第12話 休日の会話

 休日。休日と言っても真っ白ちゃんのお母さんが復讐(?)を企んでいるのかと思うとあまりのんびりできない。心配してるとちょっと緊張で胃がキリキリした。しかし気がかりだとしても、向こうが行動を起こさない限りこちらは動きようがない気がする。


 文字通りふらりと現れた真っ白ちゃんと暇つぶしというか、気を紛らわすために問答をしてみた。とりあえず玄米茶を入れた湯飲みを二人分テーブルに置く。

「お母さんの行動を前もって妨害する事とか出来ないのかなあ」


「うーん、それには母の思考を読まなければならないので……。私そんな能力無いんです。へなちょこ幽霊でして……」

「うん。でも森本さんへのとりつき方で察するに私の昔の知り合いをまた利用しようとするんじゃないかなあ。私が昔悪い事した相手に先手を打って謝って菓子折でも送るとか」

「お姉さん、そんなに悪い事した相手居るんですか?」

「いや、いない。……はず……。多分……。でも、森本さんの件は私が自覚してなかっただけで問題は起こしてたんだよね。そういう相手だったら多分いるんだろうなあ。自覚がないだけで、多分」


 真っ白ちゃんは両方の手のひらで湯飲みを包むように持って、立ちのぼる湯気を深く吸った。微笑んで呟く。

「あったまるー」

「……真っ白ちゃん、真面目に考えてる?」

「あ、すみません。もちろん真面目です。それに……」

 真っ白ちゃんは玄米茶の水面に視線を落とした。

「自覚がないのに思い出せるものなのでしょうか。悪事って。悪事をした相手の事も含めて」


「ああ……。男子にも見える状況でスカートめくりをした時、状況を考えると少しだけど悪意はあったんだよね。中学なんてみんなが思春期なんだから、女の子のスカートめくりするのは悪い事って知ってるのが普通なんだし。でも、私は今頃になって森本さんが現れるまで全然気にしてなかった。悪意が行動の原動力なのに、自覚が無かったからなんだよね」


 私の言葉を聞いて、真っ白ちゃんは湯飲みのふちを撫でながら答えた。

「そうなんです。悪言って一番強い原動力なのにいざ行動を起こすと本人の中からはあっさりと消えてしまう事があるんです。自覚が無いことも多々あります。しかも」

 真っ白ちゃんはそこで言葉を区切った。


「自分は忘れていても、他人には憶えられたりするんです。それが生きている人間の辛い所です」

「ああ、昔の行動に悪意があったがどうか、客観的に判断しないといけないのか」

  

 私は玄米茶を半分ほど飲んだ。口の中の乾いた感じを取りたくなったから。

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