第33話3-10:黒と白
5つの棺桶は威勢良くぶっ壊れた。それとともに、5体のミイラが勢いよく棺桶から出てきた。戦力の勢いは完全に白ミイラ側だった。
「うち、死ぬかと思ったわ」
「わしはこのまま死んでも良かったわ、面倒くさいから」
「あいはうれしいです。ありがとうございます」
「おらも頑張るぞ。いや、やっぱりやめようかな」
「あたしも参戦するわ」
5対そろい踏みに、黒ミイラはたじろいだ。黒ミイラは焦りすぎて体にまとう風を失っていた。しかし、蒸発は止まっていた。
「白ミイラめ。自分を犠牲に仲間を助けやがって」
黒ミイラは倒れている白ミイラを睨んでいた。しかし、すぐに睨む先を空に移した。そして、その睨みの先は黒フードに変わった。
「黒フード、どうして止めなかった?」
黒ミイラは詰め寄って詰問した。
「その理由を聞きたいか?」
「ぜひ聞かせてもらいたいね」
「そうか、それなら……」
バコーン!
黒フードは黒ミイラを一瞬で地面に叩き込んだ。
私たちは固唾を飲んで流れを見ていた。
「がっ、ヴゃにをずる」
「お前こそ、何をしてくれようとした?」
「俺はあいつらを倒そうと」
「倒すのはいい。問題は殺そうとしたことだ。殺すのはダメだといったよな?」
「そ、ぞれは」
「大切なのは、生け捕りにすることだ。殺してしまっては意味がない。白ミイラを殺そうとしたお前は失格だ」
「……」
「俺がいつでもお前や白ミイラを殺すことができたのにしなかったのはなぜだと思っている?殺すことは簡単だが生け捕りにすることは難しいからだ。一体でも欠けたらその瞬間に終わりだ」
「だからといって、棺桶破壊を止めることは……」
「殺してしまう」
「せめて、あおの人間を人質にすることは……」
「それは……」
黒フードは私をチラっと見たが、すぐに視線を離した。私は頭がハテナだった。
「……とにかく、ここは撤退だ」
黒フードたちは撤退の準備として、先程までどこにいたのかと言いたくなるくらい大量のゾンビたちを呼び出した。そして、その中に姿をくらましていった。ミイラたちはゾンビを駆逐することで精一杯で、黒フードと黒ミイラを追いかけることができなかった。
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