第31話3-8:黒

「なにしているのよ?」

 私は黒ミイラに叫んだ。

「何って、攻撃だ」

「そうじゃなくて、どうして見方を?」

「あぁ、それか。お前、察しが悪いな」

「え?」

「おれは黒フードの仲間さ。つまり、お前たちの敵だ」

 黒ミイラを纏う風がどす黒くなった。

「そんな」

「おれは黒フードを助けに来た。だから白ミイラを攻撃するのは当たり前だ。そして、それはお前を攻撃することにも当てはまる」

 黒ミイラは漆黒の風を私に飛ばしてきた。私は手でガードにならないガードをしようとしたが、その手前で白い包帯がガードしていた。白ミイラが包帯を伸ばしていたのだ。

「白ミイラ、大丈夫?」

「お前こそ大丈夫か?」

 白ミイラの包帯が少し破れながらも風を弾いた。風は壁にぶつかって、壁を大きくえぐっていた。白ミイラの包帯は頑丈だと理解した。

「ほぅ、頑張るな白ミイラ」

「黒ミイラ、お前、騙していたのか?」

 白ミイラはボロボロの声で尋ねた。

「お前がそう思うのなら、そうなんだろう」

「どうして黒フード側に?」

「何を言っているんだ?俺は初めからこっち側だ」

「なに?」

「俺は正義側に立つものだ。お前たちが守ろうとしている人間側は俺からしたら守る価値のない悪側だ。だから、俺はこっち側についた」

「……別に人間側というわけではないが、お前は自分をミイラにしたそいつに恨みはないのか?」

「ないね。むしろ、俺が自分からミイラにしてもらった」

 私たちは息を詰めた。

「どうしてだ?」

「だから言っただろ?俺はミイラ側に着くのを決めたと。そうなってくると、ゾンビかミイラになったほうが筋が通る。だから俺は筋を通すためにミイラになったのさ」

「通す筋がおかしいだろ?」

「それはお前の考え方からだろ?俺の考え方からだと筋が通っている。その主おことして、ゾンビではなくミイラになった。自分の信念を持っていなければ脳死状態のゾンビになっているところだったが、そうなっていないんだよ」

 ゾンビのように狂気じみた雰囲気を醸し出していた。

「ゾンビになっていれば良かったのに」

「そんなことを言うなよ。嘘とは言え一時は仲間だっただろ?」

「そうだ。お前、敵だったらどうして俺たちをこの島に送った?」

 白ミイラの言葉を聞き、私はこの島に漂着したときのことを思い出した。

「それは、お前たちをこの島に連れてくる必要があったからだ」

「なんだと?」

「お前達みたいな裏切り者が外でウロウロしていたら、黒ローブやゾンビたちは動きにくいんだよ。実際にその人間の時のように何回も邪魔をされているし。そろそろ邪魔者を倒してしまう必要があるんだよ」

 私を包帯で指差す黒ミイラ。

「だからといって、なぜこのタイミングだったんだ?今までもいくらでもタイミングはあっただろ?」

「理由は簡単だ。その人間だ」

「?」

「ちょっと、どういうことよ?」

 私は疑問を呈しながらある予想を立てた。

「理由を聞きたいのか?」

「もしかしてだけど、私の特殊な力が備わっているの」

 私の言葉を聞き、黒フードが歯を見せるくらいニィっと不敵な笑顔を見せる。その近くで、黒ミイラが話を続ける」

「え?何のこと?」

「違うのー!」

「いや、ただの足でまといというか、人質にちょうどいいなぁーっと」

「そんな理由?でも、黒フードは意味深な笑顔を」

「あほなことを言っているなぁー、ということだと思うが」

「もういや!この状態も、私も」

 私は頭から湯気が上がっているほど恥ずかしかった。

「それよりも、だ」

 黒ミイラは黒い風で何かを運んできた。

 そこには、透明な棺桶に飛び込められた他のミイラ5体が拘束されていた。


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