第3話1-2受け渡し

 受け渡しのときに飼い主をまじまじと見るのですが、ほかの女性メドューサと同様に青色だが人と変わらぬ髪質に色白の肌で宝石のように青い瞳をしていました。モデルのようにスラっとした顔に胴体に手足でして、性格を度外視したら男性を石のように固くさせる魅了がありました。気になったのは、寒いというわけではないが暑くもない季節に、真夏のように白のノースリーブに黒の短パンで裸足に藁のサンダルというところです。

「君は今日から僕の家で暮らすのだよ」

そのものは僕に綺麗で色白で長い指が印象的な手を差し伸べました。僕がメドューサに虐げられなかった人間ならドギマギするのかもしれませんが、今は反射的に冷や汗が出るくらいです、というのも嫌な顔等のわかりやすい反応がなくなるくらい教育をしてもらったからです。僕は体の表面をジンジンと軋ませながら平静を保ちました。

「かしこまりました、ご主人様」

「そんなにかしこまらなくてもいいよ」

「?」

「君は今日から私のペットだ」

 新たなご主人様は今までのものたちと違い喜ぶのでもなく業務的に出迎えるわけでもなく淑女的な態度でもありませんでした。そういうものたちは壊すのにいいおもちゃを見つけたことや壊れてもいい道具を手に入れたことや裏の凶悪性を隠すものでした。ご主人様は目に覇気がなく口を湾のようにポカンと開けて眠たそうに肩から袖をずらしていました。

「ペットというのは奴隷のことですよね?」

「むっ、そうなのか?」

 ご主人様はあくびをしながらのどちんこを見せてきました。奴隷に興味がないのか徹夜だったのか何なのか。僕は背中をもつ裏方を見返したが硬い表情を崩していませんでしたので、早く売られろという無言の圧力に背中を押されながら話を続けました。

「違うのですか?」

「わからぬ。私は奴隷もペットも飼ったことがないから」

「それは珍しいです。今や1家に1人人間を飼うのが普通ですよ」

「そうか。私はあまり周りに合わせることが得意でなくてな」

「無理に合わせる必要はないと思います」

 一応ご主人様でしたのでヨイショはしておこうと思いましたが、奴隷の世界なら生きていけないだろうなと内心馬鹿にしていました。そういう甘ちゃんが飼い主にとっては格好のいたぶる対象になることは珍しくないのです。僕が思うに、差別とは残酷なものです。

「ところで、私のイメージでは、ペットとは家族みたいに扱うもので、奴隷とは道具のように扱うことなのだが、違うのか?」

「それは僕にはわかりません。ペットといわれているものでも奴隷と何も変わらない扱いを受けているものを何人も見てきましたので」

「そうか。では、私は君のことを何として扱うと言えばいいのだろうか?」

「ご主人様にお任せします。奴隷でもペットでも何なりと」

「――じゃあ、家族……かな」

「わかりました。今日から僕は家族です」

 飼い主の世界で存在するらしいその言葉に僕の心は響きませんでした。

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