第10話 アナログデータ

『俺が見ている今とアイが見ている今が何故違うんだ!』と、アイに聞いても虚しい事だ。彼には見えてないんだから・・・一瞬、アンは一体どっちが正しいのか?と思った。だが、今この目で見ている自分が正しいのは明らかであるが、それをアイに伝えることは出来ないのだ。


「一体、どうすれば良いんだろう・・・」と、思わずアンが口走る。

「どうしたんですか?アンさん」と、アイが心配そうに声を掛けて来た。


「いや、アイから見た今と俺が見ている今との違いに驚いているけだ。でも、何故違うんだろうね・・・?」とアイに聞いてみた。


「もしかしたら、そちらのネット環境やコンピュータのデータ処理の問題ではないでしょうか?」と答える。


「そう言えば、日本の総理大臣も知らなかったよな?」

「ソウリダイジンは分かりません」と改めて答えた。

「でも、日本はあって日本人はいたんだよね」

「はい。日本と呼ばれる国家はありましたし、そこに日本人がいたのは前にも話した通りで、彼らの今が不明なのも以前話したと思います」

「そこだけ、いや、日本人がいたということだけは通じるんだよね」と、少しホッとした感じで話す。


「はい。時代は変わっても通じることはあると思います」とちょっと意味が違う返答が来たが、そんなことには気づかず


「分かった。明日休みだから、図書館にでも行って色々調べて来るか・・・」

「トショカンってもしかしてアナログデータが保管されているところですか?」と興味津々にアイが聞いてきた。


「ああそうだよ。アイの時代にはもうないよな?」と想像で聞いてみる。

「はい、アナログデータは改ざんされても分からないので、正しい認識には役に立たないという事で、今は全てデジタルデータとなっています。でも、個人的にはデジタルではなくアナログというモノがどういうモノなのか非常に興味があり、それが知りたくてタイムネット通信の相互通信を開発したんですよ」


 と初めてこどもっぽい感じで話した。


「そうなんだ。俺らの時代はまだまだアナログデータが主流だな。デジタルデータも便利だけど、アナログの方が重みがあるんだよね」


 と、デジタルデータにイマイチ対応できてないことを隠すのだった。

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