第23話 魔法模擬戦闘②


次の試合は


カトレアVSフレッド なのだが


まあ、誰がどう見ても結果は見えているように、開始の合図とともに、フレッドが崩れ去った


あまりにも瞬殺すぎて、「衛生へーーーーい!!」と、叫んでしまった



そして俺はこれから、強敵2連続の地獄だ、


まずは、対カルラ嬢



「よろしくね、レイちゃん!」


なんか、手に持つ槍とその呼び方も相まって、被検体をちゃん付けで呼ぶやばい人みたいで怖いんだけど


「こちらこそー」


少し冷や汗をかいてしまった



「よし、じゃあはじめるわよー」


お互いに、何も言わずに頷くと、姉さんが開始の合図を出す。



「お?」


カルラ嬢は、さっきのカトレア姉さんとやった時とは打って変わって、水魔法撃ってきた


「槍で来ないの?」


さっきと違いすぎて、つい聞いてしまった


「うふふふ、まともな攻撃じゃバリアに阻まれそうだからね」


カルラ嬢はそういうが、先程から撃ち込んでくる水魔法がさっきの槍より強いとは思えん


何か企んでいるんだろう、面倒だな!


後手に回ると面倒くさそうなので、こちらからも魔法を打ち込む


俺は土魔法で砂の渦を作り、一度手の上に乗せ、高速回転させながら、球体に圧縮していく


例の忍者漫画の代表的な技だ



ちなみに、俺は魔法を攻撃に使おうと思ったことがないので、攻撃用の魔法は、漫画、アニメの技を再現、練習したものだけだ。



それが完了したら、圧縮したまま遠隔操作でカルラ嬢の元までお届けし、一気に圧縮を解く


『バッサーン』


砂の爆風を引き起こし、カルラ嬢を戦闘不能にしたと思ったが、そうはいかなかったようで、


「今のはなんですか? あんな魔法見たことも無いのですけど」


咄嗟に水を盾の代わりにしたらしい


「別に大したことはしてないよ」


すると今度は、カルラ嬢が、一気に距離を詰めてくる


もちろんバリアを張って槍の一撃を防ぐのだが、カルラ嬢は、自分自身を壁にして、死角にストーンバレットを発動していた


「な、マジか」


発射されたストーンバレットは、かなりの質量を持っているであろう大きさなので、バリアを重ねがけにして少し後ろに下がる


その時、背後から、微かに魔力を感知したので振り返ると、大量の水が一点に集まり、俺の振り向くのと同時にこちらに押し寄せてくる


カルラ嬢は、どこまでやるんだよ、模擬戦だよ?これ


序盤に放った水を集めたんだろうね、80ℓくらいありそうなんだけど、死ねるよね?あれ、


とりあえずストーンバレットを防ぎ


俺の横に移動するカルラ嬢の姿を目で捉えながら、迫り来る水を俺の魔力で乗っ取り、カルラ嬢にぶつけにいくそぶりをする


「嘘! 魔法を乗っ取ったの?」


カルラ嬢は驚愕しながら距離をとる


折角乗っ取ったが、量が多く危ないのでそこら辺に捨てる


すると、息を整えて、再びカルラ嬢が槍での攻撃を仕掛けるため走り込んで来たので、フレッドにやった事と同じことをする


数個のソフトボール大の水の玉を操り、足元に土を隆起させると同時に、カルラ嬢の背後も水球を準備する


さっきの戦いを見ていたカルラ嬢は、足元の方へ目線をやった


その隙をついて、背後から水球を当て、バランスを崩し転倒したところに、四方八方から鋭い氷で包囲して俺の勝ち。




「レイちゃん! あんなの反則じゃない! 魔法を乗っとるなんて!」


まあ、その気持ちも分かるが、できるのだから仕方がない


「そうですか? でも負けは負けです!」


そう言うと、ほっぺを膨らましながら「ムー」と言ってきた


カルラ嬢は『しっかりとした油断ならない女性』のイメージが強かったが、案外これが素なのかもしれない


公爵令嬢は、中々に息苦しい思いもしてるんだろう。



「はぁ、やっとここまで来たか、 あと一戦やれば、明日は自由の身だ!」



俺は、カトレア姉さんと対峙する


「なんかラスボス感半端ないんですけど」


「レイと戦うのは初めてね!」


「戦いたくなんて無いんだけどね、明日のためには仕方ないよ」


適当な挨拶を済ませると、カルラ嬢が来て、開始の合図をかける


「では、始めっ!」

「うわぁっ」


姉さんは、開始と共に、すぐに風魔法の詠唱を済ませ、暴風の追い風を利用して、一気に距離を詰めてくる


俺も同じように、姉さんに向かって暴風を作り出す


互いの風が正面からぶつかり合い、大きな渦巻き状になった



だが、姉さんはそんなことお構い無しに、連撃を入れてくる


「クソッ、なぜ割れる!」


何枚も重ねがけしたバリアを複数枚展開し、連撃を防いでいるのだが、姉さんがことごとく割っていく


「ふん、そんなんじゃ防げないわよ!!」


そう言いながら、ための攻撃をしてくる



想像以上に化け物だな、ほんとにラスボスじゃんか。



俺が今対峙しているのは8歳の女の子ではなく、化け物だと実感した


これ以上あの連撃を受けるのは嫌なので、威力を弱めた雷以外の各属性の球で弾幕を張る


さすがの姉さんも弾幕はどうにもできないのか、守りに徹している


「何あれ、1個1個ちゃんといなすか切っているよ」


目の前の光景に、メルヴィス領を囲む山脈の向こうに届くような発狂ができそうなくらい驚愕する。


「ほんとに人じゃない」




考えてみてほしい、エアーソフトガン位の球速の弾幕の玉を一つ一つ弾くのだ


な?無理だろ?化け物だろ?



そんな事を考えていると、姉さんの周りでまた暴風が起き弾幕が弾け飛んだ


もはや爆発じゃんあれ、仲間との連携とか絶対無理なタイプじゃん


「レイも少し本気を出してきたわね、なら私もいくは」


そう言った姉さんの体を、魔力が一気に流れ出す


「身体強化までするの?」


父さんたちが王都に行ってから今日までの約3週間

、毎日ひたすらトーリーに指導された身体強化を使ってくる



もう無理じゃね?



俺はこの世界に生まれて初めて、死を覚悟した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る