第13話3-4光陰矢の如し
3週間後、10月の2週目に再び病院前のバス停で出会いました。
彼女が連れ去られて今日までの間、僕は意識して例のバス停を訪れるようにしていました。その理由として僕が意識したことは、自分が人の役に立っている高揚感をもう一度得たいというものと、急な出来事に対する解明が欲しかったということがありました。決して彼女と再び会いたいという感情があるわけではないと自己解釈していました。
「やぁ、普通2号くん」
「髪の毛伸びましたね」
僕は呼び止められるより前に自転車から降りましたので、彼女は大声で立ちふさがることがありませんでした。自転車をカラカラと押して座っている彼女の前の到着点まで微調整しながら、気づいたことを述べました。僕が思うに、彼女はいつもどおり明るさを努めているようでした、互いに全く汗をかいていないところに季節の変化を感じながら。
「いつものベリーショートやんけ。坊主頭はさすがに嫌だから、でも長いと手術の邪魔になるからいつでも丸刈りにできるようにこの髪型にしてたんや。そういえば、あなたとここで会った時と同じやん」
「服装は違いましたけどね」
「さすがに10月にタンクトップと短パンはね」
「記憶力があるんですね。タンクトップだったとかは覚えていないですよ、僕は」
「私、夏休みは常にタンクトップと短パンだったの。だからや」
「僕が外では常に丁寧語であるようにですか?」
「そうや。お揃いやね」
彼女はニシシと歯を見せて笑ってきました。それは作り笑顔ではないように見えましたので、僕は冷たい目を見るとき以上に圧倒されましたが、不思議と後ずさりはしませんでした。僕がその理由を考察するに、この数週間で自然と鍛えた足腰と涼しくなった気候によってふらつかなくなったのでしょう。
「――そんな、カップルみたいに言わなくても」
「そうね、カップルじゃないもんね!」
「そんな怒らなくても」
彼女は急に睨み出しました、僕が後ずさりするくらいに。僕のは頭の中は渦を巻いていました、自分の考察が否定されたショックと彼女が怒る理由がわからない困惑で。僕をからかって怒ったふりをしていることを願っていましたが、ピリピリした空気でした。
「そんなことよりも、今日はどこに行く?」
「え? やめたほうがいいのでは? 前みたいに親に怒られますよ」
「そんなこといちいち覚えているの? ちっさいわね」
「結構衝撃的でしたけど。それに、親も僕もあなたのことを心配しているのですよ」
「だからちっさいと言っているのよ! そんなこと気にするなと器の大きなところを見せられないの? どうして病人を扱うみたいにするの!」
「だって、病人じゃないですか」
「はっ! とんだ見込み違いや。私のことはほっといて。さっさとどこかに行けばいいじゃないの、はい、バイバーイ」
彼女は低調から徐々に怒りをエスカレートさせていき、果てにはツーンと澄ました顔でハエを払い除けるように手を振ってきました。僕は頭の中で――これは本当に聞こえたのですが――プチンと何かが切れる音を聞きました。僕は家の外では決して出さない怒鳴り声を出すことになりました。
「君が呼び止めたんだろ!?」
「人のせいにせんといて。ほら、さっさとどっか行って!」
「何ですか、その言い方は!」
「……」
「今度は無視ですか! わかりました、僕がどっか行けばいいんでしょ!だから君もどっかに行ってください!」
僕は自転車を発射させました、枯れていく街路樹からの落ち葉を無慈悲に轢きながら。彼女が後ろに乗っていないから進むスピードがとても早く気楽でした。そうだ、放り投げれば良いんだ人間関係なんて、今までもそうしてきたではないか。
「こんなつもりじゃなかったのに」
僕は自分の心の声は聞こえないふりをしました。
「こんなつもりじゃなかったのに」
彼女の声は僕には聞こえていませんでした。
僕は3週間後、11月の1週目になっても彼女に会いませんでした。学校には来ないし、バス停に会いに行こうとも思いませんでした。でも、さすがに自分も悪いと思い、謝まりたいという口実でバス停まで自転車を飛ばす日々になりました。
それから3週間後、11月の4週目になっても全く会いませんでした。
その週のある日、バス停に坊主頭の人がいたから息を白くさせながら話しかけました。僕は彼女にどう謝ろうかと思いながら頬を赤くさせました。太陽の高さの関係で、バス停の屋根の影が長くなっていました。
「普通1号さん」
「――誰ですか?」
知らない痩せこけた男性でした。僕は人違いだと釈明しました。その男性は不思議な面持ちですぐに視界を足元に落としていました。僕も視界を落としました。
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