第30話 そうだ!屋台をしよう!
「じゃあ、今後ともよろしくね!」
「こちらこそよろしく!」
30分ほど話し込んだ俺たちは、挨拶をしてエルタニアのテントを出る
「エルフの話面白かったな!」
「あれ? 2人がエルフと知って放心してたのに、話しは聞いてたの?」
ま、誰だってあんな状況になれば放心しそうだけど
「う、うるせーな! 仕方ないだろ!」
フレッドは少し顔を赤らめながら、言い返してくる
姉さんとは違い、からかっても手を出すわけじゃなく、言葉とリアクションで反応してくれる
「フレッド、お前はからかい甲斐があって良い! ずっと友達でいような!」
「何がからかい甲斐があるだ、コノヤローッ!! 待てコラッ!」
「ふふふ、本当の事だ!」
そんなじゃれ合いも挟みつつ、町中の方へ向かう
「あ、兄さんとクララ嬢だ」
町へ戻ると、婚約したての2人が、仲良く串焼きを買っていた
クララ嬢は、純粋そうな子で、穏やかな兄さんと並んでいると、そこだけが別の空間かと思うくらいゆっくりと甘い雰囲気が漂っている
こんなに喧騒に包まれてるのに凄いな。
その後は特に何も無く、2人でのんびりと祭りを楽しみ、日が暮れ始めたら子供組は馬車で帰宅した
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「はぁー、楽しかったけど疲れたな」
ベットに大の字に寝っ転がれる喜びを噛み締めながら、収穫祭を振り返る
「明日と明後日には、リバーシ大会とピザの人気投票というイベントはあるが、屋台は食べ物が多かったな」
収穫祭は、普段とは全く違う町の顔を見れて、かなり面白かった!
でも、やはり祭りと言うと、食べ物ばかりじゃなく、金魚すくいや輪投げ、くじ引き等、色々な屋台を思い出してしまう
「そう言えば、ジュードが砂糖を定期的に持ってくるって言ってたな、来年はまず、甘味の屋台出店を目指そう」
ベビーカステラにわたあめ、クレープとか、甘味もあると商人はお金を落としていきそうだし
「何より俺が食べたいからな!!」
お祭りなんか、大人になってほとんど行ってないが、子供の頃のワクワクは今でも鮮明に覚えているらしい
そうえば、小さい頃は屋台で焼きぞば焼くお兄さんがメチャメチャかっこよく見えたな!
頭にタオル巻いて大きなヘラで鉄板の上の具材をかき混ぜる仕草……
「よし!明日は屋台をやろう!」
屋台のお兄さんを思い出してたら、ボルテージがMAXになった!
だが、屋台をやるにはそれなりに準備が必要だ、まずは何を作るかだが、これは決めている、お好み焼きだ!
出汁以外の材料は容易に揃うからな!
「とりあえずフレッドに協力を頼もっ!」
フレッドの部屋に行き、協力を頼むと
「なんだよそれ!メチャメチャ面白そうだな!やる!」
と、二つ返事でOKを貰ったので、2人で準備をする事にした!
屋敷の裏庭に土魔法で小屋を建てて、お好み焼きの説明をしたあと、どう動くか話し合う
「まず、1番は準備が面倒なのが出汁だ、干しキノコを水に漬けて何時間も待たないといけない! 」
メルヴィス領は山間地、鰹節なんか無いからな
「それは面倒くさそうだな、で? 俺は何をすればいい?」
「今からもう一度町に行く、エルサーラの店に大量の干しキノコがあったはずだから、それの調達を頼む」
そう言って、フレッドに銀貨5枚とカゴを渡す
「そのカゴいっぱいになるくらい頼む」
「わかった! エルサーラのとこだな!」
こうやって2人でこそこそ企んでいると、何だか秘密計画っぽくて楽しい
「俺はキャベツとネギの調達に行ってくる!」
生姜と小麦粉は、家に大量にあるので、それを使う
「よし!行動開始だ!」
「おう!」
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「おい! 無事任務を果たしたぞ!」
「よし、なら帰ろう!」
俺たちは、町での目的を果たしたあと物陰で合流し、屋敷へ戻る
裏庭の小屋に成果を置いた後、厨房に鍋とまな板と包丁を、納屋に鉄板を取りに行き、仕込みを始める
まず水を張った鍋に、フレッドが買ってきた干しキノコを全部ぶち込み、落し蓋をして放置!
次はキャベツの千切りだ
俺は一人暮らしだったので、これくらいはできる
フレッドには、豚のブロック肉を薄切りにしてもらっている
それが終わると、次はソース作り
エルサーラの所で売っているソースは、ウスターソースっぽいもので、そのままでもいいが、せっかくなので改良してみる
と言っても、甘みの追加のためのトマトソースとはちみつを少し加え混ぜるだけなんだけどね、
最後にマヨネーズを作る、これは知ってる人も多いんじゃないかな? 油と卵の黄身と酢を混ぜるだけ
ポイントは、卵黄と油を混ぜる際、少しづつ油を加えながらよく混ぜて、分離させないことだ
それらを作ったら、今日はひとまず解散だ、夜は少し肌寒いが、一応氷の塊をいくつか小屋に設置する
「あとはなにをするんだ?」
「とりあえずは明日の朝、試作を作って試食だな!」
「マジか! たのしみだな!」
俺たちは、明日の屋台の成功を祈り解散した
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「おはよう!」
「「「「「「おはよう!」」」」」」
お、おお、公爵も辺境伯も普段のように接しろと言ってくれるので、客人よりも起きるのが遅いのは、ここ最近の日常なのだが、
挨拶をすると、みんながいっせいに返してくるのでちょっとびっくりする
そんなこともありながら、朝食後、裏庭の小屋行きフレッドと、お好み焼きの試作をする
〇卵と小麦粉、きのこの出汁をボウルに入れて混ぜ、キャベツとネギ、生姜を入れる
〇熱した鉄板に油を塗り、タネを投入!
〇豚の薄切りを鉄板に置き、片面を焼いたタネを、肉の上にのせる
〇焼けたら、ソース、マヨネーズを塗り完成
「な、なんだよこれ、やばい匂いさせやがって!よだれが…」
うんうん、いい反応だ!
俺たちは、早速実食する
「これはうますぎだろ!アホか!」
フレッドのテンションが上がりすぎて少し絡みづらいな
だが悲しいかな、そうなる気持ちはわかってしまう自分がいる
お好み焼きをひとくち食べると、鰹だしでは無いので、あのインパクトのある風味は無い
だけど上品なキノコ出汁の風味が鼻を抜けてゆき、ソースとマヨネーズと抜群に合う!
これは悪魔的な食べ物を、この世に作り出してしまったかもしれない!
「これは成功間違えなしだな!レイ!」
「うん、これは売れるね!」
俺たちは屋台の成功を確信するのだった!
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