06 映画館でトラブル発生

薄井うすい実理みのりは今日も会社で、理不尽に散々、人生なにも上手くはいっている気がしなかった。気分が滅入る。時刻はもうすぐ18時だ。帰りを待っていない部屋に素直に帰りたくはない。

 足取りが重くて、俯くように歩いてしまっている。ショッピングモールの脇を通り過ぎようとしていると、ショッピングモール内に映画館があることに頭に浮かんできて、吸い込まれるように、映画館がある9階に行くためのエレベーターに乗り込んでいた。

 私以外には青いジャケットを羽織った男性1人が乗っていた。9階にエレベーターのドアが開くと、そこは暗めの明かりが照らしていた。カウンター映画を観ることにした。特に観たい作品があるわけではないので、チケットカウンターの後ろ上に設置されている画面に流れるように、表示される映画タイトルと時間を眺める。今すぐ観れそうな映画を探す。

何も考えず、チケットカウンターで、時間的にすぐ始まる洋画を選択した。カウンターに座わる男性スタッフに、「お席をどこにいたしますか」と画面が表示されたタブレットを見せられて、真ん中の端っこを選択する。

「すでに、ご入場できますので、スクリーン5においでください。ごゆっくり、お楽しみください」と男性のスタッフの方からチケットを受け取る。あと10分くらいで、上映される。チケットをもぎるってくれる女性は笑顔だった。


スクリーン5に入ると、通路の階段を降りていくと、前の席にエレベーターで一緒に乗り合わせたいた青のジャケットの男性らしき人が座っているのが見えた。周りと見渡すと、100席ほどのあるはずなのに、10人程度しか客がいなかった。すべての人が1人で来ているようで、バラバラに座っている。

 座席に着いて、映画に浸ろうと決めるように、座った。そこで大きなため息が出てしまった。ただスクリーンには映像が流れていたので、バレていないこと祈った。

 周りが暗くなり、スクリーンの両端のカーテンが開らいていていく。目の前にある大きなスクリーンは、どこか、寂しい空気が浮かんできた。


 静まり返っていて、人々がバラバラで座っているので、誰かの会話が聞こえてくることはなかった。画面心が落ち着かせるように、目の前にある大きなスクリーンに見入るように、上映中のマナーについての映像が流れ始める。その時、前からワハハと笑い声が聞こえてくる。暗い中、その方向に、目線が下がったが誰かは分からないが女性の声だ。海外の方で、NO MORE 映画泥棒の映像を初めてなのかもしれない。

長めの映画の宣伝が始まる。それを漠然と見つめる。

 映画は冒頭から、アクションシーンだった。どこかに宝が眠っているから、探しに行こうという展開。会話がほとんどなくて、英語が少ないから、洋画としては比較的に観やすかった。ただ、あからさまなワイヤーシーンに破目入りそうなっていく。


 映画が終わると、前の方で声がした。

「手挙げるなよ」 

 エレベーターで一緒だった青いジャケットの男だ。

「はあ、知らねえし。人のせいにしたいでよ」

女性の声だ。

「なんだなよお前。そのせいで、スクリーンに映し出される字幕が隠れて、字幕が隠れたんだよ」

「知らないっていってんじゃん。人のせいにしたいでよ」

「キモイんだよ」

 男性が女性の顔を殴った。

「何にすんだよ」

女性が掴みかかるが、男性は振りほどいて、室内出て行った。女性が尻もちをついて、「ちょっと誰かー」と叫んで泣いているが誰も近づかいないし、室内から出て行っていた。実理も関わりたくないので、そそくさと、出て行った。

 トイレに寄って、帰りにエレベーターに乗ろうと進んで行くと、チケット販売のカウンター付近で、声がした。

「さっき、殴られたんですけど」

「武藤様、申し訳ございません。お客様同士のトラブルは関与できませんので」

と会話が聞けてきた。さっきの殴られた人だろう。エレベーターのドアが開き、そのまま乗り込んだ。

 すこし、あの女性が殴られたことで、実理の鬱憤が晴れた気がした。

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居場所の迷子 一色 サラ @Saku89make

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