第8話 初テイム!



俺たちは、教会の神父、レナードさんに挨拶をして、チコがいる情報屋の露店ぎが北区にあるため、移動する


「それにしても、いきなりふたつも称号が増えちゃったな!」

「グルッ!」


「フロールの育樹のスキルも試したいし、果物を買って行くか」


50000Gという大金が臨時で手に入ったんだ、少しくらい散財しても平気だろう



道中にあった八百屋で売っていた 赤桃、白リンゴ、紫キウイを5個ずつ、それにトマトとレタス、人参も買ってみた、農業を進めるつもりはそこまで無いが、現実で畑仕事なんか出来ないので、家庭菜園感覚でやってみることにしたのだ



『株分け』のスキルレベルが1なので、果樹の株分けは上手くいくか分からないが、まぁ試す価値はあると思う。



ーーーーー


夕日が差し込み、今日もフィールドに探索に行けない俺たちは、街をゆっくりと歩きながら北区に着いた



「あれが、チコのやってる荒茶の露店か」



店頭にはチコがおり、色んなとこにアイテムの販売もしているみたいだ



「いらっしゃい!昨日ぶりね!」


「あぁ、情報を売りに来た」


「それって例の称号のこと?」


「あれ?何でっ?ていっても、鷲黒だからな、すぐにバレるか。」


「ええ、鷲の名前が入る人なんてあなたくらいしか思いつかないし、ねーフロールちゃん!」


「グルックッ!!」



嬉しそうにフロールが片翼ポーズをする



「それで泉の大精霊の祝福を頂きました。」



俺は昨日別れてから、祝福を貰うまでの出来事を話した



「そんな誰もやらないような仕事が精霊に繋がってるなんて分かるわけないわよ」


「確かにね、なんで鍵が貰えたかも分からないし」


「そこら辺は私たちで色々検証してみるわよ、情報には信用が大事だしね! それにしても、祝福の性能は凄まじいわね、属性魔術への耐性と、消費魔力の減少って、しかも『中』、前線攻略組なんか、喉から手が出るほど欲しい内容だわ」


「確かβ版では第5ステージまで行ったんですよね?」


「まぁ、行ったって言っても、このゲームのマップは、進む事にステージフィールドが広くなるからね、大した探索はせずに一方向を進めていった形だから、分からない事も多いけどね、ちなみに今の最前線はクレインたちの第2ステージよ!」


「あいつもやってるようですね」



まじか、あいつって結構凄かったんだな、普段は全然頼りないくせして。



「まぁね、それよりも今は情報だけど、その内容からすれば、精霊をテイムできる日が確実に来るってことよね?」



予想はしてたけどやっぱり確認はされてなかったか、まあ今後に期待だな



「そうですね、精霊種なので、どんな子なのか分からないですけど楽しみですね」


「その情報だけでもかなり価値があるのよ」



それもそうか、俺だって精霊をテイムできるかも!って言われたらワクワクするしな。



「それで?聞きたいこともあるんでしょ?」


「そうですね、今のところ確認されているテイム可能モンスターを教えて欲しいです」


「なるほどね、それならおやすい御用よ!」



その後色々と聞いた分を差し引いて、情報料を貰ったのだが、210000Gてやばくね?


チコも涙目で払ってたぞ? まだゲームも序盤の序盤だから、大手クランでも資金力はそんなにないと思うが



「頑張ってくれてありがとう!チコよ!」


もうすっかりと夜の帳が降りてきて、建物にあかりが着く


「このゲーム最高だな!」

「グルッ!!」


「フロールもそう思うか、いい子だ」



頭を撫でると、気持ちがいいのか、目を瞑って頭を突き出してくる


本当に可愛い奴め


「明日はフィールドに出るから、戦闘もしてもらうと思うぞ?」

「グルッ!」


よしよし


俺たちは一旦畑へ戻る



ーーーーーー


朝になるまでは、畑で株分けをしたり、ハーブを貰ったカフェのような、街の隠れた名店を探したりした


株分けの方は何事もなく上手く行き、野菜は種、果樹は苗になったので、安い畑をもう4面買って、大きめの畑にした



隠れた名店探しの成果は、ハーブを扱うお店を見つけたことだ、店主のトラウスに話しかけると、クエストが発生した、まぁ指定のハーブを栽培して納品してくれってもんだが


今回のクエストはシソの葉を5枚納品しろどのこと

それに!ハーブの使い道なんかも色々と教えて貰ってし、有益な時間だった!



ーーーーーー


「よっしゃ、いよいよフィールドだ!気合い入れるぞフロール!」


「グルッ!!」



俺たちはゲーム内時間の3日目にしてようやくフィールドに来ていた



ここは始まりの街の北側のフィールド、出現するテイム可能な魔物は、クランクスというリスと、トゥルーラビットといううさぎだ



森を歩いていると、何かの実がなる木を見つけた


「フロール、あの実を傷付けないように落としてくれ!」

「グルッ!」


フラールは今日に、木の実をついばみ、咥えながら降りてきた


「アボカドかー、ラッキーだな! こいつも畑で育てようか!」

「グルッ!」



鑑定すると、ピンクアボカドという食材アイテムだった


同じ木にいくつもなっていたので、10個ほどとって先へ進む



1時間ほど歩いたのだが、モンスターにエンカウントすることなく、小さい川に着いた


「少し休憩するか!」



川の横に腰を下ろし、トラウスに教えてもらったハーブティーをすすっていると、フロールが突然高く飛び上がり、地上30メートルほどの場所から一気に急降下、川に足を突っ込み、大きな魚を言葉の通り、鷲掴みにして捉えた



「フロール!お前すごいな! かっこよかったぞ!」


それは1mをゆうに超えた怪魚だった


フロールが捕まえた魚をすぐに鑑定する





『クリーパートラウト』レア : 5 品質 : 4


川に住む幻の大魚。警戒心がつよく、地を這って移動するため入手困難。


鱗が固く、軽く頑丈な装備になる




なるほどな、これはリリアンとコリンの所に持ってくか



レア度5ってかなり凄いはずだ



フロールが狩った魚に、2人で喜んでいると、後ろの茂みから、トゥルーラビットが飛び出してきた


すぐさま戦闘に入ると思いきや、フロールがとったトラウトに飛びつき、2本の鋭い前歯で鱗を律儀にめくり、身を食べだした



「ん?ウサギって草食だよな、こいつ、魚食べてんだけど」



元飼育員の俺は、ウサギが戦闘してこないことよりも、そっちの方が気になってしまった


戦闘してこなかったことは、チコに聞いてみるとして

俺は野生のウサギの食事シーンを録画しながら眺める



40センチ程度のウサギが、怪魚を食べ切れるはずもなく、少しするとウサギがこちらに振り向き、ちょこんと首を縦に振り、恐らく挨拶をしたのだと思う



「テイム!」


頷く姿があまりにも可愛かったので、ほぼ無意識にテイムをしてしまった


普通は、モンスターの体力を極限まで削ってからテイムしないと、成功率がかなり低いのだが


『ポーン』

という音がして、ステータスを見ると、従魔の欄にトゥルーラビットのエルミーが追加されていた、



何故か分からないが、こうして俺の初テイムはトゥルーラビットの『エルミー』だった


「…ん?エルミー? 名前がある?」


どうやらエルミーも、フロールと同じように元から名前があるユニーク個体らしい。


ユニークってほとんど出会えないはずなんですけど



色々と頭が追いつかなくなってきたので、俺は休憩を再開するのだった

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