第3話 「面倒は山積み」


 「急いでいるようですし、早速向かいたいところなんですが……」



 「どうした?何かあるのか?」



 「【全能教会】は【マジュロ】にあります。【マジュロ】まではかなりの道のりになるので。道具や食料を用意したり、仲間が欲しいところです。」



 「あー、悪い。聞きたいことがあるんだが……」



 「どうしました?」



 「俺さ、この世界の国について一切わからないんだ。ていうか、ここってどこなの?」



 シーン



 静寂が訪れる。



 「はぁ………。一体どんな生き方したら、自分がいる国すらわからないような人生になるんですか。」



 「そんなこと言われても困る。あと(人生)じゃなくて(神生)な。そこ間違えるなよ。」


 クエルは、



 ーめんどくさい人ですね〜



 と言うと、丁寧に教えてくれた。



 この世界には、6つの国があるらしい。


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 【マジュロ】


 神々の祝福を受けている国。人族、亜人族が共存している。【全能教会】はこの国にある。様々な種族間での争いは禁じられており、戦争が起こっても、中立の立場を示す。



 【レーバル】


 人族の国。人族の王をトップとしている。食料品の貿易で栄えているが、【ユントラ】との国交は遮断している。



 【ユントラ】


 亜人族の国。亜人族の王をトップとしている。武器や防具の貿易で栄えているが、【レーバル】との国交は遮断している。



 【ガルネロ】


 龍種の国。人族、亜人族、妖精族、魔族が共存している。他の国とは違い、神を信仰せず、龍を信仰の対象としている。中継ぎ貿易で栄える。



 【ダタレブ】


 魔族の国。魔族の王である『魔王』をトップとしている。他の国の干渉を拒んでいる。



 【フーラルク】


 妖精族の国。妖精族の王である『妖精王』をトップとしている。他の国干渉を拒んでいる。



 今いる平原は、【レーバル】らしい。


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 聞いた感じだと、種族間の交流は、国によって差があるようだ。



 亜人族、人族の関係が悪いのは昔からだが、干渉を好まない龍種が国を作ったのは意外だった。



 だが、それよりも驚いたのは、



 ー種族が増えてる。なんでだ?



 ハザクの記憶が正しければ、存在する種族は、人族、亜人族、神族、龍種だった。魔族、妖精族というのは聞いたことがない。



 他にも、



 「クエル。ここは【禁忌の大地】か?」



 「いえ、違いますよ。どこかの地名か何かですか?物騒な名前してますけど。」



 魔物は、【禁忌の大地】と言われる、ごく限られた場所にしか住んでいなかった。にもかかわらず、魔物は先ほど、この場所にいた。クエルも魔物がいることに関しては何も言っていなかった。



 「思っていた以上だ。これは後始末が面倒だぞ〜」



 帰還後を考えると頭が痛い。



 寝転んでうめいていると、クエルが上から、



 「何うめいてるんですか。ほら、立ってください。町に行きますよ。急がないと門が閉まります。野宿したくはないでしょ。」



 野宿でも良いと言うと、僕が嫌なんですよ、と起き上がらせられ、町に行くことになった。



 ちょっと野宿がしたかったのは秘密だ。








 「デカイな。これはすごい。」



 目の前には、大きな防壁に囲まれた町がある。出入り口は門だけらしい。どうりで魔物がいるのに町が作れるわけだ。



 クエルに連れられ、門の前に来る。甲冑を被った人族がいる。門番らしい。



 「遅かったな、クエル。全身ボロボロじゃないか。〔ガルベアー〕にでも手を出したのか?」


 クエルに親しげに話しかけた門番は、俺を見て、



 「ん?君は?見ない顔だが。」



 「門番さん。実はデカイ魔物に見つかってしまって。この人に助けてもらったんですよ。危うく死ぬところでした。」



 「おー、クエルが苦戦する魔物を倒したのか。ぜひ話を聞きたいところだが……」



 門番は、空を見上げて、



 「もう日が沈みそうだ。門を閉めなければ。また今度聞かせてくれ。」



 そう言うと、すんなり俺たちを通してくれた。



 「で、どうするんだ?仲間が欲しいって言ってたが、仲間なんているのか?足手まといはいらねーぞ。」



 「僕は十分足手まといな気がするんですが。」



 「お前は道案内だろ。必要だ。ちょっと気にいったし。」



 「僕は喜ぶべきなんでしょうか?」



 そんな話をしていると、クエルが、一軒の建物の前で止まる。3階建てで、この町の中でも、一際デカイ。



 「どうした?お前の家か?デカイな。」



 「違いますよ!そんな富豪に見えますか?」



 そう言うと、クエルはドアを開ける。



 「ここは冒険者ギルドです。僕はここで冒険者をしています。ここなら、【マジュロ】までの同行ができて、ハザクさんについていける、実力ある人がいるはずです!」



 ニコッとしながら、こちらを向くクエル。



 どうやらここに案内したかったらしい。どことなく誇らしげだ。このギルドが好きなのだろう。



 ギルドについては知っている。あの時に地上に降りた時もギルドはあった。あらゆる国に存在する巨大組織。見たところ、あの時と変わらない。



 ーなつかしいな



 決して良い記憶ではなかったが、少しばかりなつかしい。



 ギルド内の人物を見渡す。大剣を持った人族の大男、杖を持った女。大勢いる中で、俺の目を引いたのは一人だった。



 ー神様〜 こんなに頑張ってるんだからいるなら出て来てよ〜



 と言いながら、酒を飲む、神官服を着た少女。



 俺はクエルに言った。



 「アイツにしよう。」


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