第19話2-6デートデートデート
「――そんなもの効かないわ」
銃弾を生物に変えていました。御主人様の足元には銃弾の大きさの生物がたくさん蠢いていました。
「くそ、化物め」
「悪魔の子」
「生命への冒涜だ」
男の仲間たちはヤジっていました。
「聴き慣れた言葉よ」
ご主人様は小さな生き物たちを解き放ちました。それらは俊敏に男の仲間のところに向かって行きました。あるものは貫通を、あるものは返り討ちを、あるものは……
混乱模様
「嫌われていうな、相変わらず私は」
ご主人様は賑やかなところを静観していました。次の一手を考えているのでしょう。周りからは相変わらず悪口が飛ばされていました。
「嫌われているのは分かっている」
それでも怒号は止みません。
「それくらい分かっている」
ご主人様の背後から銃声。
「!?」
ご主人様は剃り返していました。
「ご主人様?」
御主人様の影から男の仲間が姿を現してきます。それとともに、周りの敵たちは血気盛んに笑い始めました。
「俺たちは囮だ。隙を見て背後からズドンだ」
「あっけないものだね、まぁ、死んでなければいいんだがな」
「死んでても別にいいさ。当たり所が悪かったということだろ?」
周りが悪魔のようにニヤついています。
――
「――まぁ、そんなことだろうと思ったよ」
ご主人様は平然としていました。
「何?外れたのか?」
「いや、明らか当たっていただろ?」
「当たっても何ともないなんて、怪物か」
周りはどよめいていました。
「きちんと見ていたよ。どうせ囮なんだろうってわかりきっていたからね」
御主人様の足物とに銃弾くらいの大きさの生き物が新たに生成されていました。それが、背後の敵に襲います。
「そんな」
「さぁ、もう終わりかい?次は私の番かい?」
――
「――いいや。デメさんの番はない」
男のナイフがご主人様の腹部に突き刺さっていました
「――これは計算外」
「大人しくしていていろ。デメさんに暴れられては困る」
ご主人様はその場に倒れました。
「おー。お前、よくやったな。これで出世間違いなしだな」
「そんな褒めているけど、自分の手柄にしようとしているんじゃないのか?」
「だれが代表だとしても、私たちチーム全体になにかしら賞与があるだろ」
周りは後の報酬のことを言い合っていました。
「ありがとうございます。大変だった」
男は綺麗な手で額を拭っていました。
「そうか。ところで、デメはお前が持っていくか?それとも別のやつに持って行かせるか?」
「自分で運ぶ」
男はご主人様を背負いました。
「そうか。まぁ、その方が手柄が確実に自分に来るよな。任せた」
「ありがとうございます。それと、その人間の奴隷だが、どうする?」
僕のことを顎で指しました。
「まぁ、殺すしかないだろ。今回のことを知っているのだから」
「たしかに、今回の事件を知っているものは邪魔だな」
「そうだ。まぁ、こういう仕事の基本だ。人間なんか掃いて捨てるだけだ」
「そうですね。掃いて捨てるだけだから大丈夫だな」
「ところでお前、そのデメから血が流れていないのだが……」
仲間を無視する男が見上げると、頭上の水槽の魚たちが次々に石に変わって、ガラスを突き破ってきました。
魚雷のように石の雨。
「おまっ、うらぎっ……」
生物が落下物に押しつぶされる音がしました。
砂煙が数分後に床へ沈殿して、視界がクリアになりました。
周りはメドューサの血と水槽から溢れる水で満ちていました。
「――生きている?」
「よぉ、元気か、人間?」
灰被りながら倒れている僕の頭の上にご主人様をおんぶしている男が立っていました。ご主人様が呼吸しているのを確認してほっとしました。
「もしかして、僕たちを助けてくれたのですか?」
「――デメさん以外は知らね」
「奇跡的に助かったのですか、僕は!?」
まさかのご主人様だけ贔屓に反射的に驚きました。
「でも、お前はデメさんの味方だろ。だったらトドメは刺さない」
男は生き残っていたと思われる同僚の頭を拳銃で撃ち抜いていました。
「それはありがとうございます。でも、どうしてですか?仲間を裏切って」
「俺はデメさんが好きだ。ただそれだけだ」
静かに呟きました。
「でも、仕事はきちんとしないといけないのではないのですか?」
「きちんとしているさ。その結果、今回は事故によって失敗したと上には連絡する。だから、目撃者は殺さないとな」
「そういうものですか」
「あぁ、仕事の基本だ」
仕事はきちんとする、か。
一週間後、再びご主人様にデートを断られている男がいました。仕事をきちんとしているようです。
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