第5話 未来にない今
しばらくの沈黙の後
「アイ俺はどうすればいいんだ!」と絞り出すように声を出すアン
「アンさんの力ではどうにもならないから、何もする必要はないんじゃないですか?大きな天災で日本が崩壊するまで、アンさんが生きている保証もないので」
と、こどもにしては大胆なことを言ってくる。
「そりゃそうだけど・・・アイは、本当に12歳か?めっちゃ大人と話している気がするんだが・・・」
「ええ、12歳の大人です」
「なんじゃそれ!!」とアンが笑った。
「でもさ~これってみんなに教えるべき事なんじゃないか?」
「今の日本はどうですか?地震が怖くてみんな逃げ出そうとしてますか?」
「いや~全く。10年前に東北大震災があったころは怖がっていた人もいたが、今はそんなこと気にしてないね」
「だったら、何も言う必要ないですよ。仮にいっても誰も聞かないでしょう」
「そうか・・・仮に俺が有名な大学の教授だったら聞くかもしれないが、どこの馬の骨か分からない警備員だから、誰も聞こうともしないな」と現実に帰る。
「んじゃ、どうすっかな~お金を貯めて海外にでも移住するか?」
「まあ、それが妥当かと思います」
「でもさ~警備員の安い給料で貯金なんか出来るわけもなく。あっそうだ。アイは未来に居るんだから過去のことは何でも分るよな。っていうか調べることが出来るよな」
「何を元気に突然言い出すのかと思えば、そんなことですか。当たり前です。百年前のことを調べるくらい朝飯前ですよ」と答える。
思わず、アンは拳を握り小さくガッツポーズを取った。
「そんじゃさ~2021年に開催される競馬のレース結果を調べてくれる?」
「ケイバ?何ですかそれ?」と聞いてくるので思わず、
「流石に小学生には分からないか」と、ほくそ笑んだ。
「ちょっと待ってくださいね。直ぐ調べてみますね」
の言葉に、メモと鉛筆を密かに用意して待ち構える。
「ん?おかしいな~」
「どうした?」
「全てのデータベースにアクセスしても出てこないんですが。本当にそういうケイバのレースというものがあるんですか?」と聞いてくる。
「いやいやいやいや、あるってば、間違いなくあるよ。毎週末行ってんだから・・・」
「でも、無いモノはないですよ。今現在、そんなものは無いし、あったと言われても困りますよ」
「え~~~22世紀に競馬はないのか?」
「ケイバってなんですか?」
「競馬ってギャンブルだよ。あっ、そうだ。日本にないのなら、アメリカにはラスベガスというギャンブル都市があるし、イギリスや香港でも競馬はあるよ。もう一度調べて」
「はい。わかりました。調べてみます」
と言ってしばらく待つが
「う~ん。やっぱないですね。ラスベガスもアメリカもトシというのも出てきませんし、イギリスやホンコンもケイバも出てきません。僕の事からかってます?」
と、少し怒り気味に答える。
「おい、競馬やギャンブルだけでなく、アメリカもイギリスも香港もないのか?」
と今自分がやっている競馬や、その他のギャンブルが未来にはない状況は言うに及ばず、アメリカやイギリス、香港という国がないことに愕然とし
「俺、今やってんだけどね・・・」と再度強調するも
「ないモノはないとしか答えられませんよ。それ以前に遡っても、ケイバとかギャンブルという言葉もモノもないし、アメリカもイギリスもホンコンもないのですから・・・」
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