第2話

「いやー、お嬢ちゃん、ありがとう!」


 男は雑草をリスのように頬張っていました。女の子は近くで雑草を引っこ抜いて山にしていました。男は美味しいそうにその雑草の山を削っていきました。


「ところでお嬢ちゃん、誰か俺のことを探していなかったか?」


 女の子が雑草の山に注視していたら、男が知らぬ間に後ろに寝そべっていました。女の子はいきなり移動した男を幽霊のように驚きました。そんな女の子に対して、男は再び同じ質問をすると、女の子は冷静になって思い返しました。

 女の子は黒ずくめの男の似顔絵を思い出しました。ボサボサの白髪と丸顔が一致していたので、女の子は頷きました。男は頭を抱えていました。


「やばいな。見つかったら殺されるな」


 女の子が思うに、あの黒い男はこの白い男の命を狙っているのです。互いに探し・探されている関係であり、殺す・殺される関係だと思うのです。2人が出会ったら殺し合いが起こると女の子は思いました。

 女の子が影に覆われました。彼女はにわか雨でも降るのではないかと見上げました。そこには黒い男が佇んでいました。


「見つけだぞ。ダイス」

「お前はカキだな」


 2人は鋭い目で向かい合いました。ダイスと言われた白い男はおもむろに立ち上がり、カキと言われた黒い男は女の子を通り過ぎて前に出ました。互いに火花が散るようなメンチを切っていました。


「お前、見つけるのが遅いぞ! もう少しで野垂れ死ぬところだっただろ!」

「うるせぇ! 勝手にはぐれて勝手に野垂れ死にそうになって勝手に逆ギレか。今日という今日こそはぶっ殺すぞ、お前!」


 2人はキャットファイトみたいに手を出し足を出し土埃を出しドタバタと喧嘩しました。女の子はポカーンとしながらそれを眺めていました。女の子は純粋に疑問になったことを2人に向けて少し声を張って質問しました。


「2人は知り合いなの?」


 2人はその声を聞いて、大人げない喧嘩を見られたことに対して、恥ずかしさに身悶える白い男、罪に罰して欲しそうに神に祈る黒い男、その2人は喧嘩を中断しました。先程まで聞こえなかった波の音・風の音・砂の音が響いていました。倒れ込んだまま砂かぶりの白い男・ダイスと、立ち上がり砂を払っている黒い男・カキが自己紹介を始めました。


「俺はダイス。いつどこに姿を現すかわからない神出鬼没な人間だ。よろしくな」

「私はカキです。計画通り物事を進めないこの大バカの面倒を見ています。よろしくお願いします」


 野蛮な感じのダイスと紳士的なカキの2人でした。全く違う性質の人間同士が惹かれあうということがあるのですが、この2人もそういう腐れ縁のような雰囲気です。喧嘩するほど仲が良いと言いますが、女の子は半ば蚊帳の外でした。

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