第18話2-6:桃ミイラ①
「桃ミイラ?!」
「今から助けるから、気をつけてね」
「ありがとう桃ミイラ……って、気をつけて?」
「はぁー!」
桃ミイラは桃色の包帯をぐるぐる巻きにして球を作った。すると、そこから何かが伸びてきた。それはこちらに向かってきた。
「なになに?何なの?」
「『桃の木』」
その包帯からは巨大な木が伸びてきた。それは私を掴んでいたゾンビタコの足を貫いた。それは私の目と鼻の先だった。
「助かったけど危なー!」
私は生きた心地がしなかった。ゾンビタコからあふれる黒く濁った血が体にかかってきた。そう思っっていたら、タコの足に放された。
「きゃぁー!」
ドボン!
グォーンポコココ。
プァハ。
私は海面に落ち、海中に沈み、海上に顔を出した。飛び込み台から水中に落ちたことがないから分からないが、おそらくそれに近い感覚だろう。怖いとかびっくりしたというよりも、何が起きたかわからない感覚だ。
私は海水に落ちたことにより体についた血を洗い流せる期待した。しかし、海がゾンビタコの血で汚染されていく様を見て、逆に血の付着が増えるのではないかと思った。そして、命がかかった場面でそんなことを気にする自分にバカバカしさを感じた。
そうよ、今はゾンビタコと戦っているのよ。桃ミイラが私を助けてくれたのよ。桃ミイラの手伝いをしなくちゃ。
「桃ミイラ、私にも何かぁぁぁ?」
私は再び足をゾンビタコの足に引っ張られて宙に逆さ吊りされた。
が、再び木がゾンビタコの足を突き刺した。
私の体は再び海の中に落ちていった。
「ぷぁっはー」
「お前、馬鹿なのか?」
「誰が馬鹿よ!」
罵倒してきた白ミイラに噛み付いた。
「1度ならず2度までも助けてもらって、学習能力はないのか?」
「はいはい、すみませんね、学習能力のない馬鹿で」
私はブーたれた。
「人間ちゃんはバカじゃないよ」
桃ミイラは近づいてきた。
「桃ミイラ……」
私は嬉しさで泣きそうになった。
「人間ちゃんは弱いだけだよ」
私は悲しくて泣いた。
「それ、ファローになってねぇぞ」
「うそ?ごめん。その、いい囮になったよ、うん」
「ごめん。全く嬉しくない」
水飛沫を上げながら一生懸命フォローになっていないフォローをしてくれる桃ミイラに、何とも言えない感情からくる涙を流してしまった。
「それよりも、あれどうするんだ?」
「うちに任せて」
「ちょっ、桃ミイラっ!」
私が呼び止めるより早く桃ミイラはゾンビタコに向かっていった。その移動時の跳ねた水しぶきは開いた私の口に入った。私は変なところに水が入ったからか海水のしょっぱさにやられたからか、私はむせた。
桃ミイラは自分が作った木に乗っかりながら移動する。そして、その木がゾンビミイラを攻撃する。その姿は仙人か何かに見えた。
「あいかわらず豪快な能力だなぁ」
「そんなことより、手伝わなくていいの?」
のんきそうな白ミイラに慌てて尋ねた。
「いいんじゃねぇの?とりあえず今のところは」
「そんなものなの?」
「そうだな。桃ミイラも別に弱くないからなんとかなるだろ。ピンチになったら助けたらいいだけだし」
「そんな悠長な」
「それに、変に応援しても、巻き添えを食うだけだしな」
目の前には、次々と生える木で攻防するもの、それに対抗するように巨大な足でなぎ払ってきたり黒いスミを連発したりするもの、それらによって波が荒立ち色が変わり空が怖がり怪獣戦争みたいな様相になっていた。
「……そうね」
私も巻き込まれたくなかった。
「さて、お前はもう捕まるなよ」
「うるさいわねー、いちいち。わかってますよ」
「わかっていればいいのだが」
私がふくれっ面になっても、白ミイラは気にしていないようだった。
「それよりも、あの桃ミイラってどんな子なの?」
「どうしてそれを聞く?」
「聞きたいのよ、私が」
「言ったところで状況は変わらないだろ」
予想していた塩対応。
「言ってくれなきゃ、私また捕まるわよ」
「なんだよ、その脅し?」
「私が敵に捕まったらまた助けないといけないでしょ?」
「そのときは助けねぇよ」
「そう。それなら、桃ミイラに怒られるんじゃないの?」
「……わかったよ。でも、俺が喋ったてことは黙っておけよ」
私は見えないように小さく高速にガッツポーズした。
「いいわよ。喋って」
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