第17話2-5:本当に出発
「どういうことよ?!」
私は海面から顔を出しながら白ミイラに詰問した。
「たぶん重量オーバー」
「それだけじゃないでしょ!まず、これ、船じゃなくてイカダでしょ?」
私は自分の足元に沈む丸太数本を縄でくくったモノを指さした。
「イカダでもいいだろ?浮かんだら」
「沈んでいるのよ、バカ!」
私は気分が没んでいた。
「なぜ沈んでいるんだ?」
「自分で重量オーバーって言っていたじゃない!なんなのこの畳一畳くらいの小さなイカダ?こんなのに7人も乗れる訳ないじゃない!」
「そんなこと言ったって、おまえが来ることは計算外だったから」
「6人でも同じよ!せめてもう1つ作りなさいよ!」
「あっ」
「今頃?あーもう、不安しかない!」
私の安心感は波のように不安定な揺れかたをしていた。
「まぁーいいじゃねぇか別に。このまま泳いでいこうぜ」
「あなたヴァカ?!あんな遠くまで泳げないわよ!」
私は巻き舌になった。
「無理じゃないだろ?たかだか数十kmだろ?」
「それが無理なのよ!死んでしまうわよ」
「俺たち死んでいるから大丈夫だ」
「あなたたちはね!私は違うから!」
「お前も死んだら大丈夫だろ」
「死んだら大丈夫じゃないでしょっ!!」
私はいよいよ怒鳴り散らした。
もうやだ、このミイラの相手。
と思っている時に、私の足が何者かに囚われた。
「きゃぁぁー!」
私は白い見せパンが丸見えになるくらいスカートごと逆さになった。私の足を掴んで逆さ吊りにしたのは、数mもある大きなタコだった。いや、ところどころ腐敗したところがあるタコのゾンビだった。
「お前、それくらい避けろよ」
白ミイラは落胆の言い方だった。
「うっさいわね。私はあなたたちとは違うのよ」
私は逆さになった頭上で見事にゾンビタコの足を回避しているミイラたちを見ながら悔しいジタバタをした。
「そんなことよりも、自分の身を心配しろ」
「心配しろって、どうしたらいいのよ?」
「知らん」
「そんな殺生なー」
私はこの言葉を人生で初めて使ったことがすぐに恥ずかしく思った。
「いや、俺たちも避けることで精一杯で助ける余裕がないんだ」
「そんな、誰か助けてよー」
ゾンビタコの口に持って行かれながら、私は本気の命乞いをした。
「人間ちゃん」
とそこに声をかけてくるものがいた。
その方向に目を凝らした。
桃ミイラだった。
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