第25話4-4

前の葉の時のように地下に落ちるというわけではなく、この葉で何回か起きている葉の一部分が落ちるものでもなく、葉全体が崩れて大樹の下に落ちるものでした。

ジュンは血のハーケンとロープを大樹に打ち付けて咄嗟に助かろうとしました。

気力をなくしたダインは何もせずに瓦礫と共に落ちていきます。

ジュンは血のロープを伸ばしたが、ダインは掴む素振りが全くありませんでした。しかし、ジュンはそれも見越してロープをダインの体に巻きつけました。しかし、それは切れてしまいました。

何者かがロープを切りつけていました。緑色のマントで姿を隠した者でした。体から緑色の液体を共鳴して刃にしたものを出していました。

そのまま蹴落とされて落ちていくダインに大樹がツルを伸ばして巻き付かせました。後生大事に絡まれたダインはゆっくりと大樹の近くに運ばれます。ジュンは大樹にくっつきながら、はるか下で行われているそこに降りていきます。

「これはいいことなのか? 大樹がダインを助けようと?」

 その時、別のところで、登樹の時に襲ってきた女性がダインと同じようにツルに巻き付かれていました。その人はそのまま口のように開いた大樹の部分に飲み込まれていきました。その奥には白い骨が見えていました。

「いっ!? これはまずい」

 ジュンはダインを巻きつけるツルを切り取ろうとハーケンを飛ばしました。しかし、それは例の緑マントの何者かに弾かれました。

「どけー!」

 打ち合い。

 赤い血のハーケンと相手の緑の刃との打ち合い。互いに刃こぼれを起こし合い、赤と緑の液体が火花のように飛び散ります。ジュンは歯を食いしばります。

 ジュンの血のハーケンが緑の刃を貫通して敵に刺さります。

 ジュンは打ち合いを制して、その敵をダインを飲み込もうとする口のようなところに突き飛ばしました。それはダインの代わりに飲み込まれていきます。

 ジュンはダインを巻きつくツルをハーケンで切りました。そのままロープで捕まえました。引き寄せようとしました。

 どこからか、大量の何者かが現れました。赤白黄色と何色ものマントの者が花のように綺麗に並んでいました。花粉のように一斉に飛びついてくるのです。

 ダインを巻きつけていたロープは切り取られました。赤白黄色と様々な色の刃でした。そのまま、連れて行かれました。

 ジュンは飛ばされて、そのまま大樹の口みたいなところに飲み込まれました。それに対抗して血のハーケンやロープで力尽くで脱出しました。が、すぐに大樹のツルで丸め込まれて、再び飲み込まれました。

 ジュンは意識を失いました。

 ジュンが飲み込まれた場所は大雨に打たれていました。


――

 ジュンは目を覚ましました。

ジュンは1人の人間として大樹から生まれました。そこはどこかの葉の上の森の中で、きれいな湖が側にありました。フワフワとした頭痛を感じながら重い体を起こします。

「ここはどこだ? 僕は誰だ? 何をしているんだ?」

 ジュンは大樹から立ち上がり、湖に入りました。湖の水を割って底を歩き、水を泡立たせたり弧を描いたり浮かしたりと、自分の思う通りに操りました。両手で固まった水に手を当てながら、ぼんやり考え事をする素振りだけをして、頭を空にさせていました。

「何だ、これは?」

 ジュンは共鳴の能力を知らずに使っていました。

 

ジュンは少し旅をして、大きな街についきました。大きな建物で書物を漁っていました。ジュンはそこで自分の目的を知るのでした。

「なるほど、大樹に人の血を与えればいいのか」

 ジュンはその街の人々を全て血に変えて、街は滅びました。その一瞬は血で潤った葉ですが、養分としての血がなくなったその葉はその後、枯れていきます。それでは長続きしないのでダメだと頭に直感らしきものが走ります。

「……なるほど、すみません。この方法は間違っているのですね」

 

 ジュンは日陰に覆われた葉にたどり着きました。そこの地上は白黒一色でかつ砂しかありません。地下に行くと、仲良く暮らす住民がいました。

「永続的に血の搾取が続くようにしないと、か」

ジュンは日陰の街で戦争が起こるように指示します。初めはそこの住民たちも意味が分からず追い返そうとするのみでした。そんな住民たちを無残にも殺します。

「こいつを殺せ」

 仲間・友達・家族とお構いなしに殺し合いをさせます。時には強制的に、時には感情に漬け込んで、時には利益をちらつかせて。住民たちは震えながらも抵抗は諦めていました。

 そのうち、殺し合いのループ・復讐のループ・負のループが起こりました。その街は永続的に血を流し続けることになりました。もはや、ジュンは何もしていません。

 しかし、それに反抗するものもいました。

「上手くいかないな」

そのものはジュンに対抗して死にました。ジュンはそのものを英雄として祭り上げ、互の陣営に対して英雄として相手の陣営に殺されたと吹聴し、殺し合いの大義名分として活用しました。さらに死の連鎖が強くなりました。

「……なるほど、すみません。街が荒れたら効率が悪くなるのですね」


 ジュンは立派な門がある葉にたどり着きました。そこには特に門番はおらず、出入り自由でした。同じような姿かたちの建物や人々が活発に暮らしている姿が一望できました。

「正当化させて、街が荒れないように、効率的に、か」

ジュンはこの豊かな街で血祭りの儀式を普及させようとしました。永久的かつ街が荒れない方法として考えたことです。しかし、ここでも最初は抵抗されます。

「人柱を捧げなかったので、こうなったのだ」

 街は化物虫に襲われ、作物は不作になり、疫病が流行りました。もちろんそれはジュンが裏で糸を引いていました。共鳴の力で、化物虫たちや作物や疫病を操るのです。

 街の人々は生き残るため、人柱を捧げるようになりました。ジュンは上手くいったと安堵しました。これが理想でしょうか?

 しかし、そのことに不満を思うものもいました。しかし、まだ表面化していませんでした。しかし、ジュンは気づいていました。

「これも上手くいかなくなるかもしれないな」

 ジュンはそう思いながらも、今のところは上手く事が進んでいるので見逃しました。しかし、もっといい方法があるのではないかと改良の余地を考えていました。しかし、その方法はわかりませんでした。

「……なるほど、すみません。何かが足りないのですね」


ジュンはとある平凡な葉にたどり着きました。森が広がり、そこを抜けると街がありました。こじんまりとした街です。

「少し観察しようか」

ジュンはその街に故郷のような懐かしさを感じました。その街では、何もせずに観察だけしていました。すると、学校という物に目を見張りました。

「なるほど、教育か」

 ジュンが観察してわかったことは、人を支配していることは教育であるということでした。親・学校・知り合いからの教育によって支配される。したがって、教育を徹底したらいいのだと結論づけました。

「上手くいくかもしれないな」

ジュンはモデルとしてこの街を残しておこうと思いました。または、恩返しとして手を出さないでおこうと思ったのかもしれません。もしかしたら、本能でこの街を荒らしたくないのかもしれません。

「……なるほど、すみません。次はきちんとします」


 ジュンはとあるこれまた平凡な葉にたどり着きました。全く知らない街です。その時に奇妙に気づいてことが、今まで訪れた場所はどこか知っているところだったということです。

「さて、実験だ」

ジュンはその街での共鳴教育に成功しました。街の人々は大樹の養分となる共鳴の能力を身につけました。そして、大樹を登ったりして命を失い、大樹の養分になることをし始めました。

「上手くいきました」

 ジュンはその様子を見て、どこかで誰かに聞いた故郷の話が頭にかすりました。しかし、それは闇に消えました。ジュンは目的を達成して、目標を見失いました。

「……なるほど、すみません。僕はここまでのようです」

――


ジュンは目を覚ましました。

夢を見ていたのです。頭がガンガン鳴ります。動悸が収まりません。

大樹から出る新芽に引っかかっていました。新たな葉がここから形成されるのでしょう。新しい匂いをジュンは感じていました。

「どうしようか」

 晴天の下、ジュンは途方にくれていました。

 変な夢を見た影響か、体中が汗でビッショリでした。服の水気が冷たく、少し酸いた匂いがしていました。上の服を一時的に脱ぎます。

「うーん、ダインは助けられそうじゃないし」

 敵の数、大樹の動向、ダインの意気消沈ぶりを思い出しました。

「神秘の果実も、作り方がな」

 人の血で作られることを思い出しました。

「というか、僕が関わったらロクなことないしな」

 今まで訪れた場所での出来事を思い出しました。

……

「――まぁいっか。考えるのが面倒だし」

ジュンは上に向かうことにしました。初志貫徹として、大樹を登ることを選びました。先のことを考えるより、行動を起こすことにしたのです。

やるせない気持ちで登樹することにしました。


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