第3話 かみ合わない会話

「ところで、22世紀はどうだい?暮らしやすいかい?」

「そう言われましても、21世紀を本でしか知らない僕には何とも言えないです」

「そりゃそうだな・・・日本の総理大臣は誰?」とこどもには難しい質問をする。


「ソウリダイジンって?」とやはり、予想通りの答えが返って来た。

「ほんじゃ、もう少し簡単な事を聞くが、アイは何して遊んでるの?」

「遊ぶ?それはどういう意味ですか?」と聞いてきた。


「12歳なら遊び盛りじゃないの?何で、遊びを知らないんだ!」と嘆きながら、もしかしたら22世紀は寂しい時代なのか?とつぶやいた。

「んじゃ、アイはどこに住んでいるんだ?」と小学生にも答えられる質問に変える

「住んでいる?僕がいるのはH45地区の36番街です」

「なんじゃそれ?」住所はないのか?と嘆く。


 アンは、話が通じない未来に少し不安を感じ始める。もしかしたら、22世紀は思っていた以上に良くないんじゃないかという思いに駆られる。

「そうだ、学校には行ってないのかい?」と平日のこの時間にいるのを不思議に思い聞いてみる。


「ガッコウって?」と全く学校というモノを知らないような返事が返る。アンは、少し聞いただけで未来を聞くのが怖くなってしまい黙り込んだ。

「アンさん、どうかしました?」とアイが聞いてくる。

「なんかさ~22世紀が思ってたのと違う感じがして、聞くのが少しこわくなったんだ」と正直に話す。


「アンさんは、どんな風に思っていたんですか?」とアイが聞いてくる。

「そうだな、今よりうんと便利になっていて、世界旅行が簡単に出来たり、宇宙旅行も出来たり、後は、今みたいに安月給で苦しむことがなく、楽に生きれる社会になると思ってたんだ」


「そうですか?でも、世界旅行や宇宙旅行は誰でもいつでも簡単に行けますよ。今のところ宇宙は太陽系に限られますが、もうすぐ銀河系への航路も出来るみたいですよ」

 という想像できる範囲の答えが返って来て、少しホッとする。


「そうだ、アイのお父さんお母さんはどう?」と基本的な問いを思い出し聞いてみる。

「私にはマザーしかいません」という答えが返って来て、アンは一瞬しまったと思った。


「ゴメン・・・悪い事聞いたね」と謝るが

「ん?何で謝るんですか?」という答えが返って来て驚く。

「君は優しい子だね」と思わずアイを褒めるアン。


「そんなことはじめて言われました。マザーに21世紀の人に褒められたと報告しておきます」

「報告?アイは随分かた苦しいな・・・もっと楽にいいよ」

「ありがとうございます」と礼をいうアイ。

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