第2話 屋台
「何食べる?」
陽介は、お腹の音が聞こえてきそうなくらいに、お腹が空いているようだ。
「いっぱい、店あるね」
雪まつりのメインといえる大通会場に着いたが、お互いお腹が空き過ぎて、屋台が立ち並ぶ場所をキョロキョロと見渡していた。
焼きホタテにウニ、牛タン串。カニの甲羅焼き、海鮮で彩られた丼、いかめし、ラーメンなどが立ち並ぶ。スープもあって、寒い心を温めてくれそうだ。
また、綿あめ、チョコバナナなどのお祭りにならではの食べ物もあることに、寒い時に食べるのかなと疑問を抱いてしまう屋台もあって、屋台を見ているだけで、テンションが上がっていく。
「やっぱり、北海道に来たから、ラーメンには行きないよな。でもなー」
「どうしたの?」
「やっぱり、ラーメンはテーブルか、カウンター席に座って食べたいよな」
「それなら、私がラーメン買ってくるから、陽介は、別のモノを買ったら」
「そう、じゃあ、後で少し食べさせてくれ」
私は、札幌味噌ラーメンを買いに屋台に並びに行った。陽介も違う店に、何か買いに行った。
ラーメン店には、少し人が並んでいた。待っている時間に、雪がブーツに染み込み、足のつま先が凍りつくように、冷たくなっていく。
「もっと、空いている店に行こうよ」
「どこも並んでだろう」
後ろから会話が聞こえてきた。男女らしき人の会話だ。振り返ってみたいが、目とか合ったら、気まずくなってしまうので、振り向くことを諦める。
「寒いから温めて」
「こっちこいよ」
何か滅入りそうな会話ではあったが、待ち時間にはちょうどいい会話だった。
「何笑ってんだ?」
あからさまに、2人の会話ではなく、他の誰に言ってる。沈黙が続く。もしかして、前に立っている私に言っていたりするのかな。
「笑ってませんよ」
誰かの声が聞こえてきて、私じゃなかったことに、安心した。
振り向くと、40代くらいに見える男女が、さらに後ろに並んでいた20代の男女の方を向いている。
40代くらいの女性が、ミニスカートとに網タイツで、太ももまであるブーツ姿に、腰までジャケットを羽織っている姿だった。一緒にいた男性は、少し小太りで、160cmくらいの身長で、隣の女性が数センチ大きい。全身をブランド物で固めていて、先の尖った靴を履いているが、場違いなのが否めない。
「すみません、笑っていると思われたなら、申し訳ありません」
と20代の女の子が、一緒にいる男の子を庇うように、声を張り上げていた。
「だったら、いいけど、気をつけてね」
男性は、恥ずかしくなったのか、隣にいた女性を連れて、そこらから離れて行った。女性は「ちょっと、どこ行くの?」と若干、怒っていた。
「なんか、あったの?」と呑気な声を出して、陽介が近寄って来た。その両手に肉が突き刺さっている串と、ビールを持っていた。
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