第20話 急展開過ぎない?
エドワードが兄さんに、俺が魔道学院を中退すると、どうしてメルヴィス家に迷惑なのか、説明する
「それは、人が自尊心と言うのを持っているからだよ」
「自尊心?ですか?」
「ああ、人は他者と比べて自分が優れていると、思いたい生き物なんだよ、それは、ほとんどの人が、大なり小なり抱えている本能に近いのかもしれない」
「はい、」
「レイモンド君が魔道学院を中退すると、在学中、もしくは卒業したものたちの中には、あいつは落ちたけど、俺は残っている、俺の方が優れている! と考えるものはいるんだ」
「はい」
「特に貴族、しかも国の英雄として武勇伝が広く広がる、ライル・メルヴィスともあれば、嫉妬するもの、憧れるものも多いだろう、そんな時にそのライルの息子が魔道学院中退」
「なるほど、嫉妬するものはざまあみろと言い、憧れるものは、不出来な息子と言うのですね」
「ああ、そしてそれが酷くなると、貴族がメルヴィス家に対してそれをやるようになる」
「そうなのですか、でもレイは凄いね、僕は説明してもらわないと全然分からなかったよ」
この状況で、年下の俺をそんな笑顔で褒めれる兄さんの方がよっぽど人として凄いよ!
俺はそう思う、周りで聞いていた大人たちもそう思ったのか、ニール兄さんを見て微笑んでいる
「まぁ、中退するとそういうことになるのだが、1つ! 3年間通わなくてもいい真っ当な方法がある! それは飛び級だ!」
飛び級制度あるのか、
「できるかは坊主次第だが、今の話を聞くに、座学は多分問題ないだろう! 詳しくは知らんが」
なんと無責任なおっちゃんだ、出来なければ3年通わなきゃ行けないというのに
「そっか、そーゆー手もあるのか」
「まぁ、受けるかどうかは、レイが決めることだから何も言わないけど、入試試験は7月の頭にあるからね?」
「はーい」
それからは、大人は大人、子供は子供に別れて話をする
と言っても、カトレア姉さんとカルラ嬢は、何故か庭で剣の稽古をしてるんだけど
「カトレア、ここはどうやって足を動かすの?」
「そこは、こうやってビュッ!!とやって、このでクルンッ!てやるのよ」
「なるほど、分からないは」
という、何ともな言い合いをしているが、2人とも楽しそうなので放っておく、
そう言えば、伝令の手紙には、極秘の任務があったな
俺は、弱すぎるフレッドとリバーシをしながら、今回の事の発端と、内密に行う使命を思い出す。
それは
ニール兄さんに好意を寄せるクララ嬢と兄さんが、2人きりになれるように仕向けるというものだ
クララ嬢は、庭のデッキの椅子に座り、カトレア姉さんとカルラ嬢の稽古を見ているのだが、露骨に、リビングに居る兄さんの方をチラチラと見ている。
「兄さん、クララ嬢が暇してそうだよ? 屋敷の周りを一緒に散歩でもしてきてあげたら?」
「ん?本当だね、でもどうしても僕に言うんだい? レイが行ってもいいと思うんだけど」
「何言ってるのさ兄さん、兄さんなら気づいてるだろうから言うけど、クララ嬢は兄さんに好意を抱いてるでしょ? それを知っていて俺に行けなんて、酷いと思うよ?」
「別にレイに行けとは言っていないなよ? でレイ、僕は異性をそういう感覚で意識したことがまだ無いから、よく分からないんだよ」
なるほどな、兄さんはあまり屋敷の外に出ないから、女性との接し方が、よく分からないのかもしれないな
「兄さん、それを知るためにも、2人きりで色々とお話するのがいいんじゃないの?」
「確かにそれも一理あるね、なら散歩に誘ってみるよ」
「うん!それがいいと思うよ」
俺が秘密司令を果たす為にもね!
兄さんが席を立ち上がり、デッキの方へ向かう
「おいレイ! お前の番だぞ!」
「ああわかってるよ」
ピシっ!
「くそーー、また負けた! どうして勝てないんだ」
それはフレッドが弱いからだよ
「まぁいい、それよりも面白そうだろ?あの2人」
「まさかついて行くとか言わないよね?」
「ハッ!そのまさかだ!」
うわー、やっぱこいつバカだー、確かに面白そうだけど、見つかったらどんな目にあうのかわかってないなー
ーーーーーーーーーーーー
「いたぞ、レイ」
「うん、それにしても仲良さげだね」
俺もだいぶバカだったらしい。。。
2人は今、屋敷の裏手にある、ミミーの母親の墓に手を合わせている
ミミーがいつでも行けるように、お墓を屋敷の裏手に移転したのだ、
ーーーーーーーーーーーー
その後は 、うちの周りに流れている小川沿いを二人で歩きながら話をしている
俺たちは、少し距離を取りながら、木の陰に隠れ尾行する
2人の会話は遠くてよく聞こえないが、何やら楽しそうだ!
「なあレイ」
「何?フレッド」
「なんか思ってたよりつまんないな」
「確かにね、まぁいきなりキスとかはしないだろうから、当たり前っちゃ当たり前っなんじゃないの?」
「それもそうか、この道の先には何があるんだ?」
「小さな池があるだけだよ」
俺たちが飽きてきて、そんな話をしていると、クララ嬢が、兄さんの手を取って歩き出した!
「お、これは進展があったな!」
「うん、父さんたちに報告しないと」
「よっしゃ、なら俺が言ってくる!お前はもう少し備考を続けろよ? 何かあるかもしれん」
そういって。。これ以上いても退屈になりそうだからだろ
「わかったよ」
俺が答えると、フレッドが小走りに、
来た道を戻って行った。
「はぁ、何が悲しくて、1人でこんな事してるんだろう」
さっきまでは面白そうと思っていたのだが、急に、1人で兄さんたちの尾行をする自分がバカバカしく思えてきた
兄さんたちが、池のほとりに着いたので、俺も尾行をやめて帰ろうとした瞬間、 池の方を向いている兄さんの頬に、クララ嬢が口付けをする
まぁ、小さい子供のお遊びにも取れるが、この世界は成人が早いのもあり、ああゆう行動ひとつで、本気の恋になりやすい
兄さんも、顔を真っ赤にしながらクララ嬢の方を見る
「これ以上は、絶対に見ちゃいけない気がする」
俺は、今居た木の側からそっと離れ、1人静かに屋敷へ戻った
ーーーーーーーーーーーー
お昼の時間になり、12人+1匹ミミーの大人数が、並べ直したダイニングの、席につきお昼を食べる
「これがピザか! 上手いな!」
「ええ、トマトの酸味とチーズの香りが、この生地に合うわね!」
今日の昼食はピザだ!
まぁ、人数が多いので、作るのが楽なピザは重宝するのだろう!
この食事は無礼講なので、皆があーだこーだ言いながら、食事を楽しんでいるのだが、 やはり皆、兄さんとクララ嬢の方を意識している
席は離れているが、お互いがお互いを、チラチラと横目で見合っている
ちなみに、さっき目撃した頬へのキスのことは、伝えていない
さすがにそんな無粋なことはしないよ!
すると兄さんが俺に話しかけてくる
「ねぇレイ、なんかクララ嬢と散歩に行ってから、妙にクララ嬢の方を見てしまうんだ、なんでだろう」
「え? それって恋でしょ?」
「あ、ちょっとレイ!」
「ご、ごめん!」
突然兄さんがそんな事を聞いてきたので、つい大声で反応してしまった
ニール兄さんも、自分の気持ちを自覚したのか、顔を真っ赤にしなが、チラッとクララ嬢の方をみて、そなまま俯いてしまった
クララ嬢も、りんごのように頬を真っ赤にさせながら、嬉しそうに口元が緩んでいる
ダイニングにいる俺たちはもちろん、配膳をしている各家の使用人までもが、初々しい2人の反応を見て、何も言わずに微笑んでいる
まじか、ついさっきまで、「恋をした事ないから分からない」みたいなことを言ってたのに
初日に兄さんを落とすとは、クララ嬢もなかなかやるな、尻に敷かれる未来しか見えないな、兄さん…
その後も、少しの間沈黙の時間が続いた
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