第9話 四つの宝具そして四天王(1)

「やあ、助手。」

「よお、ミナミ。」


 俺が女神会に向かっている途中ミナミにばったり会った。


「女神会に入ってもう一週間か……早いもんだな。」

「そうね……助手は女神会にもう慣れたか?」

「いや、全然……みんな、キャラが濃すぎるんだよな……なんというか落ち着かない……」

「私もよ……あのメンツと一緒にいるだけで疲れるわ……」

「……まあ、ミナミもその濃すぎる人の一人に入ってるんだけどな。」

「ええ、なんでよ?私は探偵ってこと以外はいたって普通じゃない!!」

「どこが普通だよ!!普通の人は麻酔銃なんて常に持ってないし、事件にだって巻き込まれないんだよ!!昨日だって一緒に帰ってるとき五回も事件巻き込まれたんだぞ五回も!!いくらこの街の治安が悪いからって五回も事件に巻き込まれるかっての!!」

「そ、それを言うならあんただって……あんただって……」

「ふっ、何も言い返せないだろ。なぜなら俺はミナミ達とちがって普通!!普通だからな!!」

「……そうだね。イサムあんまり特徴無いもんね。」

「い、言い方さぁ……」


 ……まあ、そういうわけで今日も白井さんを変人達のもとからお助けするために俺は奮起する。今はまだろくに進展していないが、俺が女神会に入って一週間経った今日、なにかしらの進展があるかもしれないのだ。

 というのも昨日未来さんから『明日重用な話があるからよほどの事情がなければ絶対に来てほしい』……という連絡があったのだ。

 どんな話なのか皆目見当もつかないが話の内容によっては女神会の秘密に迫れるかもしれない……そんな小さな期待を持ちながら俺は女神会へと向かっていく。


「……やあ、勇者やしろと古畑ミナミ。まあとりあえずそこに座ってくれ……」


 扉を開けて中に入ると未来さんはいつもと同じように俺達を出迎える。


「未来さん。重要な話というのは一体……?」

「まあそう急くな。とりあえずここに座って。」


 そして俺達にソファに座るように促した。メンバーもすでに全員揃っている。


「これで、全員だな。では……これより第一回緊急クエストについての説明を行いたいと思う。」

「き、緊急クエストですか!?」


 『緊急クエスト』と言う単語を聞いて周りはざわつき始める。


「……いさむ、緊急クエストってなんだ?」

「……まあ、重要なクエストってことだよ。」

「なるほど……」

「我々女神会の最終目標それはもちろんこの世界にいる魔王を倒すことであるということはもちろん知っているな。」

「はい……」


 魔王を倒そうとしていること自体は白井さんにすでに聞いている。正直信じられない……というか作り話にしか思えないが……           

 

「これはこの世界とは別の世界……異世界の話なんだが……」


 なんか語り始めたぞ……


「その世界で魔王は強奪、支配、虐殺の限りを尽くし異世界の人々を恐怖のどん底に陥れていたんだ。」

「そ、それはまた物騒な……」

「だが、そんな混沌の世界で一人の勇者が現れたんだ。勇者は王の命を受け仲間と共に長い旅に出た。あるときは人を助け、あるときは魔物を倒し。またあるときは友情を深め、そのまたあるときは禁断の恋を……」


 その後、俺達は30分以上未来さんによるどこかで聞いたような勇者物語を淡々と聞かされていた。………話が長い!!

 

「まあ、そんなこんなで勇者達は魔王を四つの宝具の力で封じこめて世界に平和を取り戻したとさめでたしめでたし……」


 ふう、やっと終わった……


「……になるはずだったんだがな……」


 あ、これまだ続くパターンだ。


「魔王の四人の直属の手下……四天王達によって封印の宝具が持ち去られた。そして魔王は現実世界つまり、この世界に送られてしまったんだ。」

「え!?」


 まさかの急展開に俺は思わず声がもれてしまう。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!なんで異世界で封印されてる魔王をざわざこの世界に送るんですか?おかしくないですか?」


 歌川さんがいつもと同じように食ってかかる。


「四つの宝具の力で魔王の封印自体は解けたんだけど力はほとんど無くなっていた。そんな状態だから魔王は逃げることしかできなかった。四天王たちも最強になった勇者相手じゃ話にならない。だから、四天王は勇者達の追手から逃げるために手間をかけてまでわざわざ魔王をこの世界に移動したというわけ。」

「はー、なるほど……」


 そして歌川さんはいつもと同じようにコロッと納得してしまった。


「そして今、魔王は身を潜めてはいるがこの世界で着々と力を蓄えつつある。いつ力が復活してもおかしくない状況だ……」

「そんなの……一体どうすれば……」


 白井さんは不安がっている。


「四天王たちはそれぞれ一人一つずつ封印の宝具を所持している。彼らから全ての宝具を取り返し魔王を封印する。それこそが我々が女神様に課せられた使命なのだ!!」


 なんというか……色々驚かされる展開もあったが、基本は中学生の黒歴史ノートの殴り書きを聞かされているような気分だ。……異世界に転生したいとか言って車に飛び込もうとした自分が言うのもなんだが聞いててとても恥ずかしい。


「さてここで本題だが……」


 やっと本題か……


「さっき話した四天王……その一人がこの街にいるということが最近分かったんだ。」


 ……またまた急展開きたー!!


「ほ、本当ですか!!」

「ああ、本当だ。ここにある宝具レーダーがそれを示している。」


 そう言うと未来さんはなんとも形容しがたいガチャガチャした手のひらサイズの機械を取り出す。

 それにしても宝具レーダーって……もう少し世界観を統一した方がいいんじゃないか?


「この街に四天王の一人がいることは分かっている。だが、正確な場所がまだ分からない……そこで君たちにはその四天王の一人を探し出してほしいんだ。」


 つまり、未来さんが言いたいことは俺達に未来さんが想像した架空の人物を頑張って探し出してこいってことだよな……無茶苦茶だろ……出来るわけ無いだろそんなの。


「敵は魔王の直属の部下である四天王の一人……今までのクエストとは桁違いの難易度であることは間違いない。危険な目に遭う可能性もあるが……それでもやってくれるか?」

「……なに言ってるのにゃ、今までミャア達はどんな困難も乗り越えてきたにゃ。四天王の一人や二人どうってことないにゃ!!」

「たとえ敵がどんなに強大であろうと私は戦います。全ては女神様のために……」

「私もまあ、二人がそう言うんだったら、別にやってもいいかなって思ったり……」

「ありがとうみんな……こんな素晴らしい仲間を持てて私は幸せものだ!!本当にありがとう!!」

「「「未来さん!!」」」

「……」

「……」


……なにこれ


「……で、新入りの二人はどうかな?」

「え?まあ……」

、やってくれるよな。」

「……別に構いませんよ。」

「私も同じく。」

「そうか!!そう言ってくれると思ったよ!!」


 ……いや、断れるわけないだろ……


「さて、この宝具レーダーだが私が持っている物とは別にもう二つある。今女神界には私を含めて六人いるから二人組に分かれて四天王を探そうと思うんだ。」

「二人組ですか……でも、どうやって分けます?」

「それはもちろん……」

「もちろん……」

「くじ引きで決める。」


 ……というわけでペア分けのくじ引きを引くことになった。


「じゃあ次は勇者やしろ。引いてくれ。」


 ……俺が引いたくじの番号は一番だった。


「よしみんなくじ引いたな。じゃあみんな引いたくじの数字と同じ数字の人とペアになってくれ。」

「ミナミ何番だった?」


 出来ればペアはミナミの方がいい。色々と動きやすいし。


「ああ、私は三番だったよ。」

「あ、ミナミさん三番なんだ。じゃあ私とペアだね。」

「お、よろしくね。無月ちゃん。」


「みゃあと同じ二番の人はだれかにゃ?」

「二番は私だ。」

「お、未来さんとだったにゃ。よろしくにゃ。未来さん!!」


 三番のペアはミナミと歌川さん。二番のペアは猫又さんと明日葉さんか。そうなると残っているのは……


「もしかしてやしろ君の番号って一番?」


 白井さんはそう俺に話しかけてきた。白井さんの手元を見ると1と記された紙切れを握っている。


「え、ま、まあ、そうだね……。」

「よろしくね。やしろ君!!」


 俺のペアは白井さんだった。白井さんとペア、そして一緒に街を探索……待てよ。こ、これは……これはもしかして……







 

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