第13話 冒険者トリス


「カトレア、レイのことはお願いね? レイも執務はほとんどないけど、万が一の時はよろしく頼むよ!」

「「はーい!」」


「トーリーもこの子達の事をお願いね!」

「おう!任せとけよ!」


「では行ってくる!!」


「「行ってらっしゃい!」」

「行ってらっしゃいませ!」



ライル父さん、レイラ母さん、ニール兄さん、お付のミアとドネリーは、馬車に乗り込み行ってしまった。


「行ったわね、トーリー!剣の稽古に付き合ってくれない?」


「よしきた! 少しでも体を動かさないと、訛って仕方ねーからな!」



この人は叔父の『トリス』レイラ母さんの弟で、普段は冒険者をしている。



トーリーがいる理由なのだが


王都で、第3王女の生誕祭が開かれ、貴族家はそれに参加する義務があるの、そのため3人は王都に行ったのだ


というのも、この医療が発達していない世界では、出生とはまさに、母子の命の危機であり、子供は生まれてからも体が弱く死亡率が高い


なので、3歳の誕生日は特別で、それくらいの時期から死亡率が一気に下がるため、その子の成長を喜び、そして祝うため、盛大に祝う習わしがある


俺も去年の誕生日はご馳走が並び、町の重役達は屋敷に招かれていた。



そんなわけで、子守りとしてトリス叔父さんが呼ばれた。



「レイはまだ剣は出来んのだよな?」


「うん、4歳だしね」


「でもレイは魔法が得意なのよ!」


姉さん、冒険者のトーリーにそれは地雷だよ…


「ほー、レイは魔法使いか! 適性はなんだ?」


「まあ、全部使えるよ、氷も雷も」


「本当かよ!それってかなり天才じゃねーか!すげーなおい!」


やっぱりか、


「誰にも言わないでよ?面倒臭いことになりそうだし、それに戦闘なんかしたくもないしね」


「なんだよもったいねーな、まあ冒険者は信頼が命だから、レイがそういうなら言わねえよ!」



「トーリー!早く剣の稽古!」


「おお!そうだったな! レイは見てるのか?」


「ちょっとだけね、町に行きたいし」



そう言ってにはの椅子に座り、2人の稽古の様子を見る。


スタートの合図とともに、姉さんが一気に間合いを詰め、素早く横凪の斬撃を放つが トーリーに簡単に捌かれる。


姉さんの木剣は下に弾かれるが、すかさず姉さんが1歩踏み出ししてから切りかかる、トーリーは1歩下がり姉さんの剣の間合いから出る


「カトレア、早くなったな!」


「まだまだここからが本番よ!」


「ほお」


そう言うと姉さんが四方八方から攻めまくる、


「姉さんの体力は化け物だね、ほんとに」


だが、トーリーも全て捌いているあたり、流石は現役冒険者だ


連撃が止み、お互いに距離を取り直す


「はぁはぁ、なんで全然当たんないのよ、」


「それは真っ直ぐすぎるからだ、フェイントや緩急をつけて、相手を揺さぶるといいぞ!」


「なるほど、難しいは、私はレイみたいに狡賢くないから、」



ん?ちょっとききづてならない言葉が聞こえたな



「ちょっと何それ、可愛い弟に向かって!」


「可愛い弟は自分でそんな事言わないは!!」


「ハッハッハ、仲が良いのはいい事だ!」



「ガンッ!」


「うぉわっ!カトレア、それは狡いだろ!」


「油断禁物よ!」


姉さんが、トーリーが話してる間に切りかかる、しかも身体強化を使ってだ!



そこからは、姉さんが攻め、トーリーがそれを受け流す、最後は姉さんの魔力がつき一気に1本取られた


「まさか身体強化を使ってくるとは、まぁまだまだ未熟だな!」


「くっそ、勝てると思ったのに!」


「何度か危ない所もあったが、俺もまだまだお前に負ける訳には行かんからな」


「くそー!もう1回よ!」


「カトレア、お前魔力切れだぞ、相当だるいだろ!また明日だ!」


「えーーー!」


姉さんがブーブー言いながらシャワーへ向かった


姉さんはこーゆー時いつもは駄々をこねるのだが、今日は家族が姉さんと俺しかいない、多少は、しっかりしなきゃと思ってるらしい。


それに、魔力が切れると本当にキツイ、高熱の時のようなダルさが襲ってくるからな。



「俺は街に行くか」


「お?なら俺も行っていいか?」


「トーリーは体力は…大丈夫か、別にいいけど何があるわけじゃないし退屈だよ?」


あれだけ動いといて息をひとつも切らしてないから、姉さんは完敗だな。


「おう!町にはパーティーの奴らもいるしちょうどいいんだよ!」



そう言って俺たちは、ポレオ町へ向かう


「カトレアに身体強化を教えたのはレイか?」


「どうしてそう思うの?」



なんで俺と決めつけてるんだ?この人


「レイラ姉さんも、ライル義兄にいさんも、まだまだ基礎が出来てないカトレアに、あれを教えるとは思えんからな」


「なるほどね、まぁ確かにきっかけは俺だけど、姉さんの前で身体強化の話をたまたましたら、魔力操作もろくに出来ないのに、いきなり身体強化を使えちゃったんだよ、本当バケモノだよ」



あれは本当にビックリしたからな。


姉さんの魔法適正は風なのだが、魔法の訓練はほとんどのしてないため、強風しか出せないのだ



「はっは、それを言うなら、4歳で魔法の理論を理解して説明出来るレイも、だいぶバケモノだぞ!」


「俺は魔力に慣れてるだけだよ、普通の人さ」


ほんと失礼しちゃうよ、こんないたいけな4歳児だっていうのに。


「慣れてるって魔法にか?戦うの嫌いじゃなかったのか?」



やっぱり俺の魔法のイメージと、この国の魔法のイメージは全然違うらしい。


「あのねトーリー、魔法は攻撃の為じゃなくて、生活のためにあるんだよ」


そう言って、前に母さんにやったように、土魔法でコップを作り、それを圧縮して、水と氷をいれて、サイコキネシスでトーリーに渡す。


「同時に3つの魔法を操作するか、それに無駄なく正確に操ってやがる、やっぱりレイも化け物だな」



ーーーーーーーーーーーー


トーリーとだべってると、いつの間にかポレオ町に着いていた


「レイは何をするんだ?」


「食材とか見たり、面白そうなものがないか、見て回るだけだよ」


まだまだ食生活を豊かにしたいからな!



町の中心の方に歩いていくと、何人もの人だかりが出来ていた



「何してるの?」


「おや?これはレイモンド様、実は、たまにこの町に来る冒険者がリバーシがめちゃめちゃ強いってんで、皆挑戦してるんですよ」



こんな田舎に冒険者?


「リバーシっていやレイが考えた玩具だろ?」


「ええ、皆娯楽には飢えてるんで、次々と注文が来るって、木工店の店主のコルトンが泣きながら作ってましたよ」


そう言って、人だかりの中心、マールおばさんの酒場に入ると、例の冒険者が卓でボードゲームをしていた



「お?お前ら何やってんだよ!」


ん?この人たちトーリーの知り合いなのか?


「お?トリスお前、子守りじゃなかったのかよ」


「その子守りで来てんだよ」


子守りなんてよく言うよこの叔父、ただ屋敷が退屈だっただけだろうに


「レイ、紹介するぜ、右から 斥候のコールソン、剣士のソアラ、魔法士のエブリンにブルックだ、俺はコイツらとパーティーを組んで、色んなとこに旅するってわけさ


「へー、」

パーティーメンバーだったか、



「こいつは俺の甥っ子のレイモンド、4歳だがそのボードゲームの生みの親だ!」


「それだけじゃないよ!」


トーリーが余計なことをベラベラと喋っていると、マールおばさんも横から入ってくる


「まだなんかあんのか?」


「さっきから上手い上手いってあんた達が食べてる、そのピザとスパゲティもレイモンド様が考えたのさ!」


「「「「え。まじかよ」」」」


流石は共に長い旅をするパーティー、息ぴったりだな

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