第4話 弟子っ子はギャル!?
春の放課後。
麗かな陽気に誘われた俺、
今日はホムセンでも寄って帰ろうか。
それとも百円ショップでキャンプに使えそうな物を探そうか。
いや、書店で今週末のソロキャンプに持っていく小説でも物色しようか。
「ねえ、師匠」
高校でもソロの俺の放課後は、常に自由だ。
誰にも声をかけられることなく、誰にも気を遣うことなく。
「師匠ってばぁ」
ん?
何か幻聴が聴こえるけれど、きっと春の陽気のせいだろう。
キャンバス地のカバンを肩に掛けて立ち上がり、ふっと窓の外を眺める。
「桜、だいぶ緑が目立ってきたな──うわっ」
「ねえってば!」
肩のカバンを引っ張られて、思わずよろける。
仕方なく先ほどから声が聞こえる方へと向き直ると、明るい栗色の膨れっ面ギャル系美少女が立っていた。
「弟子を無視しないでよっ」
「だから弟子にしたつもりはありません」
俺は栗色の髪──
が、
「あの夜はあんなに優しかったのに」
背中でぽしょりと呟かれた声に、思わず立ち止まる。
「そういう誤解を招く言い方はやめろ。あと俺のことは放っておいてくれ」
「なんで?」
リノリウムの廊下を歩きながら、背後に迫る
「ちょ、早いって」
当然だろ。
逃げるための早歩きなんだから。
「お願い、お願いだからぁ!」
突然の
「ったく……わかった。話なら学校の外で聞く」
「ほんと? やったぁ!」
おい、飛び跳ねるな。
ただてさえスカート短くて目のやり場に困るんだから。
校門を一歩出た途端、俺は逃げる態勢を作って、走り出す。
──前に、後ろから腕を掴まれた。
掴んだのは
つか
「……何でしょうか俺は学年一の美少女であらせられる
何処かのラノベで聞いたようなセリフを並べ立てて、煙に巻こうと試みる。が。
「なんで私がフラれた感じになってるの!?」
「いや、気のせいじゃないかな」
おお、なかなか切れ味よいツッコミだ。
ちょっとだけ
俺の中で、現在の
命知らずの無謀バカ
である。
もちろんこれはキャンパーとしての評価だ。
それ以外の
なんなら今この瞬間も、特別な興味は無い。
ていうか。
「……何か用事なのか?」
用事ならさっさと済ませて、早くホムセンか書店に行きたい。
「私のキャンプ装備、一緒に作って!」
え、いやですけど。
数ターンの押し問答の後、校門の前で騒いでいる訳にもいかず、仕方なく場所を変えることにした。
が、
「なんでここなんだよ……」
店に入った瞬間のあの甘い匂い、トラウマになりそうだ。
「あはは……私、こういうお店しか知らなくて」
苦笑しながら、得体の知れない長ったらしい名称のコーヒーのストローに口をつける
対する俺は、もう居づらくて堪らない。
いつでも店を出られるようにバッグは肩に掛けたまま、
つか、めっちゃ甘い。
なんならもう場違い感と極度の甘さで、コーヒーの味がしないまである。
「でね、キャンプの装備を買い替えたいんだけどねー」
「ネットで調べたら出てくるぞ」
「い、いや、そこは経験者のナマの声を参考にしたいのっ」
「なら、アウトドアショップに行って、店員さんに相談するんだな」
実際アウトドアショップの店員さんは、彼ら自身がベテランキャンパーである事が多い。
経験者の意見を聞くには、もってこいの場所だ。
「私は、師匠にお願いしたいんだけど……ダメ?」
──っ。
そんな上目遣いで、男全員が騙されるとは思うなよ?
高校二年のクラスになって数日。
この
まず、
休み時間には
昼休みは俺自身が教室にいないから知らんが、でもまあ人の輪の中心になっているのだろう。
同時に、
ひとつ。
ひとつ。
この前の装備は、決して金にモノを言わせた道具ではなかった。
むしろ、少ない予算で揃えた結果のような気がする。
「なあ、
相変わらず語り続けていた
「予算は、いくらくらいなんだ?」
その瞬間、
固まった
「い、一万円、くらいかなぁ」
今度は、俺が固まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます