第16話4-1:能力者狩り
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僕は能力者狩りが横行している街にいました。
そこは森に囲まれた質素な建物が点在している街でした。自然と共生しているのか、樹林や川の手入れをしているものがいたるところで目に付きます。僕は久しぶりに自然の美しさと人々の心の綺麗さを堪能していました。
が……
「あそこよ。あそこに能力者がいます」
女性がチンピラ風の男性を2人連れて行きました。それはとても綺麗な風景には見えませんでした。僕は醜い現実に戻されてショックを受けました。
僕はその叫んでばたついている女性について行きました。別に呼ばれているわけではありませんが、気になったので野次馬根性が生まれたのです。整備された草原を横切ったら、彼女たちの足は止まりました。
「そこよ、ほら!」
醜い男性がいました。顔は泥のような色と形でドロドロでした。成れの果てという印象を持ちました。
「待って。何も悪いことをしていないわ」
美しい女性がいました。ブロンドのサラサラした長い髪に蒼色のキラキラした目が白く美しい肌が魅力的でした。女性の美しさを久しぶりに知りました。
「あら、やらしい。相変わらずいい子ぶって、この子狐が」
女性が同僚の美しい女性を通報したのです、半分嫉妬で。嫌味な言い方です。僕は女性の醜さを短い間隔で知りました。
「いい子ぶるとか、そんなつもりじゃないわ」
美しい女性は決していい子ぶっているふうには見えなかったです。まぁ、僕は母以外の女性とあまり話してこなかった人間なので、演技であっても気づかないだけかもしれません。わからないことなので、静観しておきます。
「あーやだやだ。いつもそうやって男をたぶらかせて。次はその男なの? 変わった趣味しているわね」
あんたはいい趣味をしているな!と思いました。チンピラ2人を侍らして時代遅れかと思うくらい意地の悪い女でいるからです。役者として演じているのではないかと疑い、周りに隠撮しているものがいないかと目をキョロキョロさせました。
「私のことは悪く言ってもいいけど、ミニのことは悪く言わないで」
醜い男性の名前はミニというらしいです。美しい女性はミニを守る形で前に立ち塞ぎました。情けなく隠れる醜い男性。
「あーら、ウツさん。もう名前を言い合う関係なのね。手が早いこと」
醜い男性はミニ、美しい女性はウツ、と言う名前のようです。僕の勝手な先入観では、名前は逆の方が似合っていたのではないだろうか? 美しい女性がミニで醜い男性がウツのほうが似合っているイメージを僕はもつ。
「それは、あなたのほうじゃないですか……」
チンピラ連れの女性は自分の言葉がブーメランのように返ってきました。たしかに僕もそう思いましたが、実際にそのことを言うなんて、ウツは意外と胆力があると思いました。いえ、意外でもなく、ミニを守るために立ち塞ぐくらいには胆力があります。
「うるさい。やってしまいなさい」
小悪党の女リーダーみたいに命令したチンピラ連れ女性でした。連れのチンピラ2人はミニを掴み連れて行こうとしました。その最中に邪魔だったウツをチンピラたちは胸から突き飛ばしました。
僕から見て、そのウツに対するつき方はわざとでした。ウツの胸を堪能したいという欲望からでた行動です。実際、胸を触った手を嬉しそうに下品な笑いでゲヘゲヘと見つめていました。
それでもウツは懲りずにミニとチンピラたちとの間に割って入って引き離します。その最中に胸や股を不自然にまたぐられることに我慢しながら、引き離すことに成功しました。ウツがミニを匿っています。
チンピラたちは再びウツを連れて行こうとし、ウツは再びそれを防ごうとします。揉みクチャの中、チンピラたちの目的はもはやウツの体へと変化しており、陰湿なものでした。その周りからいじめられている者たちの光景が嫌で、僕は助けることにします。
「やめなさい」
チンピラたちは僕の方向を振り向きました。その手はやはりミニの体ではなくウツの胸と股をまさぐっていました。僕はもう許す気がありません。
「なんだオメェらオラぁ!」
「邪魔するんならしばき倒すぞボケぇ」
「お前たち、やってしまいなさい」
チンピラたちはこっちに向かってきました。彼らは僕に勝つつもりで向かってきます。僕はため息をつきました。
「――覚えてろよー!」
女性が逃げ、ボコボコの顔になった2人のチンピラが後をついて行きました。服装を正したウツと怯えて身動きひとつしないミニは、助けた僕に奇妙な目を向けていました。どうやら、見ず知らずの人間に助けてもらったことが不思議だったようです。
「ありがとうございます」
ウツは忘れていた事を突然思い出したようにハッとしました。その後ろではミニが何もしていません。僕はウツを助けることには違和感がありませんが、ウツがこんなミニを助けることは、言い方が悪くて恐縮ですが意味がわかりません。
「どういたしまして。それでは……」
僕は去ろうとしましたが……
「――ちょっと待ってください。お礼をさせてください」
ウツは僕の手を握って目をまっすぐ見てきました。こんにゃくのようにスベスベした手で、吸い込まれそうなくらい綺麗な目でした。僕は手を振り払って去りたかったのですが、その目にブラックホールのように吸い込まれて勧めませんでした。
「いいえ。そこまでは……」
僕は嬉しい気持ちを押し殺しながらも、あまり街のものと親しくならないように離れたかったのです。親しくなったら情が沸いて、敵対したときに気持ちの整理ができないのです。だからとりあえず口で宣言して、言霊のように言葉の力を頼って離れようと企んだのですが……
「オイラからもお願いだ」
ミニも手を握って目をまっすぐ見てきました。ジャガイモのようにゴツゴツとした手でしたが、吸い込まれない範囲で目は綺麗でした。ウツとは似て非なるものというか、その逆というか、なんというか……
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