第31話 夢ってなんだろうね


「よし!ここら辺でいいかだろ!」


「そうだね、ならここに建てるよ?」


「おう!」


俺たちは早めに町へ来て、屋台をやる場所を決めていた!


町の中心からは少し離れ、でも人目には付く場所なので最適だろう


土魔法で屋台を建て、持ってきた材料を氷を置いた土箱に入れておく


時刻は9時くらいで、ちょうどリバーシ大会の予選をやっている頃だ


大会には、兄さんと父さんも参加してるらしい


俺も誘われたが、ちょっと面倒なので辞退した


準備を終え、フレッドと将来について話している



「フレッドは昨日、海に出るとか言ってたよね」


「おう! オルレイン領の港にいる男たちはカッコイイからな! 」


「海はかなり危険だって聞いたけど、大丈夫なのか?」


「大丈夫じゃねえよ、うちの港でもしょっちゅう人死にの報告があるからな、だがそれでも、憧れちゃったもんはどうしようも出来ん!」


なるほどな、真っ直ぐなフレッドらしいな


「レイはどうなんだ? 将来は何をするんだ?」


フレッドに聞かれて、少し考える、


俺は今まで、田舎でまったりしたいだけだと思ったてたが、シンディー夫人やエルサーラ、エルタニアの話を聞いて


この世界の事にも、色々と興味が湧いてきてるのは確かなんだよな、



地球では、知りたいことはネットを使って知れたし、やろうと思えば、世界中の人と繋がれた


でもこの世界はそんな便利なものは無い


知りたければ、知っている人を探すか、直接行かなければいけない


そう思うと、何だか頭の中がスッキリした



「将来について考えてることはないけど、とりあえず魔道学院に行ってみるかな、」


何となく自分の口から出た言葉に、少し驚いている


「お?どんな心境の変化たよ! あんなに面倒面倒言ってたのに」


「さてね、自分でもよく分からんけど、学校生活も楽しそうだし、つまらなかったら帰ってくればいいしね」


兄さんがクララ嬢と婚約したという事は、今後メルヴィス家の後ろにはアイデルフ公爵家がいるということ


次男の魔道学院中退くらいで、家に喧嘩を売るようなアホはいないだろう


公爵様々だな、



それにしても、夢ってなんだろうね、


田舎で暮らせれればそれでいいと思ってたんだけど、本当にそうなら魔道学院に行くなんて口に出ない


今まで漠然と考えていたが、夢って不思議だな




他にも、色々と話していると、1人の少年が尋ねてきた


「すいません」


誰かと思うと、それは昨日酔いつぶれて絡んできたアホな5歳児、リーオだった。


「レイモンド様、フレッド様、昨日はすいませんでした」


何かと思えば、リーオは顔を青ざめさせ、謝罪をしてくる


「おいおい、そんな畏まらなくていいよ! 同じ冒険者に夢を見るんだ! お前は友達だ!」


フレッドは良い奴だな、


「俺もレイでいいよ、」


俺たちがそう言うと、リーオの顔色は少し晴れた


だが、リーオは謝罪としてなにかさせて欲しいと言ってきたので、屋台の手伝いをさせることにした



「これを皿に盛ったら、そこの台の上に置いてね、その上は、火魔法で暖かいから」


時刻もお昼時になり、屋台を始める前に、業務の流れを説明する


リーオは計算が出来ないので、やりながら焼くのを覚えてもらう、接客は俺とフレッドが適当にやることにした



「よし、いよいよ開始だな! 」

「「うん」」


「完売目指して頑張るぞ!」


「「オー!」」


フレッドの言葉で屋台を始める前


ちなみに、値段は銅貨5枚 屋台で売ってるピザが、1切れ銅貨2枚程なので、かなり割高だ



「いらっしゃーい!」


「美味いよ美味いよー!」


俺たちは、屋台でよくやってる掛け声で客を呼ぶが、見た目のせいか、人が来ない


いい匂いは漂っているので、気にはなるみたいだが、割高なのもあり、買う勇気はないらしい



だがそんな空気を壊してくれる人が現れた


「レイ、こんな所で何してるのよ!」


今日はメルヴィス家勢揃いで祭りを回っていたらしく

話しかけてきたのだ


「見ての通り、屋台だよ!」


「いい匂いがするけど、何を作ってるんだい?」


ふふ、いいことを聞いてくれた!


「これはお好み焼きっていってね、まあ味が知りたかったら買ってってね! 家族割引はしないよ!」


「そうなのかい?なら私は頂こうかな、みんなはどうするんだい?」


お、1つ目が売れたぞ!


隣を見ると、フレッドもリーオも嬉しそうな顔をしていた!


「ちなみに、結構お腹にたまるから、兄さんは誰かと半分にした方がいいと思うよ?」


ニール兄さんは小食だから、多分1枚は食べきれないだろう


「そう? ならニールは私と半分にしましょうか、カトレアは食べるの?」


「レイが作った物だから美味しいに決まってるし、食べるわ!」



3枚のオーダーが入ったので、出来上がってたものを渡し、お金を受け取る


だが、俺を試しているらしく、母さんが銅貨16枚を、笑顔で渡してきた


「こんなの計算以前に、ただ数えるだけだから間違わないよ」


「あらそう、ならいいのよ」


だってさ、本当に母さんはちゃっかりしてるよ



父さんたちは、屋台のそばに作っておいた土のベンチに腰掛け、お好み焼きを美味しそうに食べている


その光景を見て、先程からきになっていた様子の人達が、一斉に買いに来る!


「2枚お待ちー!」


「銅貨10枚だよー!」



ちょっと、人来すぎじゃない?


人が人を呼び、俺たちは、休む暇もなくお好み焼きを焼き続けた!



思いのほか大人気になり、屋台を開始してから3時間程で、材料が切れた!


「ごめんなさーい! 終了でーす!」


「完売しましたー!」



完売の言葉を聞いて、列にいた人たちがばらけて行く


「はぁ、疲れた〜〜、」


「思いのほか売れたな、まさかあんなに大変になるとは」


「だよな〜、焼き続けて腕がクタクタだぁ、」


3人でその場に突っ伏し、ひとしきり休憩したあと、後片付けをし、 最後に本日の売上を集計する!



「はい、では本日の売上を発表します」


俺が集計を終え、2人にそう告げると、緊張半分、期待半分の顔で、こちらを見てくる


「集計の結果、銅貨が1310枚、つまり俺たちは、262枚のお好み焼きを売りました!」


「おおー!!」


「す、すげーや!マジかよ!」


子供の思いつきで始めた屋台で、3時間で日本円にして13万だ、驚くのも無理はない


これは大成功でいいだろうな、何より楽しかったし


この報酬は、3人で山分けにした


リーオは昨日の謝罪だからと遠慮していたが、フレッドが


「1番お好み焼きを焼いて売上に貢献したのはリーオだから、受け取る権利がある!」


と言い、リーオも嬉しそうに貰っていた


3時間で3万4千円のバイトだ、嬉しいのも当然だな




俺たちは、そのままリバーシ大会の会場へ行くと、ちょうど決勝戦が終わった所だった


優勝はエドワード辺境伯、準優勝は、なんとニール兄さんだった!



頭がいいとは思ってたけど、まさかここまでとは


周りの野次馬に聞くと、兄さんはテオドール公爵を準決勝で倒し、決勝に行ったらしい


「凄すぎだろ」



ついさっきまで、屋台の成功に感激していたのに、最後に全部兄さんに持ってかれた。


まだ4時くらいだが、俺たち3人は、屋敷に戻り、さっき見た大会に影響されてか、裏庭の小屋でリバーシをした


ーーー


「あら?3人揃ってこんな所に、ふふっ」


どうやらリバーシ中に、3人とも寝落ちしたらしい

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