第25話5-4:やっと死ねる
勝負は、あっしが瞬きをした瞬間に終わっていたんじゃい。
豪語する男の勝利、仇討ち成功じゃい。
どういう勝負があったのかは、呆然と驚いている弟にも全くわからない様子じゃい。
「わたくしめを殺してもいいのですかえ?」
倒れている革命軍のリーダーは死ぬ間際もヘラヘラと笑って薄気味悪かったんじゃい。
そこまで一貫すると、ヘラヘラ笑う不真面目なことに信念みたいなものを感じて、立派に感じるんじゃい。
よく考えたら、リーダーになるような奴だ、大したやつに決まっているんじゃい。
「どういうことだ?」
オンは警戒しながらも耳を傾けたんじゃい。
またいつもの挑発か、それとも真面目は遺言か、はたまた別の発言じゃい。
あっしも弟も静かに耳を傾けたんじゃい。
「わたくしめは、くっつけるだけでなく、離すこともできるえ。つまり、人を能力者や成れの果てにすることも、その逆もできるえ」
衝撃の言葉だったんじゃい。
それはあっしらの求めていたことじゃい。
息が止まり、心臓が破裂しそうに踊っていたんじゃい。
「そんな、命を冒涜するようなことを……」
「――それは本当ですか!?」
弟は話に食いつき叫んでいたんじゃい。
バカバカしいと切り捨てようとしたオンは、その声に驚いていたんじゃい。
革命軍のリーダーが言うことが正しければ、能力者や成れの果てを作る方法も人間に戻す方法も知っているんじゃい。
「あなた様は興味があるのかえ?」
革命軍のリーダーはあっしらに顔を向けたんじゃい。
その顔はヘラヘラしたものではなく、見たことがない真面目な表情だったんじゃい。
本気に感じたんじゃい。
「興味あります」
弟は静かに、されど可能な限りの急ぎ足で近寄ったんじゃい。
今まで探し求めていたものが目の前から消えてなくなろうとしているから、焦っているから仕方ないんじゃい。
オンは静かに道を開けるんじゃい。
「なるほど……」
革命軍のリーダーはそう呟くと、腕みたいなものを飛ばして弟の体を貫かしたんじゃい。
それは、オンの切り取られた右腕であり、いつの間にか取り込んでいたようじゃい。
弟は求めていた誘惑に心動かされて、不意をつかれて、心臓を貫かれたんじゃい。
「まぁ、わたくしめはあなた様の興味あることに興味ないえ」
革命軍のリーダーはヘラヘラ笑っていたんじゃい。
先ほどの真面目な顔は、誘い込むための罠だったんじゃい。
心底どす黒いヘドロのように腐った奴じゃい。
「このやろう!」
オンは、トドメを刺したんじゃい。
それはあっけなく終わったんじゃい。
憎たらしい笑顔の死体がそこにあったんじゃい。
「おい。大丈夫か?」
オンは弟に呼びかけたけど、返事がないんじゃい。
脈はなく、そこにはもう一つ死体があったんじゃい。
あっしはショックのあまり、周りがすべて遠く感じたんじゃい。
「くそ、また助けることができなかった」
オンは10年目を思い出し、がっくりしたんじゃい。
そのがっくりした反動で、弟の体がピクっと動いたんじゃい。
あっしは急降下したみたいに周りが近づいてきたように感じたんじゃい。
「生きている?」
オンが脈を取ると、止まっていたはすのそれは小さく動いていたんじゃい。
しかし、救命道具が近くにないここでは、死ぬ間際で助からないんじゃい。
あっしの命と引き換えに助けられるんならいいのだがじゃい……
「仇討は成功した。この戦いは我らが勝つだろう。後のことは、側近たちに任せれば大丈夫だろう。俺がいなくても大丈夫だったんだ」
オンは遠くを眺めるような顔でブツクサと独り言を始めたんじゃい。
あっしが思うに、再び助けることができずにトラウマが蘇って、ついにオンも頭がおかしくなったんじゃい。
そんなオンのことよりも、あっしを元に戻すために弟が死ぬのなら、旅なんかせずにあっしがさっさと死んでおけばよかったんじゃい。
「それに、俺ももう先が長くない。致命傷を負ったからな。ただ死ぬくらいなら、このものの命を守ろう」
オンは弟の指輪を触ったんじゃい。
すると、指輪は強く優しく光り、オンと弟を包んだんじゃい。
それは生命のように暖かく力強いものだったんじゃい。
「この能力は、いわば今までと逆の能力だ。強化された俺の力を指輪の持ち主に恩返しする能力だ。これで助かるだろう、俺の命を犠牲にな」
オンは自分の命を捧げて延命するつもりじゃい。
あっしからしたら弟が助かるならそれでいいが、本当にそれでオンはいいのかじゃい?
オンの命をかけた自己犠牲を弟になんて説明したらいいんじゃい。
「よかった。やっと死ねる」
オンは儚げな笑顔だったんじゃい。
そうか、こいつも能力者で苦労したのかじゃん。
ということは、あの憎たらしい革命軍のリーダーもじゃん……
後日、主人公は目を覚ますんじゃい。
あっしの説明を聞くもなく何かを察して涙を流しているんじゃい。
街を去るんじゃい。
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