第19話 ボーリス家の終焉

 

 時間軸は再び戻り

俺達は港街ソヴル討伐の準備を既に完了していた


ブナイクを含めた捕虜約七十数名は今回の観戦旗艦である

空母ドルサート乗せられ

船内下層に有る拘置所に入れられたブナイクはブツブツと文句を言っていた

其処に一番嫌っている憎き峻治が現れたのだ

峻治は隷属の首輪をフリーにしてやり話し始めた


シュ)「お~い

ちびりの根性無しのブサイク元気か~~

まあ~お手々も元に戻してやった事だし元気だよな

今から出港して妖怪ゲロゲロ婆あに会わせてやるからな

お前もママさんが恋しいだろう」


ブ)「貴様ーー!!

云わせて置けば図に乗りやがって

兄に対しての此の仕打ち

覚えてろよ!!」


シュ)「うん

分かった

忘れたら聞きに行くわ」


ブ)「貴様ーー!!

何処までも此の兄を馬鹿にしやがって」


シュ)「だって馬鹿じゃん

それにお前兄じゃないし

兄と云われるとチョウ~気分が悪いんですけど」


キッと峻治を睨みつける蛙顔のブナイク

今迄この様な仕打ちを受けた事は彼の人生では一度も無く

甘やかされ放題だった

その付けが今回廻って来たと云える


シュ)「アッそうそう

今回お前の家は取り潰し

ソヴルは俺の領地になるから宜しくな

お前達一族とその家臣は全員鉱山奴隷として

活躍して貰うからな

頑張れよ!」


今回のソヴル討伐の総司令官はマーベリカ11世が担当し

マーベリカ直属の護衛艦六隻が作戦任務に中る

ソヴル鎮圧後橋頭堡を城築き

其処を足掛かりにしてムンジェン王国を攻める心算だ

ムンジェン王国の王都はソヴルからであれば

少し迂回するだけで陸路にて街道に出る事も出来る

操船に関しては難しい所はプラゴーレム達が担当し

市街地確保はゴブジン、獣人、ミスリルゴーレム達が

戦闘装甲車を主体に担当する


単従陣にて朝8時20分にドルサート港を出港し

艦体の周りを大型ドローンが複数警戒のため取り囲み

ソヴル討伐に向かう

若干増え始めた各国の輸送船が何事かと目を見張る

ドローンが各船舶に波に注意する要スピーカーで注意を促す

それを見た各国の船舶はそれぞれ憶測で会話が弾みはじめるが

彼等は中々情報通な様で確信を点いていた


「おいおい軍船の団体様の登場だぞ

何時にも増して速度が速くないか」

「何でも噂では隣国から攻撃を受け

近々報復するらしいと云う話を聞いたぞ!」

「そうなのか

でも日乃本の軍船はデカいのにスゲー早さだな」

「あの前面の筒が火を噴くと

相手の船が大爆発を起こすらしいぜ」

「なんでそんな事が分かるんだよ!」

「島の外海で演習してるのを目撃した奴等が居るのさ

それも10海里以上離れてるのに的が爆発したんだそうだぞ

丁度真横から見学が出来たと云ってたな」

「そんなんじゃ勝てる国なんか無いんじゃないのか?」

「たぶんな

でも俺は日乃本を応援するぜ

だってよ港の連中は皆な優しいし

日乃本には貴族が居なくて税金も安いんだとさ」

「税金が安いのにあんなデカい船が造れるのか?」

「それだけ貴族が金喰い虫と云う事じゃねえのか

今は免税期間で税金も無しの様だぜ

お前も日乃本の国民になれば如何だ?」

「いや!脱国は根切りにされるから勘弁だぜ」


そんな話題がされているとは露知らず

艦体は速度を上げ東を目指す


暫く船を走らせていると

一隻の軍船が此方を目指しやって来るのが見えた

その軍船は先頭のマーベリカ11世旗艦のマーベリカに近付く

やがて俺達の艦体は速度を下げ停船し臨検を受ける

さっさと沈めてしまっても良いのだが

生きた侭捕らえると奴隷として高く売れるし

船も中古船だが高く売れるので

マーベリカ11世は敵船を確保すると連絡が入った


ベ)「正しい判断ですね」


シュ)「そうだな金は幾らあっても好い」


暫くすると後進し捕らえた船を曳航しながら

空母ドルサートに近接して来た

何と素早い攻略だろうか

普段からの訓練が生きている証しだ


シュ)「如何やら港街ソヴルの軍船だった様だな

じゃっサッサと捕虜と船を引き取りますか~」


拿捕した船はソヴルの監視船だった様で

乗組員30名と35m級の船を確保する事が出来た

俺は船を収納し捕虜30名は艦下の拘置所に連れて行かせた


捕虜)「貴様等ー!!

こんな事をしてタダで済むと思っているのか!!

法の裁きが待っているぞ!!」


ベ)「いやいや

お前達が先に宣戦布告して攻撃してきたのに何を云ってるの?

お前頭大丈夫か~?」


捕)「エッ!?

宣戦布告!?」


ベ)「お前の所のブサイクが攻撃して来たから

報復処置を講じているだけだぞ

何が法の裁きだ!!

裁かれるのはお前達の方だ」


捕)「まっまさかまたブナイク様がーー!!」


捕虜A「またかよ!!

あのブサイク

どんだけみんなに迷惑を掛ける心算なんだよ!!」


捕虜B)「たっ隊長!!

もう~俺達は奴の馬鹿さ加減にはウンザリなんです!!

奴に犯され自害した隊員達の娘達だって居るんですよ

普通子供を犯しますか!!

そして此の座間ですよ

何で俺達が捕縛されるんですか!?

俺達は日々任務をキチンと熟しているのに此の仕打ちですか!!

あんまりだ!!」


捕A)「俺達はもう嫌だ!!

隊長!!立上がってくれ!!

俺達は家族が一番大切なんだ!!

ボーリス家何て如何でもいい!!」


ベ)「何かアイツ自国民に相当嫌われてますね」


シュ)「そうだな

何か捕虜達が可愛そうに感じて来たぞ」


べ)「全くです」


シュ)「敵の隊長と話し俺達に協力するなら

解放するか?」


ベ)「そうですな

自国民同士なら説得も通じるし

無駄な死人も出辛いですからね」


後から空母ドルサートに乗り移った

マーベリカ11世も此の意見に賛同してくれ

捕虜代表の隊長×1副官×1一般兵×1と俺達三人は

移動速度を落とし話し合う事にした

最初話し合いに一般兵を入れた事に隊長達は戸惑っていたが

これが日乃本のやり方で貴族自体が存在しない事を説明して了承して貰った


話し合いの結果

彼等は俺達に協力してボーリス家の支配下から脱却する事を決断した

但しボーリス家以下下級貴族達は絶対に同意しないだろうと云う事で

下士官クラス以下を説得するので攻撃する事を

中止して欲しいと云う事だ

そう云う訳で港の沖合にマーベリカ艦隊は待機する事になった


警護のためのプラゴーレムを引き連れソヴルの街に引き返した隊長は

隊長を中心とした緊急警護団組織が結成され

ソヴル市街に戒厳令が引かれた

そして市民達はそれを歓迎する者達が大勢を示した

しかしそれに腹を立てた貴族が隊長に襲い掛かるが

プラゴーレムに瞬時に意識を刈られてしまい敢え無く御用と為る


此の流れに逸早く気が付いたボーリス家や側近の貴族達は

金や貴金属を馬車にのせ逃走を図ろうとするも

街道の手前には隊長の部下達とゴーレム達のチームが検問を張り

それを阻止し全財産が凍結される事になった

これでボーリス家以下下級貴族達は御家断絶の準備が整い

ブナイクを放置した罪に依り鉱山奴隷の刑200年が言い渡される事になる


しかしその情報がレイオーク辺境伯に齎されるのは三日後

そしてルーデンシア王国に齎されるのがそれから一週間後の事で有った

討伐隊を組みソヴルを奪い返したいレイオーク辺境伯と

王家宰相各大臣達はレイオーク辺境伯の責任追及に走る事になる

そして首謀者がブラウンでは無くシュンジと云う名の人物と云う事で

王城では情報が錯綜し混乱を来す事に成る


宰相)「何故ブナイクが他国に戦争を仕掛けたのだ

幽閉されているのでは無かったのか!?

儂は質問をしておるのじゃ!!

レイオーク辺境伯!!

返答をせんか!!

ダンマリを決め込まれてもサッパリ状況が飲み込めん!!」


レイオーク辺境伯)「そっそれが私にも寝耳に水で

サッパリ分からないのです

ただボーリス家の領地の境界線には

不思議な形のチャリオットが多数詰めております

今は商人の情報を頼りにボーリス家の領地内を探らせております」


宰)「お主が直接座敷牢に閉じ込めて

鍵はお主が持っておると自分で報告をしたではないか

まさか出鱈目を報告したのではあるまいな!?

近頃お主は何度も迷走しておる

*辺境領での領民に対し息子ブナイクが行なった虐殺の件

*飛び地バレバンのギルドに対し放置していた件

*レンガリア平原の盗賊放置の件

*折角新たに長男ととして昇格させたにも拘わらず島流しにした件

*今回のソヴル侵略の件

*そして内容を見てみればブナイクが勝手に他国に宣戦布告した件

まさか今回の件全てにブラウンが絡んでおるのではないのか?

お主の報告ではもう既に死んでいるだったかのう

儂の所には別口で情報が届いておるぞ

僅かな期間に骸骨島が緑の大地の大きな島に変化し周辺が近代化しておると

お主の報告ではその様な事は無いだったな

まさかお主確認もしないで報告したのではあるまいな?」


レ)「まさかその様な事は

必ず確認をしながら報告しております」


宰)「それならば良いが

国に対し嘘は申すなよ

儂も今別口で調査団を向かわせた所じゃ

如何も辺境伯領の西側で何かが起こっておる様な気がしてならん

余りにも上位種の魔物の討伐といい少し考えさせる物が有る

何かが可笑しい

陛下!

此れ等一連の件ワタクシも直接調査に参加させて頂きます!」



此処は臨時役場と警察署に用立てられた元ボーリス家屋敷

其処に現在病気の代官に成り代わり臨時代官を務めていた

娘のラドラシア・レイオークが尋問を受けていた

ラドラシアは勿論ブナイクの母で

本来幽閉されるべきブナイクが

傍若無人に領民に対し振舞ったのか理由を追及されていた


シュ)「お~い

喜べ!

豚蛙の子孫のブサイクを連れて来たぞ」


ラドラシア)「母に対しその言葉使いは何ですか!

謝りなさい!」


シュ)「イヤイヤ

母じゃ無いし

それに嫌がらせばかりしてたのに

今更母と名乗るか

ほれ豚蛙同士積る話も有るだろう

三分だけ時間をやってくれ

ブサイクもう~話してもいいぞ」


ブ)「ブッハッ!!

兄に対し此の仕打ちは何だ

可笑しな首輪を付けやがって」


シュ)「ブウブウ

じゃあな」


ラ)「ま~あっ

何て小憎たらしい小僧なんでしょう

あなただけよ何時も私達に逆らってたのは

私はラドラシア・レイオークなのよ

貴方方平民達とは違うのよ」


俺は後日隊長と話し合い

ボーリス家及び配下の下級貴族の財産を全て没収し

被害者救済に当てる事にした


そして兵士達の去就だが

半分を警察官また半分を防衛隊に組み込み

ソヴルの街の警護に当たる事になった

役場の人間達も半数は再雇用し

残り半数の縁故採用で能力不足の者達は不採用とした

他に民主主義のお手本として未来人5名を派遣し

臨時市長等をやって貰う事になり

街中では税率等が発表され驚きを持って受け入れられた

税率二割

年金、医療保険、学校教育等に充てられる事を

市民達に報告したが

余りピンと来てない様子だったので

勉強会等を行なう事が必要だろう

兎も角隊長達のお陰で無事無血開城が出来た様だ

貴族達とも一悶着有り何人かが怪我を負った様だが死人等は出てはいない


そして深夜の内に峻治は港をリフォームして

大型艦に対応が出来る様に進化させていた


そしてその翌朝の事だった

ホスト電算型ゴーレムから驚くべき報告が上がってきた

ブラダリア王国海軍五十艦が不意打ち侵略を直接

ドルサート港に仕掛けて来ると云う情報が入り

対応に追われる事に為ったのだ


マーベリカ艦隊はブラダリア王国海軍を排除するまで

ソヴル港で警戒のため待機する事になった

尚マーベリカ11世は観戦のため動行の許しを頼まれたので

勉学のため許可する事にした


シュ)「しかし何でブラダリア王国海軍が攻めてくるんだ

それも奇襲攻撃とは恥知らずな国家だな」


ベ)「詳しい事はホストゴーレムが奴等の音声を録音していますので

聞いてから対策を考えましょう」


シュ)「そうだな

一旦戻ろう」





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次回は(仮)侵略者の予定です

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