第4話
泣き声がする方に進んでいくと、ある墓の前に女の子が座り込んで泣いていた
「お嬢ちゃん、どうしたんだい?」
「お兄さん、グズッ、私のことが見えるの?」
深夜に墓地で泣く女の子、当然だが人ではない
なんか半透明だしね。
「あぁ、見えるよ! それで、なんで泣いているのか教えてくれないかな?」
「あのね、私は1週間前に死んじゃって、ここに来たんだけどね……」
少女が言うには、死んでこの墓地に埋葬されたときに、両親がお気に入りの人形を置いてくれたそうだ、だが、その人形を、鳥がくわえて持って行ってしまったらしい、2日後に少女は成仏するから人形を取り返して欲しいとの事だった。
なんか重いんですけど、
少女が話終えると、クエストの詳細が出てきた
【限定クエスト】
墓地の少女の人形を取り返し、少女に渡す
報酬ー 1000G
期限ー 1日
さすがに無視は出来ないのでクエストを受諾すると、マップ上に、複数のエリアが指定された
どうやらこのどこかのエリアに人形が隠されているらしい
俺たちは、近くのエリアから順に回っていくことにした
「フロール!あったか?」
「グルゥ、」
「見つからなかったか、」
俺たちは既に4つのエリアを探したが、それらしいものは見つからなかった
「次が最後のエリアだな」
のこりは、西区にあるエリアだけだが、空腹ゲージが20%を切っていたので、露店で串焼きを買って、2人で食べ歩きをする
「なんだフロール、焼いた肉の方が好きなのか?」
「グルッ!」
「そうか、なら次は豚肉を焼いてやるぞ!」
「グルックル!」
可愛いフロールと一緒に散歩しながら食べ歩き、まだ一日もたってないが、俺はこの世界を滅茶苦茶堪能している
寄り道をしながらも、最後のエリアに着いた!
「よし、フロール!頼むぞ!」
人形の捜索は、完全にフロールに任せていた
だって上から探した方が早いし効率がいいからね、
何もしないとフロールに怒られるので、歩きながら探しているとフロールが戻ってきた
「お、フロール、見つけたか?」
「グルッ!」
どうやら見つけたらしい、お得意の片翼ポーズをしながら、ドヤ顔している!
「でかしたぞフロール!」
フロールを撫でながらも、発見した場所に案内してもらうと、西区に建っている、時間を知らせる鐘がある塔に案内された
「おっ開いてる!」
塔の扉は空いており、中に入ると、高さ25メートル程の塔の上まで螺旋階段があり、燭台のロウソクの火が、ゆらゆらと内部を照らしていた
「やっと着いた」
「グルッ!」
上まで続く階段は見た目よりも段数があり、上に着くと、空が白み始めていた。
「これは、すごい景色だな!」
塔の上から辺りを見渡すと、街全体が朝焼けの茜色に染まり、太陽が地平線から顔を出す瞬間で、そのあまりの絶景に、スクショも忘れてフロールと太陽が登るところを眺めてしまった。
「これがあの子の人形か、どうしたものか、」
鳥の巣の中に横たわる人形は見つけたものの、全体的に汚れており、腕や首が取れかけ、中の綿が飛び出ている
この状態で返したところであの少女は喜ばないだろう
「なおすか! 知らない子だけど、不運な事故で亡くなったんだ、成仏の時は穏やかに行ってもらいたいからな!」
「グルッ!」
「おお!フロールも賛成か?なら直せそうな人探さないとな!」
俺達はこの人形をなおすことに決めたのだが、俺には直せそうにないし、直せそうな知り合いもいない
「ここはクレインに聞いてみるか」
フレンドを確認するとクレインはまだログインしていたのでコールをかける
「お?テムスか、どうした?」
「あぁ、ちょっと今雑用クエストで困っててな、裁縫が出来やつ紹介してくれないか?」
「おう、そんなことか!なら、俺が贔屓にしてる裁縫師を紹介するよ!」
そう言ってクレインに話をつけてもらい、東区にある裁縫師の露店へ向かっていた。
「あの、リリアンさんとコリンさんの露店はここですか?」
「あぁ〜、もしかしてテムスちゃんですかぁ〜?クレインちゃんから聞いてるわよぉ〜!」
「リリアンぶりっ子やめて、完全に引かれてるわ」
クレインの言う露店を尋ねると、キャラの濃い2人が出迎えてくれた
「どーも私はコリン、こっちのぶりっ子ばっかしてるアホはリリアン、見えないかもしれないけど、一応トップ裁縫師やってる」
「ちょっと!そんな言い方なんじゃないかな?私は至って普通よ!アホじゃない!」
「いえ、あなたはアホよリリアン、現実逃避しても何も変わらないは、認めなさい。 それで、依頼したい事があると聞いたけど、要件は?」
「何が現実逃避よ!してな……」
「このアホわほっといていいは、依頼をどーぞ」
こ、こいつらほんとに大丈夫なのか?
でも、他に心当たりはないし仕方ないか、
「あぁ、この人形を綺麗に直してほしんだよ!」
「ん、わかった!10分位でできる。 リリアン仕事よ!」
「はーい、これかー、ちょっと服が地味ね、もう少し可愛く作り直しちゃダメなの?」
「あぁ、俺のじゃないからそのままの形で直してほしんだが、アンタらトッププレイヤーなんだろ? こんな簡単そうな仕事頼んでいいのか?」
「ちぇー、なら仕方ないか!」
「ん、大丈夫、私たちの『裁縫』スキルのレベル上げにもなるし、可愛い鷹ちゃんにも会えるし、大丈夫」
「そ、そうならいいんだが、一応、フロールは鷹じゃなくて鷲だぞ! 生物学的にはほとんど変わんないけど」
「なるほど、ホークちゃんじゃなくて、イーグルちゃんなのね、報酬はその子をなでなでさせてくれればいいは!」
「ごめんね!コリンは動物大好きでさ、クレインに話を振られた時も、相手がテイマーって知って直ぐにOK出しちゃったしね、普段はこんな子じゃないんだけど」
「そうなのか?まぁ、動物が可愛すぎるせいなんだから、即OKはしょうがない事だが、リリアンはいいのか?」
「はぁ、あなたもコリンと同類なのね?別に人形直すくらいすぐだから構わないよ! なおしてる間、コリンの相手よろしくね」
「あぁ、それならお言葉に甘えさせてもらう!」
そう言って、リリアンが人形を直しに行き、コリンと動物談議に花を咲かす!
コリンは一次職を裁縫師にして、テイマーのスキルを取得し、相棒に自分で作ったかわいい服を着せるために今は、裁縫師のレベル上げを頑張っているそうだ!
コリンとは、話がめちゃくちゃ合うので、すぐにフレンドになり、俺の目標である、動物園建設の話をすると、フロールの毛並みを堪能しながら『絶対にその計画に参加する!』と言ってきた!
トップ裁縫師が作る動物用の服だぞ?最高すぎだろ!
未来の動物園の構想を、2人でニヤニヤ話し合っていると、リリアンが人形を直し終え、話しかけてくる
「まさか普段は無口なコリンからフレンドコード送るとは、アンタどんだけ動物園好きなのよ!あ、人形直ったわよ!」
「ふっ、動物は至高、動物の前では皆饒舌、それが心理」
コリン、最初とキャラが全然違うな、ま気持ちは分かる、分かってしまう、俺も動物園で働くまでは、動物バカとか言われてたからな、傍から見ると、今のコリンみたいだったんだろう。ん?それってちょっとやばいな、すこしは自重しよ、
「めちゃくちゃ綺麗になってるじゃんか!助かったよ!」
「当たり前よ!」
「報酬は、さっきも言った通りフロールちゃんを撫で撫でさせてもらったからOK、またいつでも遊びに来ていい」
「ほんとにそれだけでいいのか?」
「コリンがこの調子だからしょうがないわよ、珍しい素材が手に入ったら、うちに持ってきてくれればいいわよ! あなたはリアルラックが高いってが言ってたし」
「勤め先が倒産したやつのどこが高ラックなのか、まぁなにか見つけたらまた来るよ!」
「さらば同士よ!」
「あぁ、また会おう!」
「あなたたちね、」
そう言って俺たちは2人の元を後にした。
ーーーーーー
町はすっかり朝の喧騒に包まれていた、フロールは基本1日に1回の食事で大丈夫っぽいが、せっかくだから2人で朝ごはんを食べる
雑貨屋で買った初級の料理セットで昨日買った豚肉を焼くと、『焼豚』というアイテムになった、鑑定すると
『焼豚』 レア: 1 品質: ★1
焼いた豚肉
効果: 満腹度25%回復
「まぁ、料理スキルも低いし豚肉を焼いただけだから品質が低いのは仕方がない」
焼豚をフロールにあげ、俺も昨日買った串焼きの残りを食べる
ーーー
食べ終わり、墓地に向かって歩いている途中で、馬に騎乗した使徒をみつけついつい話しかけてしまった、
「あの、すいません」
「ん?何か困り事かな?」
「いえ、お聞きしたいんですけど、馬ってどこにいたんですか?」
「おや?君は噂の鷲を連れた『鷲師』君だね? 悪いけど、この僕の愛馬は、君の鷲のように、キャラクリエイトの時に、一次職を騎士にして、『騎乗』スキルを獲得しているとついてくるモンスだからね、現在はフィールドに騎乗可能なモンスは確認されていないんだよ、力になれなくて悪いね」
「いえいえ、いきなりすいませんでした」
「僕は、騎士パーバルティア、何か困ったことがあれば、遠慮なく声をかけてくれて構わないよ!」
そう言って、パーバルティアは行ってしまった
あれがロールプレイってやつか、初めて見たが、馬に騎乗できるのは正直羨ましいな!
俺は獲得可能スキルの一覧を見ると『騎乗』のスキルがあった、残りのボーナスポイントが7で、『騎乗』が3、騎乗できるモンスは未発見といっていたが、ここは取るしかないだろう!
俺は『騎乗』スキルをとり、南区の墓地への進む
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