第6話1-5初体験
僕はご主人様に体のすみずみまで洗われました。今までは特殊なプレイの時にしかなかったことですが、ご主人様はそういうプレイをしたわけではありませんでした。本番まで我慢しようとしているのかと思いながら、自分には身分不相応な純白のタオルを服のように巻きながら先ほどまでいた部屋に戻りました。
「ご飯は出来上がっているよ」
ご主人様は僕がタオルで体を拭いている間に料理をしたらしく、机の上には石の器にスープが移されていました。そこから湯気が出ているのですが黒い煙も一緒に上げているので火事かと思い、器ではマグマのように粘っこい黒いものが泡を吹かしていました。僕はその料理に拷問を覚悟し、それとは別にご主人様への失態を恥じて駆け足で近づきました。
「そんな申し訳ございません!」
「どうして謝ることがあるのだ?」
「本当なら僕がご飯の準備をしなくてはいけないのに、お風呂に入っていたばかりに」
「君はなにを言っているのだ?」
「ですので、奴隷の身分でありながらご主人様より先にお風呂に入り、ご飯まで作っていただくなんて」
「それも奴隷としてはありえないのか?」
ご主人様は目を点にさせていました。奴隷のことを何も分かっていない赤子のような反応でしたが、今まで奴隷を雇ってことがないということで仕方ありません。僕は自分が知っている範囲で説明することにしました。
「――ないことはないですが、大量に雇っているところで一気に風呂に入れられ一気に作られたご飯を頂いたことはあります。でも、それは労働以外の手間を省くための処置でして、こういう1人で雇われているところでは経験がありません」
「では、初体験か?」
「その言い方は……」
僕は、ご主人様が真面目に言っているのか冗談で言っているのかわかりませんでした。この、初体験、という言葉は性的な意味合いで使われることがあり、そのことで性的な場合でない時も隠語として冗談で言う場合があります。普通は言い方や表情で冗談か否かわかるのですが、ご主人様は何一つ変えない表情と言い方なので判別できません。
「うん?初体験か?」
「……そういう意味では初体験です」
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