第18話4-3そのとき
それ以降メールを毎日しました、といっても、彼女から一方的に送られてくるだけで、自分から送ることはありませんでした。生存確認、勉強状況、その他。僕は、普段しないメールの返事が遅いことを指摘された。
正月のあけおめメールも初めてしました。その頃になると、返事するのが早くなって、そのことをいじられました。僕はその文面を無視して勉強に勤しみました。
センター試験が近づき、二年生の僕から見たら学校でも3年生が忙しく見えました。一方で、彼女からのメールの返事は遅くなっていました。僕が思うに、彼女も勉強が忙しくてメールに時間が割けないのでしょう。
あっという間に訪れたセンター試験の翌日、新聞を保存しました。二日分保存しました。二年生の僕たちには数学がどの日程かわからなかったので、両方を保存することに決めていました。
僕は学校終わりに準備が出来たとメールで合図をしました。僕から初めてメールを送ったことに驚いたと彼女はいじってきました。僕たちは18:00から解き始めました。
センター試験問題という未知なるものは難しいと身構えていたら、意外とスラスラ解けていき拍子抜けしました。もしかしたら僕は天才なのではと思いましたが、確率の問題で手が止まりました。僕は凡才でした。
元から僕は確率が苦手で、きちんと解けたことが今までありませんでした。そういう推量のものは抵抗があるのです。そう、未来と同じように。
僕は頭に白紙の回答が広がりました。そこに、彼女がポツリと現れられました。僕はどうしてここで彼女の幻想を見たのかを理解できませんでした。
彼女は僕に何かを言っているように口を動かしていましたが、今の僕はそれどころではありません。彼女の幻想を無視して払いのけながら、確率の問題に取り掛かりました。再び集中した僕は、鉛筆を紙の上に滑らしました。
60分があっという間に過ぎました。
僕は彼女にメールを送りました。しかし、返信がなかなか来ません。僕は仕方なく先に自己解答し始めました。
94点でした。満点は逃しましたが、初めてにしては上出来だと思いました。確率問題は満点でして、まるで僕に何かがとり憑いたような気分でしたが、そんな与太話は信じませんでした。僕が思うに、彼女は満点結果のメールを打つのをほくそ笑んでいるのでしょうし、今すぐにでもメールが返ってくるでしょう。
彼女からメールは返ってきませんでした。
後日、彼女の葬式がありました。クラスの人たちが訪れました。僕も例に漏れず、学ランを着て参加しました。
周りには泣いている人もいれば神妙な面持ちをしているけど内心では何とも思っていなさそうな人もいました。後者は僕なのですが、正直に言って人の死にピンと来ないと言いましょうか、どうせ人はいつか死ぬのだから仕方ないだろうとしか思えませんでした。もしかしたら今は大丈夫だけれども、後日に悲しみが襲ってくるのかもしれないですが、そうなれば僕は普通の人間の仲間入りに入ることができてハッピーエンドです。
僕が帰ろうした時に、彼女の母親に呼び止められました。彼女とアドレス交換した日以来の再開で、さすがに焦燥しきっていました。その人は僕と話がしたいと言って時間を要求してきましたが、それを断る理由が見つからなかったので承諾しました。
その人が言うに、彼女は僕との数学勝負をしている最中に意識を失ったようです。ちょうど確率問題に入るところだったと聞いたときに、僕が思い出したのは確率で満点を取ったことであり、彼女の幻想ではありませんでした。確率以外のところの点数を聞きたい衝動にかられましたが、それを聴くほども僕は人と話すのが得意ではないのです。
僕は彼女のケータイを渡されました。聞いたところによると、それは彼女のケータイであり、見て欲しいものがあるということでした。未送信メールのところには、次の2つのことが書かれていました。
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