第7話 地竜の影(改)

 俺とベリアルは昼食後森との境目まで行動範囲を広げる事にした

サーチで例の強い魔物が居ないか注意しながら馬を走らせる

俺も移動中にベリアルから乗馬の手解きを受け結構上達したと思う

それに俺達の馬はかなり進化しており

普通の馬よりも大きく知能が高いそして速度が速いため長距離も駆けれる

まあ馬の話は此れくらいにして

馬に掛けた訳では無いが

出来れば今日はウマノスズクサ系の薬草を見付けたい

この薬草には二つの植生パターンが有り

ひとつは森と草原の境目等に生える蔓性と

地面に低く生え花も根元に咲かせる地味なタイプの物だ

此れが有ればSランク以上のポーションが造れるし

他の効能の物にも流用が可能なのだ


しかしお目当ての物は見付らなかったが

森に近付いた分植生が変わり

今迄無かった種類が多種多量に生えており森の方に進出した懐が有った

俺の緑魔法と土魔法を極めれば島でも育てる事が可能だろう

とっ云うか是が非でも育つ環境に島を造り直したいもんだ

例の魔物は森に近付き過ぎていないので

動きは無く普通に過ごしている様だ

互いに自分達のテリトリーを守っているのだろう


俺達はそろそろ日が傾き始めたので

ここで帰る事にした

収穫としては充分な量を確保出来た

ただベリアルが望んだ解呪用のポーション素材は見付ってはいない

反対に呪詛用の素材は半分位は見付った

鑑定では多少素材を変えるだけでテイムにも使用出来る様なので

何かの足しにはなるだろう

しかしテイム魔法とは呪詛の一種なんだな


帰ってから食事を取り入浴をしてたら

注意のアラームが鳴った

森とは反対側の北3Kに草原狼らしき物が集まっている様だ

たぶん深夜に襲撃する心算なのだろう

お目当ては馬だと思うけど

然程脅威では無いので此処は新人君達に頑張って貰おう

ベリアル達は危なくなったら手を貸す感じで後方スタート

チームプレイの練習をして貰う事になった

幾つか効果的に殲滅出来る様ベリアルが作戦指示を与え

行動して貰う事に為った

全員実戦経験は無いがレベルだけは高く

BとCランクの即席混合パーティが誕生した

草原狼はDランクなので余裕だと思うが

初の実戦だから同等と見て良いのかも知れない

念の為ストーンゴーレムに補助のため周辺に待機して貰う


如何やら200近い数が集まっている様だ

たぶん馬の数が50頭以上なので

数が増えた物と推察される

集団的行動を鑑みやはり狼は結構頭が良いのかも知れない


シュンジ)「未だ近くに冒険者達が居るな

今回はサイクロップスとは違い陣形を組みながら襲って来るから

見逃し等は無いだろう

全く困った奴等だ

ベリアル済まないが迎えに行ってくれ

この先200m位だ」


ベリアル)「承知しました」


連れて来られたのは未だ若い5人組の冒険者パーティで

俺達のギルドランクと同じDランクだった

但し若いとは云っても俺よりも五つ以上は上の様だが


シュンジ)「あのな~

お前等の潜伏なんて端からバレてるから

もっと気配を消す訓練をしておけ!」


若い冒険者達は結界内に入れられ

温かいドリンクを貰い

訓練を行うから邪魔をしないようにとベリアルから念押しされていた

彼等のレベルは60ちょっとで

俺達のグループに妊婦以外の100以下はいなかったのだ

互いに初心者とはいえ此の差は大きいと思う

後は本番に合わせ交代で仮眠を取りながら待つ事になった


深夜0時馬の臭いに釣られて集まった狼達に

野営地がすっかり取り囲まれてしまった

結界内から飛び出すのはバルーンが光った瞬間だ


頃合いだろうか

次の瞬間上空30mでバルーンに灯りを灯した

攻撃に参加する全員が結界内から飛び出した

明るい光に目をやられた狼達が隙を突かれた形だ

次々と喉を切られ意識を刈り取られる

ベリアルの指示なのか

狼達は顎の下の柔らかい所ばかりを狙われ絶命して行く

目が元に戻った頃には半分程が遣られ

逃げられぬ様に外周をゴーレム達に囲まれていた

暫し観戦していると一番大きな狼だけ残っていた

狼とは云え此の世界では魔物なのだ

そう簡単には遣られないはずだが多勢に無勢

皆に囲まれ彼もまた喉を切り上げられ絶命してしまった


如何やら喉ばかりを狙ったのは

毛皮を重要視したからの様だ

毛皮は売れるし冬の装備の材料にもなる

数えてみると250匹以上に頭数が膨らんでいた

毛皮だけでも金貨1(10万)枚にはなるので

ほんの10分程で金貨250以上を稼いだ事になる

驚いていたのは若い冒険者達だ

何せ倒したのは自分と同じギルドランクだったからだ

それも数日前に入ったばかりの新人ばからりなのだ

まあ驚くのも無理は無い

妊婦は1回のリフォームだったが

それ以外は都合3回リフォームを掛けたのだから

この冒険者達よりは結構強いはずだ


兎も角後はベリアルに任せ

深夜なので俺は再び眠る事にした

安心して眠れるって本当に素晴らしいな



翌朝になり

初実戦を熟した者達は深夜の興奮が冷め遣らぬのか

表情は何時にも増して明るい

反対に保護され合流していた若き冒険者達の表情は若干暗い様だ

まあ本来なら弱いと思われていた

新人獣人の女達が

自分達よりは遙かに腕が立つのだから仕方が無いか


食後はバイドの剥ぎ取りのレクチャーが有るので

狼を収納から全部出してから出掛ける事になる

ベリアルから白い樹皮の松柏系の木から樹液を採収したいそうなので

昨日依りは若干森内を探索する事にした

何に使うのかと思ったら

剥いだ毛皮に使うそうだ

狼の皮を近くの川で水に晒してから乾かし

毛皮の裏側の皮の油を何度もこそぎ落してから再び川にさらし

最後に木の枝を掛けて伸ばしながら乾かし樹液の水分を抜いた物を

塗り付け鞣すと皮が柔らかくなるそうなのだ

結構手間暇が掛かるんだな

俺はもっと簡単なのを想像していた

オマケに何度も複数人で皮を引っ張り合うんだとさ

そりゃ~処理済みの毛皮も高くなるわな


俺達がサーチを掛け乍ら森に近付くと

例の魔物達も反対に此方にサーチを掛けて来ている様だ

強い奴程警戒心が強いのかも知れない

海岸まで森を渡ると云う事は奴等を完璧に敵に回すと云う事だろう

そう簡単には避けては通れない

明日は朝から森林地帯を縦断するのだ

嫌でも対峙するだろう


森の中に若干立ち入ったぶん植生も変わり

新たな薬草が目に付き始めた

有った!地性のウマノスズクサ系のアオイだ

未だ正式名称は無いので俺は魔林寒葵と銘名した

まあ全部泥軸だが之でも相当貴重なのだ

青軸は数が少なくとんでも無く貴重で薬効も高い

在れば鉢上げして単品栽培に成るだろう

鑑定に云わせると此の森は結構貴重な物も多い様だ

強い魔物が居る場所ほど魔素の濃度が濃くなり

貴重な薬草が育ち易いのかも知れない


海に行けば陸地よりも広く魔物の種類と数も多い

浜辺には大古からの魔物の魔石が数多く打ち上げられている

安全な海岸線は殆ど取り尽され余り数は集まらないそうだ

嵐の翌日は沖にあった魔石が打ち上げられるので

海の近くの住民達は挙って海岸に集まる

海の魔石は塩で磨かれ綺麗な物も多く良い値段で買い取られる様だ


シュンジ)「じゃ沖に出ると

海底には多くの魔石が眠っていると云う事だよな?」


ベリアル)「その代わり危険で大型の魔物も多くなります」


シュンジ)「とっ云う事は

魔物が海面に顔を出せば俺の収納で狩り放題と云う事だな」


ベリアル)「そう言われてみればそうですね

海の魔物は大きく狩り辛いので買い取り価格も高価です

海辺の町で腕の良い冒険者は御殿を建てています」


シュンジ)「ほう~~」


ベリアル)「島の周りは大型の魔物も多く

海の難所としても知られています

もし海峡の魔物が減れば通行料金等も取れるかも知れませんね」


シュンジ)「そう考えると

島って意外とお宝の山だね」


ベリアル)「シュンジ様にはそうかも知れませんが

船乗り達にとっては恐怖と云うか危険な場所です」


島は一種の漁礁になっており小魚も多い

それを狙って大きな魚が集まりまたそれを狙い魔物も集まる

またその魔物を目当てに大型の魔物も集まると云う訳だ

オマケに太古からの魔石が海底の奥深くには大量に眠っている

もし此れ等を採取出来れば金には困らないのかも?

魔石を消費する便利な魔道具なんかを造れば両方売れるな


ベリアルはお目当ての木に小さな穴を空け

傘を被せ小さなバケツをストロー状の金具に引っ掛け樹液を集める

採収に夢中の俺を襲ってくる魔物達も狩るので本人は大忙しだ

俺は纏めて積んである魔物の山を収納し

引き続き薬草の採収を行う

森の際で集めてる所為か昨日よりも種類と数が多い

薬草って意外と綺麗で面白い形の花が多いので飽きる事もない

変異種等も時折見受けられる

変異種とっ云っても馬鹿には出来ない

地球の半島の将軍様の国家予算は7000億だが

7000億以上の変異種等も実際中国に存在する

日本のメディアが取材を申し込み叩き出されたのは記憶に新しい

理由は日本人は貧乏だからだそうだ



日も傾き始めて来たので

俺達も帰る事にした

ベリアルの樹液集めも大量の様だ

意外と樹木からは大量の樹液が取れるんだな

同じ白い樹皮の楓類から取った樹液は高級なシロップになるし

森も意外と宝の山なのかも知れない

日本に居た頃俺が好きだった山で採れた果実のシロップ浸けも

結構高価だったし

山で放牧された家畜から作った腸詰も高いけど旨かったな

またあの頑固親父の作るフランクを食べたいもんだ


野営地に着くと若き冒険者達は帰った様だが?

んっ?何か無理に帰した様だな

そう云えば夕方はリフォームの時間だもんな

他者に見せるのは確かに不味いな

其処等辺りをちゃんと考えてくれてるんだな

狼の剥ぎ取りも終わっているし

ほんの数日なのに新しい人達も馴染んで来てる様で一安心

薬草の中にはスパイス系も混じっているので

日々味も進化しているし正直美味しい

スパイス系と云えばカレーだろう

之ばかりは今は難しいけど

早く皆にもカレーを味わって貰いたいもんだな


たぶん今日のリフォームで

ベリアル達も全員Aランクの300を超えると思う

ストーンゴーレム100体もアイアンゴーレムに進化をする

俺は他に結界ボックス内で密かに進化させていた

初日に盗賊達から奪った馬車を独自進化させ

今は四輪木炭車だが今日の進化で初期型四駆魔導車になる予定だ

屋根上にはターレットが付き

初期型単発式12,7mm銃が其処に付く予定だ

明日は安全の為此の秘密兵器を出さないとたぶん駄目だろう

正直恐ろしいが明日は予定通り魔の森に挑戦する

例の地竜と思われる魔物にいよいよ挑戦だ

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