第21話2-9:黄ミイラ②
「――黄ミイラは、生前、面倒くさがりだった。いや、それは今もか。あいつは学校とかでも面倒事には首を突っ込まなかった」
「よくいるタイプの人ね」
「ただ、それによって物事が進まないことも面倒くさかったらしい。それで、文句を言いながらも問題解決に取り組んだらしい。その手腕はテキパキとしており迅速に問題解決したらしい。その電光石火の解決スピードは重宝されるが、本人はすごく面倒くさいのでよほどのことがない限りはだらけることにしていたらしい」
「やればできるタイプね」
「あいつは学校を出たあとは、金融関係の仕事についたらしい。理由は、楽して金儲けできそうだかららしい。でも、実際はとても忙しくてだらけることができなかったらしい。あいつは面倒くさいと思いながらも楽するために一生懸命頑張ったらしい。楽できていないではないかと自分を嘲笑しながら頑張ったらしい。持ち前のやればできる能力できちんとやってのけたらしい」
「社畜タイプね」
「そんなあいつだが、ある日に問題が起きた。というのも、ゾンビと出会ってしまったのだ。ちょうどあいつが会社と客のお金をちょろまかせているところを見られてしまって、相当焦ったらしい」
「……ちょっと待って。今、お金をちょろまかせているって言わなかった?」
「そこであいつは、そのゾンビから一生懸命逃げた。ついでに警察からも一生懸命逃げた。しかし、警察に捕まってしまったらしい。それであいつは生きることが面倒くさくなったらしい。そのまま独房に放り込まれてしまったらしいが、面倒くさいからそれでもいいかと思ったらしい。すると、黒フードが現れて、ゾンビから逃げ切ったところを評価されて勧誘されたらしい。しかし、面倒なことになりそうだと思って勧誘を断ったらしい。すると、誘拐されてしまったらしい」
「いや、クズでしょ?犯罪者でしょ?ダメな人でしょ?」
「ぞのままゾンビ化が失敗してしまってミイラになってしまったようだ。しかし、あいつは色々と面倒くさいからそれでもいいと思ったらしい。ゾンビとかからいじめられてもいいと思った。というか、ゾンビたちのトラブルを解決したりして重宝されたらしい。しかし、調子に乗ってゾンビたちのお金をちょろまかしたから追い掛け回されて今に至るらしい。どうだ、大変そうだろ?」
「思っていた大変そうさと違うー!」
私はバカバカしく感じた。
「何を思っていた?」
「もっとこう、悲しそうな出来事とか、壮絶な死闘とか、桃ミイラのようなことよ。なによ、今の話、ただのクズじゃない?」
「でも、大変そうだろ?」
「周りがね!」
私は話を聞くだけ損した気分だった。そうやってプンスカしている最中、黄ミイラが傷つきながらもゾンビ魚と対抗している姿を見た。しかし、格好いいだとか助けたいという気持ちが出なかった。
「お前、格好いいと思わなくてもいいから、せめて助けたいという気持ち位は持てよ」
白ミイラは横で言う。
「私の思っていることがわかるの?」
「いや、なんとなく」
「でも、そうね。私を助けてくれたことは事実だからね」
「そうだ。だから気持ちだけでも」
「私、助けに行く」
「あっ、ちょっと待っ……」
私は白ミイラの静止を振り切って向かおうとした。波は向こうから向かってきており、私を払おうとしている風だった。私はその波をかき分けて向かっていこうと重い、手足に力を入れようとした。
「ええーい、鬱陶しいわい!」
黄ミイラは体中から電気を強くバチバチと帯電させた。それは日に登ろうとする太陽のように光っていた。私はすごく嫌な気がした。
「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って」
私はガクガク震えながら聞こえない声を出した。
「『黄雷』!」
辺り一体に猛烈な光が照らされた。それは、数多くのゾンビ魚を吹き飛ばすものだった。その中に私も含まれていた。
……
ゾンビ魚たちは一掃されていた。どれもこれも、食べられたあとの焼き魚みたいに焦げと骨だらけだった。私は焦げていただけだった。
「危ないでしょ、あなた!」
私は口から煙みたいなものが出た。
「よく生きていたな」
黄ミイラは驚いた。
「生きているわよ、悪い!?」
「悪くはない。一応、おまえが来るのが見えたから加減したんだ」
「そう?それはありがとう」
「まぁ、本当は攻撃を止めたら良かったんだけどな」
「でも、それはできなかったんでしょ?」
「できたよ。普通に」
「止めてよー!」
思わぬ発言に耳を疑った。
「止めるの、面倒くさいだろ?」
「そんな理由?ゾンビにやられそうだったからじゃなくて?」
「全く。メチャクチャ余裕あった」
「じゃあ、なぜさっきの技を使ったのよ?」
「相手するのが面倒くさくなったから」
「そればっかりー!」
何度その言葉をきいたことか。
「なんだよ?」
「あなた、面倒くさいしか行動理由はないの?」
「ないよ。だって、今攻め込んでいるのだって、ゾンビの相手をし続けることが面倒くさいからだし」
「なにそれ。もっといい理由はないの、このミイラは?」
私は濡れた手で頭を抱えた。頭から海水がたれてきた、私は頭を冷やして今の状況が本当にバカバカしいのではないかと疑った。
「まぁ、黄ミイラの言うことは気にするな」
白ミイラは追いついてきた。
「そもそも、あなたが助けたらどうだと言うから」
「そんなことは言っていない。そういう気持ちを持てと言っただけだ」
「なによ。ややこしい言い方しないで」
「いや、気持ちの問題と言ったはずだが」
「あなたそう思っても、私はそう思わなかったわよ」
「それはお前の責任だろ?」
「なによ、その言い方!」
「お前こそなんだよ!」
私と白ミイラがいがみ合っているところに、黄ミイラがなぁなぁと黄信号のように間に入って中断してきた。そして、テキパキと交通整理するかのように私たちの問題の整理をしてきた。面倒事だけど放っておくほうが面倒くさいことになるということでイヤイヤやっている風だったが、それを言うのも面倒くさそうだった。
と、空から何かが降ってきた。私は落ちてきたものが水面に浮かんでくるのを待った。それはゾンビの鳥だった。
「今度は鳥―!?」
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