第15話 純白の乙女と小包み その2
笹宮深雪=真っ白ちゃんかも、という考えはしっくりくる。明日また来るって言っていたから、これは直接訊いて確かめて見なければ……。でも、大丈夫かな。それがいわゆる地雷を踏んじゃった的な質問で、真っ白ちゃんを怒らせちゃったりしたら。
真っ白ちゃん、あんまり怖くなさそうだけれど、一応向こうは幽霊なのだ。人間では太刀打ちできないような力を出すかもしれない。
前に、祟りますって脅されたことあるし。
攻撃されなかったとしても怒った真っ白ちゃんがもうこの部屋に来てくれなくなったら……。それは心細い。
アヤメも協力してくれてるけど、アヤメは普通の人より特別な能力はあるにしても、妖術師の妖術のような派手な力は持っていない。真っ白ちゃんは妖術師に育てられて現在は幽霊なのだ。妖術師と対等な存在に、少なくとも対等に近い感じがする。
味方は多い方が良い。でもその前に真っ白ちゃんを信じていいのかという不安が、また頭をもたげた。きっと、いや多分?私は真っ白ちゃんの早世という不幸にはかかわっていないと思う。
ならなぜ真っ白ちゃんのお母さんは私を狙うんだろう。私にかかわりが無いとすると、他に理由は……。真っ白ちゃんの様子を見ると、小包みを弟に送ってきたのは真っ白ちゃんのお母さんなわけで。弟にはかかわりがあるって事?
でも、真っ白ちゃんは弟とは知り合いではないと言ってたけど。
本当は知り合いなんじゃないのかなあ……。15,6歳の女の子が弟の優太を知ってたとなると……。ひょっとして、優太を好きだったのかな?
そうかもしれない。知り合いではないという真っ白ちゃんは嘘をついているようには見えなかった。一方的に優太をしってたとか?
優太は現在日本にはいないのだから、嘘をついて誤魔化して小包みを私が真っ白ちゃんに渡す様に仕向けることも出来る。いや、むしろそっちの方が手っ取り早いと思う。
でも、真っ白ちゃんはそうしなかった。
信用できる子ってことかな。この考えに至ると、安心からか眠気が出てきた。毛布と布団にくるまる。ベッドの横のステンドグラス風の笠が付いた電気スタンドの明かりをオフにして、目をつぶる。
弟宛の小包み、真っ白ちゃんが欲しがっている物は梱包を解かれないままベッドの下部分についてある引出しに仕舞ってある。真っ白ちゃんは気が付いているかどうかは分からない。
少しうつらうつらした。ふわっと何かが布団から出ていた手の甲に触れた気がして、目を開けた。降れたものは淡い光を放っていた。真っ白ちゃんだ。真っ白ちゃんのスカートが私の手に触れたらしい。
私は寝ぼけていたせいか暢気に、ああ、幽霊ってぼんやり光るから、昔から夜中に目撃されるんだなあと変な風に感心していた。
真っ白ちゃんはベッドの脇にしゃがみ込んでいる。真剣な眼差しでベッドの下部の引出しを見ている。そこに小包みがある事を知っているのだ。そう気が付いたとたんに意識がはっとして、薄目で真っ白ちゃんを観察しなければと気が付いた。
小包を持って行ってしまうのだろうか。そうなったら飛び起きて……どうしたらいいのかな。
でも、杞憂だった。真っ白ちゃんは真剣な眼差しで引出し部分を見ているだけだった。そして立ち上がると、真剣な表情のまま、いつものように消えた。
取引以外では小包みを手に入れるつもりはないらしい様子に私は安心した。真っ白ちゃんは信頼できそう。
私は真っ白ちゃんのひたむきな様子を目に浮かべながら再び眠った。
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