第11話 四つの宝具そして四天王(3)
「行ってらっしゃいませご主人様、お嬢様。」
俺達はオムライスを食べた後いったん外に出た。さすがにご飯を食べた後も居座り続けるのは怪しまれると思ったからだ。
「私、メイド喫茶初めてだったけどすごい楽しかったです。メイドさんもかわいかったですし。また行きたいです。」
「そうか……それは……よかった。」
俺は二度と行きたくない……
「まあ、この後は向かいにある『ステバ』のテラスからからメイド喫茶から出てくる人を監視する感じになるのかな……」
メイド喫茶の道路を挟んで向かい側にステバがある。ここからならメイド喫茶の出入りの様子もよく見える。
「あの……すごく言いにくいんですけど……」
「どうしたの白井さん?」
「その……そろそろ門限が……」
「ああ、そっか。もうすぐ七時だもんね……分かった。後は俺が監視続けるから先帰っていいよ。」
「でもやしろ君は……」
「大丈夫、うちはそこまで門限厳しくないから。一応おばさんに帰るの遅れるって連絡入れておけばOKしてくれると思うよ。」
「ほんとごめんなさい!!やしろ君!!」
俺は未来さん達に連絡した後で隣にあったステイバックス略して『ステバ』でメイド喫茶にいる人達が出てくるのを待つことにした。
だが、しばらく待っても宝具レーダーはずっと強反応のままだった。それはつまりまだ店の中に宝具が存在していると言うことだ。
「ああ、俺も早く帰りてえな……それにしても、俺が店に入ったときにいた客は全員店から出て行ったな……てことは、メイドさんや店員の中の誰かが宝具を持ってるってことなのか……?」
その後俺は、スマホを見て時間を潰しながら閉店時間の午後9時まで待つ。そして……
「……出てきた!!」
閉店時間が過ぎ私服姿のメイドさんが店から出てくる。
「レーダーは……」
メイドさんが俺がいる位置から15m以上離れたのを確認しレーダーの反応を見る。
「強反応のままか……」
つまりこの人は宝具を持っていないということになる。
しばらくして店から店員やメイドさんが出てくるが、レーダーは強反応のままだった。そして……
「五木さん……」
五木さんが店から外に出てくる。さすがに五木さんは関係ないだろう。そう間違いないはずだが、もし、宝具を持っていたら……
そんな思いとは全く関係なく五木さんはレーダーから10m以上離れていく。
「……強反応のままだな。」
やはり五木さんは宝具の件とはなにも関係ないみたいだ。俺はほっと一安心する。
「……そういえば、あの人がまだ店から出てきてないな……。」
俺がそうつぶやいたのとほぼ同時にその人は店から出てくる。五木さんが先輩と呼んでいたしゃべり方の癖がすごいメイドさん……名札には『シズ』って書いてあったな……そのシズさんは店の前に立ち止まり誰かに電話をする。
「出迎えか?」
そしてそれから一分もしないうちにいかにも高級そうな車がやってきてシズさんはそれに乗り込む。
「マジかよ……どこかのお嬢様か?」
そして、シズさんを乗せた車はそのまま店から離れていく。
「レーダーは……あ!」
強反応から弱反応に変わっている!!ということは宝具(?)を持ってる人はこの人……
どうする?追いかけるか?いや、さすがに車が相手じゃ追いつけるわけが無い……まあ、でもとりあえずいったん店から出て連絡を……
「君ちょっといいかな?」
「……え、お、俺ですか?」
突然警察の制服を着た男に話しかけられる。
「……は、はい?なんでしょう?」
「いやさ。実はねステバからメイド喫茶の方をずっとじろじろ見てる不審者がいると通報を受けてね……」
「へ、へえ……そうなんですか?」
やばい、さすがに長くいすぎたか……
「ちょっと署の方まで来てもらおうかな?」
「い、いやその誤解です!!ほんと誤解なんです!!」
「ほお、じゃあ君はここで何をしていたんだい?」
「そ、それは……」
くそ、何て日だ……今日はほんとに散々な目に遭ってばっかりだ。なんで俺がこんな……いや、今はそんなことうれいている場合じゃない。この状況をどうにかする方法を考えないと……
「とにかく詳しいことは署で聞くからこっち来なさい。」
ああ、もうくそ!!何も思いつかない!!このままほんとに逮捕されちまうのかよ……誰でもいい……誰でもいいから助け……
「その逮捕……ちょっと待った!!」
この声は……
「あ、お前は……!!」
「ミ、ミナミ……」
*
その後ミナミの必死の弁護によって俺は逮捕を免れることが出来た。
「なんとなくいやな予感がして来てみたらまさかこんなやばいことになってたなんてね……」
「ミナミ、本当にありがとうな……」
「いやいや、こんなことどうってことないって……えへへ……」
ミナミはすっかり得意げになっている。
「で、どうだったの成果は?」
「あ、ああそうだな……」
俺はミナミに今日あったことを全て話した。
「ほんとに災難だったわね……。」
「ほんとだよ……。」
ミナミは今日俺に起きた不幸に同情する。
「まあとにかく、そのメイド喫茶のメイドさんがあやしいってわけか。」
「まあ、そういうことだ。」
「……でも、変じゃない?もし、その宝具(?)が大切なものなら仕事先になんて持って行かないよね普通……」
「そりゃまあ。だって宝具うんぬんの話は全部未来さんの作り話なんだからさ……あのシズっていうメイドさんは未来さんの茶番に協力してるだけなんだろ……。」
「……」
ミナミは何か考えている。
「……どうした?」
「ねえ、いさむ。今回の宝具探しの目的って何だと思う?」
「え、だから俺を勇者仕立て上げたいっていうあれじゃないのか?」
「うーん、それにしてはさすがに回りくどすぎると思うんだ。なんか別の狙いがあるようなきがするんだよね……」
「別の狙い……?」
「まあ、全然わかんないんだけどね。」
言われてみれば確かに未来さんの目的が俺を勇者に仕立て上げることなのであれば、今回の四天王捜しは不可解な要素が多い。そもそも、俺以外の人が四天王を見つけたらどうする気だったんだ……?そうなったら、俺をよいしょすることができない……それ以外にも不自然な点を上げればきりがない。
「うーん……」
考えれば考えるほど謎が深まるばかりだ。
「……ん?」
俺が考え込んでいるその隣でミナミが誰かとメールしている。
「……誰にメールしてるの?」
「え、ああ依頼人よ。依頼人。」
「ああ、あの50万円の……」
おそらくミナミに女神会の動向調査を依頼した謎が多い依頼人のことだろう。
「今日あったこととか色々報告しないといけないからね。」
「……それ毎日やってるの?」
「うん、ほぼ毎日やってるけど、それがどうかしたの?」
「……いや、なんとなく……」
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