになると漸く気付き始めたレイオーク辺境伯軍

彼等の総員数は

奴隷戦車部隊が丁度1200名で略九割が獣人と亜人達だった

そして騎馬部隊、歩兵部隊、補給部隊都合約1000名のヒト種


ベリアルとマーベリカ11世は正悪金剛見立鏡を使い

1200名の奴隷達を審査し始め

審査に合格した者だけを既に完成している

解呪ポーションを使い奴隷紋を消していった

そして驚いた事に本来犯罪者で有るハズなのに

全ての犯罪奴隷達が無実だったのだ

此れには流石に周りの人々迄も驚いてしまっていた


やがて1200名の入国審査が終わり全員が安堵の表情を見せていた

そしてまたも驚いた事に犯罪者に陥れた犯人達が

騎馬部隊と歩兵部隊に全員が揃っていたのだ

本人達はハイデリの命令に従ったまでと釈明

丁度日乃本ではフカヒレが流行りサメ不足が生じていたので

犯人全員にサメ釣りの餌になる事を壇上に立ち

ハンドスピーカーにて命令を下した


シュ)「諸君らはどんな命令には背かない素晴らしい軍人達で有る!

私は貴君等を誇りに思う

由って次の新たなる命令はサメが不足しているので

国民の為にサメ釣りの餌になる事を命ずる

諸君らは誠に素晴らしい軍人精神を持っておられる

ワタクシは感服致しました」


犯人全員が緩んだ顔から急に青褪めてしまったのは云うまでも無いが

脅しはそれくらいにして

後日犯罪奴隷として業者に卸され

レイオーク辺境伯領に有る彼等の資産は全て没収され被害者救済に充てられる

問題が有るとすれば彼等に家族が居た場合だろう

路頭に迷う事に為るし仕返しと云う名の被害も受け易いだろ

尚日本の様に加害者自身が保護される事は一切無いし

自分の置かれている立場を利用した場合は更に罪も重くなる

また命令を受けただけの本当の戦争奴隷の場合は

罪が軽く短期間で出所する事も可能な人達も多い

同じ行ないをしても全員が一律ではないのだ



一方此方は恐怖でお漏らしをしながら

自分の屋敷に夜駆けで必死に辿り着いたハイデリだが

周りの確認する余裕もなく屋敷の玄関を潜り抜け

ルーベルトを大声で呼び付け

自分の屋敷が宰相達の宿泊所になっている事すらも

すっかり忘れてしまい安心をしていた


ハ)「オイ!!先ずは風呂に入る

後は飯の準備と寝る準備をしておけ!!」


ル)「え~と御屋形様!

先ずは御挨拶の方が先かと・・・」


ハ)「んっ!?

誰に挨拶をするのじゃっ?」


ル)「レギウス宰相閣下にで御座います」


ハ)「エッ・・・・・?????

あっ!!思い出した!!宿泊所はうちだった!!」


丁度其処に宰相が現れる

レギウス)「そうじゃ

それもあの時決めておった事じゃ

行き成りの250人は街に迷惑を掛けるでのう~

見た所お主一人で戻って来たのか?」(此の時宰相は連絡を受け

ハイデリ一人だけが戻ると連絡を受けていた

詰まりハイデリは24時間程かけて自宅に戻って来たのだ

正直馬自体も壊れても不思議では無いし

騎乗する本人も大変であったろう

下手をすれば居眠りをして馬から落下する可能性すら有ったのだ)


行き成り現れた宰相に驚き

片膝を突き頭を垂れるハイデリ

(不味い儂一人で逃げ帰って来た事がバレてしまう)


レ)「如何じゃ

敵は強かったか!?」


ハ)「ハッハイ・・・・・?」

(エッ!?なに?)


レ)「そうか

お前が罷免した息子は強かったか?」


ハ)「ヘッ!?

息子?????」

(何の事だ?)


レ)「お前は本当に何も調べておらなんだ様じゃのう~

日乃本は元養子のブラウンが建国した国じゃ

それにお主の領民が1万人以上が減っている事を理解しているか?

お主の実の息子ブナイクの被害者及び被害者家族達だ

彼等はお主から騙された事を知り

皆故郷を捨てバレバンの街に移動しておる

日乃本の市民権を得るためじゃ

お主の領民の実に五分の一以上の人間達が他国を選んだのじゃ

補償金と慰謝料は如何した?

約束を守り支払っておるのか?」


それを聞き何を勘違いしたのか急に笑顔になり

「大丈夫です

全てお任せ下さい!」

(しめた!何だ敵国はブラウンの国だったのか

俺にも運が向いて来たな、後は命令書を送付するだけじゃないか

俺って頭良い~~簡単簡単フッフフフフッ)

とっ云い制止も聞かずに自分の執務室に籠り何かを書き始めたのだ

それを見ていたレギウス宰相は目が点になり

「あっあいつは本当に頭大丈夫なのか?」

とっ然るべき処置を取らないと駄目だなと宰相は思うので有った


そして執事のルーベルトを呼び

書簡を手渡し直接ブラウンに手渡す様に云い

四頭引きの馬車速達便で日乃本に送り出したのだ


ハ)「レギウス様!

お喜び下さい

此れで全てが解決致します!」


レ)「何故?

全てが解決するのだ?

儂には全容が全然見えぬのだが?」


ハ)「ハイ!!

ブラウンに命令書を出しておきました

ブラウンにとって私の言葉は全てですから

早急に解決致します

これ!!

閣下にペドロヒメアスを出して差し上げろ!

閣下!

今からお出しするワインは

イスパニアランドの国外持ち出し禁止の特上のワインで御座います

全てが解決した特別な日にピッタリのワインで御座います」


レ)「分かったから儂にはお前の云う事が

何が何だかサッパリ分からん

先走らずに説明を先にいたせー!!」


ハ)「ハイ!!

申し訳御座いません

ブラウンに送りましたのは命令書に御座います

島の返還かレイオーク領への帰属化を命令しておきました

ブラウンにとって私の命令は全てですので

賠償金や領地の関係も此れで全てが解決致します」


レ)「きっきっ貴様ーーーーー!!

頭は大丈夫かーーーーー!!

もう良い!

後は儂が全て纏める

此の馬鹿を地下牢に放り込め!!

絶対に出すなよ!!」


とうとうキレてしまった宰相は

頭が痛くなってしまっていた

連行されるハイデリの方は何が何だか分からず

「レギウス様!!

私に全て任せておけば大丈夫です

何をそんなに

お怒りを御沈め下さいーーー!!」


レ)「ロッローゼス!!

ローゼスは居らぬか!!」


ロ)「ハッ!!

此れに」


レ)「見ておっただろ

何か他に妙案は無いか?

此の侭だと国庫が傾く」


ロ)「そうですな~~

一番手っ取り早いのが

レイオーク辺境伯領ごと賠償金として

日乃本の皇帝に差し出すのは如何でしょう?

幸い我が国と日乃本は戦争状態では有りませんし

日乃本に丸投げすればルーデンシア王国は

プラスマイナスゼロと成ります

損もしなければ得もしないのです

元々赤字経営の領地ですので

王国にとっては将来プラスに成るのではないでしょうか?」


レ)「確かに助成金を出さないと云う事であれば

国庫にとっては大きなプラスじゃな

ローゼス此の件全て頼まれてはくれぬか

お主に全て任すので纏めて欲しい

憂慮するは安全保障のみじゃ」


ロ)「同盟関係は無理としても

安全保障条約ならハードルが下がると思いますが?」


レ)「おっ!!それで頼む

国王陛下には儂の方から説明致す

下手な争い事はもう~要らん」


ロ)「全てお任せ下さい

王都への大型店舗の件宜しくお願い致します」


レ)「任せて置け

それくらい安いもんじゃっ!」


かくして峻治達の予想を上回り

事態が大きく動き出そうとしていた


ロ)「では急ぎ日乃本に向かいます

直接北門に乗り付ければルーベルトに追い付くと思いますので」


レ)「シッカリ頼んだぞ

儂も王都に急ぎ戻る故」


宰相はハイデリを逃がさぬよう

騎士団50人を残し

急ぎレイオーク辺境伯領を後にするのだった



一方此方は忍者ゴーレムから連絡を受けた峻治達は

日乃本の北門の方に来ていた

距離的にはソヴルの方が近いのだが

戦闘状態からの昨日の今日なので

敢えて北門の方を全員が選んだのだ

高速馬車を使い北門に駆け付けるローゼス

そして事態が急に解決へと迅速に動き出す


だが一方のハイデリは何が何だか分からず

独り独房で思案に暮れる


ハ)「おい!其処の衛士

何が一体如何なっておるのじゃ

儂にはサッパリ分からぬ」


王宮衛士)「だからだろ!

俺には話の流れからお前が相当バカと云うか駄目と云うか

反対にもう一度確認するが

お前は本当に全容が見えておらぬのか?」


ハ)「だから先程から申しておる

儂には何が何だかサッパリ分からん」


衛)「お前本当に駄目な奴なんだな

しかしよくそれで辺境伯をやって来れたもんだな

反対に俺は不思議だよ

レギウス様は前以て全ての調査を行っていたのだ

今回のソヴルの件もお前が戻る前に全容は掴んでおられたのだ

疲れるのでもう~俺には話し掛けないでくれ

お前とは会話する事すら無駄に感じる」


ハ)「頼む!意味が分からんから

教えてくれ!」


衛士はとうとう反対の壁に椅子を持って行き

他の衛士達と世間話に従事るのだった


変って此方はローゼスの提案を殆ど受け入れる峻治だが

唯一点条件を出した

それはレイオーク一族に関してはメイドや全ての従者に関し

受け入れを拒否したい事だった


ロ)「成程!

その気持ち充分過ぎる程分かります

此れに関しては私の一存でその条件を吞みます

彼等は炭鉱奴隷として死ぬまで働いて貰う事と致します

売価に関しましては全て払い戻しますので

被害者への賠償金や救済にでも当てて下さい」


画して峻治の島流しから一月チョットで

レイオーク辺境伯領は潰れ

日乃本に賠償金名目で譲渡される事になった

殆どの領民達は大喜びをしたが

一部役人や兵士達は再雇用処か拘束される者迄現れ

総資産没収の憂目に会うのだ

そして中には抵抗する者も現れたがゴーレム隊に瞬時に捕縛され

醜い醜態を晒してしまい恥の上塗りを重ねるだけだったが

この捕物騒ぎは領民達に好意を持って迎え入れられた



そして何よりも人々達を驚かせたのが

貴族制度が廃止され貴族院自体も破棄された事だろう

まあ最も辺境伯領だったので貴族院自体の規模も小さく

貴族とは云っても殆どが一代騎士爵だったので

大きな混乱は起きなかったのだ


またバレバンに居たブナイクの被害者達は

日乃本入国審査待ちだったが旧領都に戻り始め

落ち着きを取り戻すのに然程時間を要しなかった

ただ此の被害者達はブナイクとそれを放置したハイデリの事が許せず

後年死刑の嘆願書が役所の方に鬼の様に押し寄せ

ルーデンシア王国の炭鉱に居る本人達にその事実を伝えても

本人達はヘラヘラと薄ら笑いを浮かべ

反省すらしていなかった様だ

ただ一つ変わった点は今はデブでは無く

一族全員が痩せていたそうだ

但しブスなのは変わらずで痩せてもブサだったそうだ

でもな~皆さんは大事な事を一つだけ忘れている

彼等は基本的にフェミニストなのだ

だから自分達の事を未だに美しいと信じて疑わない

遺伝と云うのは全く恐ろしいものなのだな(笑)




*正悪金剛見立鏡

大型のダイヤモンドに魔力が注がれ造られた嘘発見機

悪しき者が触れると瞬時に黒く暗む





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 後書き


次回はムンジェン王国に入る予定です

一応列強の一つなので数回に分けると思いますが

宜しくお願いします<(_ _)>

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