第12話1-11:行く

私は姉の死体・ゾンビの死体2つ・ミイラの死体を見つめていた。私はどうしたらいいのか分からず、茫然自失状態だった。私は手に持っていた包帯を何の考えもなしにミイラ男のところに戻しに近づいた……

「あっぶなー!」

「ええーー!!」

 ミイラ男は急に元気な声を出した。

 私は驚愕した。

「びっくりしたなー、急に声出して」

「それはこっちのセリフよ」

 互いにびっくりしているらしかった。

「それにしても助かって良かったな」

「いや、あなたは何で生きているのよ?真っ二つよ」

「おれ?俺は死んでいる。だから、真っ二つになろうが関係ない」

「どういうことよ?あと、真っ二つで話すのはキモいわ」

「そうか。よっこいせ」

 ミイラ男は真っ二つだった体をくっつけた。

「キモー!」

 私は再度驚いた。

「どっちみちキモイのか?」

「そうでしょ?だって、真っ二つだったのがくっついたのよ。キモすぎるでしょ」

 切れた跡が生々しかった。

「それくらいで気持ちわるいのか?ミイラ男ならこれくらい気にするなよ」

「そうかもしれないけど、その傷跡も気になるのよ」

「そうか、気になるか」

「気になるわ」

 それを聞くと、ミイラ男は何かを傷口にかざした。その手からは白い粉のようなものが滴り落ち、傷口付近に沈んでいった。すると、名医が執刀した手術跡のように傷跡は綺麗さっぱり消えていた。

「これで気にならないだろ?」

「もっと気になるわー!」

 私はまたまた驚いた。

「何が気になるんだよ?」

「いや、どうしてすぐに傷が治るのよ?」

「そんなの塩かけとけば治るだろ」

「治らないわよ!唾かけとけば治るみたいに言わないでよ!」

「唾かけて治るかは知らん」

「うるさいわね!」

 私はミイラ男に唾をかけるくらい怒鳴った。

「そっちこそうるさいな」

「……そんなことより、どうして塩で治ったのよ」

 私はジト目で聞いた。

「それはわからない。ただ単にそうなっているだけだ」

「そんな適当な」

「適当ではない。本当にわからないんだ。俺の場合は塩を使えば元気になるんだ」

「そうなの?」

「そうだ。お前もそうだろ?米や肉や野菜を食べたら元気になるだろ?でも、なぜ元気になるのかわからないだろ?それと同じだ」

 そう言われたらそうかもしれない。

「塩で元気になるのね?」

「そうだ。そして、強力な技を使うとき等のエネルギー源となるのだ」

「そうなの?」

「そうだ。例えば、毒貝を倒したときに海水を頼んだだろ?あれは海水の塩分が欲しかったんだ」

「それで海水を」

「そうだ。そのおかげで倒すことができた。ありがとう」

急にお礼を言われて、頬が照れた。

「べ、別にいいわよ。そんなこと」

「まぁ、あの後は切らしていた塩を買いに行ったから、お礼を言えなかったけど」

「そうよ。あの後直ぐにいなくなってびっくりしたわ。どうしてよ」

 私は想い出したように聞いた。

「俺にとって塩は生命線だから、すぐにでも手に入れる必要があるんだ。だから、それは勘弁してくれ」

「……まぁ、別にいいわよ」

「まぁ。今回は助けられなかったけど」

「そうよ。何で無理だったのよ?そもそも、何なのよ、あれ?それに、さっきの6体のミイラたちも何なのよ?」

「……あれはまた後で説明する。今は先に言わないといけないことがある」

 ミイラ男は声をに決心をかけたものがあった。

「何よ?」

「お前、一緒にあいつを倒しに行くか?」

「あいつって、黒ローブ?」

「そうだ。どうする?」

「いやよ」

私は即答した。

「どうしてだ?」

「どうして私が倒しに行かなければならないのよ?危険じゃない。私、あなたと違って戦う力がないのよ」

「そういう問題ではない」

「……どういう問題よ?」

「お前はあいつに目をつけられた。今後必ず再びあいつがお前を狙いに来る。その時にどうするんだ?」

「そんなの、警察とかに言うわよ」

「バカかお前は。そんなゾンビみたいなものの存在を警察が信じるわけないだろ」

「でも、家族の死体とか見たら。ゾンビになったものもいるし」

「ゾンビも死んだからただの死体だ。それに死体を見ても謎の怪奇事件と思われるだけでどうしようもない」

「そんなこと、やってみないとわからないでしょ?」

「わかる!今までにそういう人を何人も見てきた。そして、最終的にみんな殺されたんだ。お前もそうなる」

「そんな……」

 私は体中の力がなくなっていく感覚になった。

「お前に残された選択は2つ。一緒にあいつを倒しに行くか、死ぬか。どっちを選ぶ?」

「……」

「俺はどっちでもいいがな」

「行くわよ」

「……」

「あいつを倒しに行けばいいのでしょ?行くわよ。死ぬよりはマシよ」

「そう言うと思った」

「どうして?」

「お前はいつも敵を前にした時に抗おうとしていた。だから、今回もただ死ぬのではなく、抗うと思った」

「そう。ありがとう」

「それよりも、早く行く準備をしろ」

「え?今から行くの?」

「ここにいたら、警察のところに行ったりして、あいつのところにいけなくなるぞ」

「わかったわよ。準備します」

私は半ばやけくそになった。記憶にはないが、できる限りきちんと準備した。父に置き手紙もした。

「さて、行くか」

「行くわよ。行けばいいんでしょ?」

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