第34話エピローグ


○ エピローグ


――私たちは浜辺で白ミイラを介抱した。塩があると回復するということでここにいるわけだ。他のミイラたちも怪我をしているが、白ミイラに比べたら大したことがないから気にするなということらしい。

波の音と潮の香りが静かに聞こえ、先程までの戦いが遠い過去のようだった。私は夢を見ていた気分だが、すぐ横にミイラたちいるから現実だと地に足をつけていた。私は今までのことを思い返していた。

ミイラやゾンビとの出会い・家族を殺された事件・公園で野宿した。それからも、海での戦い・陸での戦い・謎の場所での戦いがあった。これから先はどうなるのだろうか?

「おい」

 白ミイラが目を覚ました。

「大丈夫?」

「お前にそれを言われるのは屈辱だ」

「な?!」

 私は怒りの拳を振り上げたが、静かに下ろした。

「どうした?殴らないのか?」

「殴らないわよ。そんな元気ないわよ」

「なに大人ぶっているんだ、似合わない」

 ガツンッ!

「いったいなー」

「殴られる方が悪いのよ」

「――それよりも、これからどうするんだ?」

「どうするって?」

「俺たちと一緒にいたら危ないぞ。といっても、俺たちから離れても危ないが」

「……つまり、これからも一緒にいるかどうかを決めろ、ということね」

「そうだ。時間をかけてゆっくり考え……」

「一緒にいるわ」

 私の即答に、白ミイラは驚いたような反応の雰囲気を刺した。

「あら、驚いた、即答して?」

「あぁ、そんなに適当に決めていいのか?」

「適当じゃないわよ。私なりにずーっと考えていたのよ。それこそ、あなたが倒れていた長い間中ずーっとよ」

「それはすまない」

「謝らないで。そういうつもりで言ったわけじゃないから」

「そうか」

「私はね、ただ単にあなたたちから離れた方が自分の命が危ないと思っただけよ」

「そうか」

「そうよ」

「じゃあ、これからもよろしく」

白ミイラが包帯を伸ばしてきた。

「よろしく」

 私は手を差し出して握手しようとした。

「何してるのー?」

「「わぁ!!」」

 桃ミイラの言葉に私たちが驚いた。

「仲良しの握手は面倒くさいから嫌なんだけどなー」

「あいはそういう礼儀はいいと思います」

「やろうぜ、いや、やっぱりいいか」

「私はこの中で一番得意よ、握手」

 ぞろぞろとみんなが集まってきた。なんか、締まらない空気になってきた。でも、握手する空気にはなっていた。

 なんか、まぁ、とりあえず、生きているっていいなと思うわけですが、ミイラと一緒にいたらよけいにそう思った。でも、明日になったら私はミイラかゾンビになっているかもしれないと思った。しかし、今はこの魅力的なミイラたちと一緒にいようと思った。

 私とミイラは互いに仲良くなっていた。初めからそうだったかもしれないし、途中からそうなったかもしれない。私はミイラを魅入っていたし、一方で私はミイラに魅入られた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミイラに魅入られた すけだい @sukedai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ