第15話 柔らかい目覚めだにゃ!

 柔らかい布団、まぶしい朝日。そして暖かいクッション。

 先ほどからそんな感覚を感じてはいるが、グラシアは全く体を起こせなかった。

 とにかく、体がだるい。頭がぼーっとする。感覚が曖昧だ。どうやらまだ夢の世界から抜け出せていないようで、昨日の記憶も混濁こんだくしている。


(師匠と一緒に酒場に入って……師匠がめちゃくちゃ酒を飲んでたのは思い出せるけど……その後は……)


 あまりにも頭痛が酷くなり、グラシアは布団と陽光、クッションの柔らかさに現実逃避する。そうしていると、少しずつ感覚が現実感を取り戻してゆく。


(ん? ……ちょっと待てよ……これって本当にクッションか?)


 感覚が戻るにつれ、疑念は深まる。クッションにしてはどうも柔らかすぎる。

 グラシアは恐る恐る目を開けてみると――なんと、キャミソール姿のローリエルが目の前に横たわっていた! そして彼の手は、ローリエルの豊満な胸をがっしりと掴んでいたッッ!! 


「ぬ、ぬおおおおおッッ!! なにしてるんですか師匠ォォォォォ!!!!」


「うるさいにゃ~。私はまだ眠いんだにゃ~」


「眠いじゃなくて! もうお天道様はとっくに空のど真ん中まで昇ってるんですよ! って、そうじゃなくて!!」


 グラシアはベットから飛び起きてすかさず距離を取ったが、右手にはまだ柔らかく暖かい感触が残っていた! ローリエルの豊満な胸――その感触は、あまりにも衝撃的! 空前絶後と言っても良いッ! 王子として貞潔ていけつな教育を受けてきたグラシアにとってはあまりにも――あまりにも信じがたい、奇跡的な体験アンビリーバボー! ゆえに鼻からほとばしる鮮血をこらえられぬところで、一体誰に彼を責められようか!?


「ぼ、僕はなんてことを! オアアアアアアアアアアッッッッ!!!」


 ローリエルがベッドから起き上がってくるまでの間、グラシアはずっと床に転げまわり、鮮血を散らしながら悲鳴を上げ続けるハメになった……!

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