第29話 楽器職人


俺たちは、エルタニアが泊まるテントに入れてもらっていた。


「エ、エ、エルフだとッ!本当かよ!」


「見たらわかるだろ! 耳が長いんだから」


俺はフレッドにエルサーラとエルタニアの正体を教えていた


「は、初めて見た! 本物だよな?」


「だから見たらかるだろ!」


「す、すげーーよ! 凄すぎる!」



フレッドがかなり興奮しているところを見ると、どうやらエルフは滅茶苦茶レアだったみたいだな


「ちょっとエルサーラ! どうゆう事よ!! なんで人族の子供が一緒に居るの! ま、まさかアンタ!人との子を」


「違うわっ! この子はレイモンド・メルヴィス、ここの領主の息子よ!」


見事なまでのツッコミだったなエルサーラ、てか姿がエルフに戻ってるし


「なるほど、じゃないわよ! なんでそんな子がここにいるのよ!」



本当に仲がいいんだな、漫才見てるみたいだ


エルサーラも本当はこんな性格なのか、俺が見るのは、ばあさんの時ばっかだったからな


「口調が変わってる、」


フレッドよ、やはりお前もそこが気になったか!


フレッドも、エルサーラのエルフ姿の時の口調が違うことに違和感を覚えたらしい



「仕方ないだろ、この坊やに変装魔法を見破られたのさ、偽装は完璧だったのにね」


レイモンドかアンタとしか言われたことないのに、俺の二人称が坊やになった、


「はっ?、そんなわけ……あるのか、あの領主様の息子だし」


父さんって、そんなにすごい人なの? 聞いてもはぐらかされてばっかりだから、詳しくわ知らないけど、何したんだろう


「そうさ、この子は魔法の素養が高すぎる、エルフ族より遥かに高いのよ、変装の偽装を見破るほどだからね」


「それは確かに凄いわね、私だって、何となく変装してるかも? ってレベルなのに」



そんなに凄いことか? 魔法の感知は魔法使いなら誰でもできるはずだよな? 父さんも母さんも普通にしてるし


それに本にも、「感知して相手の魔法攻撃をかわそう!」って、軽いノリで書いてあったしな



「じゃあそっちの子は? 私達のことを知らなかったようだけど」


エルタニアが、未だにあわあわしているフレッドを指して聞く


「そっちの坊やは、今この領地に遊びに来てる貴族の、オルレイン辺境伯家の次男坊だよ」


「はぁー、やっぱり貴族の子供か、大丈夫なの?」


「それに関しては大丈夫さ、2人とも信用出来る子だ」


エルサーラとは初対面なのにそこまで言わせるって、フレッドの人徳か?ちょっと凄いな



話を聞くと、どうやらエルタニアは楽器職人らしい


と言っても、今この世界にあるのは、太鼓みたいな打楽器と笛ばかりだけど



「それでね、今までにない楽器を作ってみたのよ」


そう言って、それをエルサーラに渡す


「なんだいこれ、どう使うんだい」


俺はそれを見て驚いた、それは形は違うが、ハープのように、長さの違う弦が張ってあり、指で弾いて音を出す楽器だった


「その弦を指で弾くのよ」


エルタニアに使い方を教わり、エルサーラが弦を弾くが、ポォワン、ポワン、ピォン、となんとも微妙



「ほぉ、なるほどね、これは面白いわ、よくこんなの思いついたわね」


「弓をから打ちすると音がするでしょ? あれを使ってみたのよ」



ほう、弦楽器の誕生の仕方も、向こうとそう変わらないらしいな


ハープのような楽器は確か、紀元前3000年〜4000年前のエジプト、メソポタミアの壁画に描かれていたとかいなかったとかだったよな



「それって、弦の素材は何でできてるの?」


音が微妙なのは、色々理由がありそうだが、1番はやっぱり弦の素材だろう


「ん?気になるの? これはソリルダージってゆう、まあ珍しい木のツルを使ってるわ」


聞いたことも無い木だな、家にある図鑑にも乗ってなかったと思う、全部覚えてる訳じゃないが


「そっか、んー、」


「何よ坊や、また何か思いついたの?」


思いついたというか、知っているとゆうか



「ん?思いついたって?」


「ああ、エルタニアは知らなかったわね、実は今話題のボードゲームはこの坊やの発明だし、今日も屋台に沢山の種類のピザとパスタがあったでしょ? あれも元はこの子が広めたの」


「嘘、あれを? そうなの? なら思いついたって?」


「あんたの楽器のことに決まってるでしょ」



そんなにハードルを挙げられても困るんだけど…


まあ思いついてるのは確かだけどね



実はこの世界にもガットがある!


ガットは動物の腸を加工して、ひもにしたものの事で、昔の弦楽器にはよく使われてたものだ


「ガットを使えば音も良くなるんじゃない? あれは丈夫だから、弓は無理でも指で弾くくらいならちょうどいいだろうし 」


「ほぉ、なるほど、確かにいい感じに硬いしいいかも!」


「エルタニアはいつまでここにいるつもり?」


楽器の話してたら、合奏を聞きたくなってきた。


「収穫祭が終わったら帰るつもりだったけど、どうして?」


「いや他にも色々な楽器を思いついてね、図面は書くから作って貰えないかと思って」



今の技術でも作れる楽器は充分にある!


実は妹がヴァイオリンを習っていた関係で、オーケストラに使われる楽器を、構造や仕組みまで、結構調べたことがある


その知識があれば、メルヴィス領で、クラシックが聞けるかもしれない


「それは本当なの? 新しい楽器をつくるなら、ぜひ私が作るわ!」


おー、乗ってくるとは思ってたけど、やっぱりエルフは職人気質なのかもな、


「帰らなくていいの?」


「そんなのいいのよ、私も子供じゃない! それにここにはエルサーラもいるし大丈夫よ!」


まあ俺もその方がありがたいからいいか


こうして、エルタニアは、メルヴィス領で楽器作りに励む事となる



ちなみに俺が作りたい楽器はこのとおり


打楽器は


木琴と鉄琴はすぐにできるだろう、頑張ればドラムもいけるか?


太く低い音の太鼓もいいな!



弦楽器は


ヴァイオリン、これは確実にいるよな、そしてチェロとコントラバス、この中低音の楽器は合奏するなら必須で欲しい


あとはハープか、


現代の木管楽器は、構造が難しくて細かいパーツが多いから、作るのは無理だな


簡単な縦笛と横笛を作るしかないだろうな



金管楽器なんて多分作れないだろうな、惜しい……




上手くいけば、音楽に囲まれた優雅な田舎生活が送れるかもしれないな



頑張ろ!

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