第6話1-5:ミイラ男VSゾンビ貝

「まぁ、こういうゾンビもいるかもしれないというか」

「急にしどろもどろになってるわよ。さっきまで自信満々で偉そうにだったのに」

「こっちだって知らねぇことぐらいあるだろ?あぁ!」

「逆ギレしないでよ……って、きゃぁぁー!」

 ゾンビ貝の触手が再びミイラ男を襲う。砂が噴水のごとく周りに舞う。私は思いっきり砂をかぶった。

「くそ。とりあえずこいつを倒さないと。お前は逃げろ」

 ミイラ男は包帯をなびかせながら可憐に避けた。

「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って。私を助けてよ。さっきからずーっと埋まっているのよ!」

 私は砂に埋りっぱなしで逃げることができない。

「どうして埋まっているんだ?」

「さっきのゾンビに埋められたのよ。わかるでしょ?!」

「なに?砂風呂というやつではなかったのか?」

「違うわよ、馬鹿。どうして砂風呂に見えるの?!」

私は頭をお湯のように沸騰させた。

「でも、大丈夫だ。さっきからこいつは俺を狙っている」

「そうね!たしかにそうだわ。でも、どうして」

「おそらく、ゾンビを倒した俺の方から倒そうとしているんだ」

「そうか。敵からしたら先に強い方を倒したいものね」

「そうだ。だから俺がやられるまでは襲われない」

「よーし。あなた、頑張りなさいよ」

 私がミイラ男に黄色い声援を送っていると、ゾンビ貝がこちらに向かってきた。私はギョッとしたが、狙いはミイラ男になると思ってミイラ男の方を見つめた。1種の視線誘導をして自分は助かろうとした。

 私は唾を飲んだ。もしかしたらこっちに来るかも知れない。でも、狙うべきは私じゃないわよ、と心の中で何十回も唱えた。

 ゾンビ貝はミイラ男のほうをプイッと向いた。

 私はホッと胸を撫ぜ下ろした。

 と、触手が私の方に飛んできた」

「私ですかー?!」

 自分に狙いが変わったことに仰天した。

 と、私の体が宙に浮いた。

私は捕まった。

 といっても、触手ではなかった。

 それは包帯だった。

 と、ミイラ男の方に引き寄せられた。

「ぎゃふん!」

 私はそのまま顔面から砂浜にスライディングした。

「大丈夫か?」

「途中まではね!」

 私はうつ伏せ状態から擦り剥けた顔だけを上げた。

「どうして怒っているんだ?せっかく助けたのに」

「この顔を見ても言えますか、それ?!」

「……?ゾンビに比べたら綺麗だが?」

「……綺麗と言われて嬉しくないことってあるのね」

 私は心にも擦り傷を負った。

「それよりも、あいつが来るぞ、気をつけろ」

「そうよ、それよ。どうして私を襲ってきたのよ?あなたが言っていることと違うじゃない。どういうことよ?」

「そんなこと知らん。近くにいるから襲ったんだろ?」

「あなた、さっき自分が言ったことを覚えていないの?強いものから襲うから大丈夫って言ったじゃないのよ」

「知らん。間違えるときだってある」

謝りもしないミイラ。

「あんたね、少しはあや……」

「おい、きたぞ」

 毒貝の触手が鞭のようにしなりながら私たちを狙う。私は不器用に尻餅をつきながらコロコロと転がって避けた。ミイラ男は華麗に避けた。

「お前、そんな避け方だったら怪我するぞ」

「うるさいわね。今までの人生で避けたことなんかないのよ」

「きちんと避けないと、捕まったらああなるぞ」

 触手が掴んだ木の板が真夏の板チョコのように溶けて、ポールの中でかき混ぜられたように泡立ち、そのままチョコラテのように触手の中に流し込まれた。

「ゲゲッ!なによあれ?」

私は血の気が引いた。

「毒だよ。ああやって毒で獲物を捕食するんだ」

「そんなの聞いてませんけどー!」

「言っただろ、毒貝って」

「たしかに言っていた気がするけど……というか、さっきは私もあんな感じにドロドロになるところだったんだー」

 私は両手を抱えながら泣きたくなった。

「でも、なっていない。諦めるな」

「諦めるなって言われても、無理よそんなの。こんな化物とは関わりたくないわよ、絶対に無理よ」

私はワンワン泣いていしまった。

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