第17話3-2

2つ目の葉に到達しました。

そこは大樹の幹によって日陰となっており、とても暗くて寒くて閑散としている平地でした。見渡す限り何もなく、白と黒しかない世界でした。

「どこに街はあるんだ?」

 いつもの青一色の服を着ながら、ジュンはその白黒の世界に混じっていきました。歯をカタカタと鳴らしながら腕を抱いて震えます。

「もしかしたらないかもしれないわ」

 赤が基調のダインも白黒の世界に混じりました。しかし、寒さに震えることはありませんでした。共鳴の能力で体の水分を暖かくしているのです。

「そんなことあるの?」

「たまにあるわ。とりあえず探しましょう」

 歩いていると人の骨が砂から無造作にはみ出ていました。ジュンは膝まづいて骨をツンツンとつつきます。どうやら本物のようです。

「ここは墓……なのか?」

「わからないわ。もしかしたらただの平地で死んでしまっただけかもしれないわ」

「かわいそうに」

「あら、意外とメルヘンチックなのね」

 手を合わせてお祈りするジュンに対して、ダインは冷やかすようなことをいいます。ジュンは世間知らずのお嬢様を見るかのような目を向けます。

「……一応、お世辞でも言うでしょ、こういうこと」

「そういう人もいるわ。でも、私は言わないわ。言うのも飽きるくらい人の死を見てきたわ。だから、途中から言うのを忘れたわ」

 前言撤回、世間を知りすぎているたくましい女傑でした。自分と同じくらいの年齢でそういう世界を見てきたのかと思うと、ジュンは自分自身こそ世間知らずのお坊ちゃんだと恥ずかしくなりました。静かに立ち上がります。

「……先に進みましょう」

 その死体の先へ1呼吸分進むと、足場が崩れました。

「ええっ!?」

 ジュンは下に落ちていきます。下は深い黒の景色が広がっていました。白い砂が雪のようにその闇の中へ共に舞い落ちていきます。

「全く、これだから」

 ダインは落ちていく者たちに対して地面の上から高みの見物を決め込んでいました。ジュンと違ってそういう事故に巻き込まれるほど呆けていないのです。

 と、ダインの足にジュンの手がかかりました。

 が、蹴り外されました。

「!?」

「そう来ると思ったわ」

 ダインは蔑む顔で見下ろしました。目に光がなくなったジュンは手を伸ばすが空を切るばかりです。そのまま闇が深くなります。

 と、ジュンの血のロープがダインの足にかかりました。

「躱すことくらいわかっていた!」

 が、ダインはそれを水の刃物で切りました。

「あっそ。頑張って這い上がってきてね」

「ちくしょーー……!」

 ダインは自分を巻き込もうとしたジュンを見下しました。ジュンの姿が声とともに闇に消えて行きました。2人の距離が心身ともに離れました。

 と、ダインの足場も崩れました。

 が、が、が……

「嘘でしょ!?」

 ダインも落ちていきました。


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