第472話 松尾家の秘密 ~ストレート~

 せっかく七和先輩からカメラを奪い取ったのに、六石君の登場によりカメラをまた七和先輩に取られてしまった私。

 かなりここまで苦労したのに――またここから奪い取るとか……きつい。

 ちなみにがっくりの私の前では、七和先輩が六石君のところへと向かい――バンバンと肩を叩いている。あれは――褒めているのかな?多分そう。ほんとなんでこのタイミングで出てくるかなー。


「いやー、六石君ナイスナイス」

「へっ?」


 なお、茂みの中から出てきた六石君はいまいち状況がわかっていない様子――あれ?もしかして本当に偶然?そんな馬鹿な。私に運がなさすぎるというか。七和先輩が強運の持ち主?


「ギリギリの救出だねー。六石君狙ってた?狙っていたよね?さすがー」


 再度嬉しそうに六石君の背中をバシバシ叩く七菜先輩。


「えっ?いや――ってか、俺はなんで結崎に文句を言われたのか――って、俺は単に七和先輩たちを追いかけて探していたら――何かちょうど声が聞こえて。その声の方に来ただけ――むしろ俺的には助かったというか。途中からどこを歩いているかわからなくなっていたので――七和先輩たちに会えてよかったです」


 六石君は――やはりわかっていない。たまたまであのタイミングかー。私本当に運がなかったみた……うん?

 ちょっと待って、今六石君今なんて言った?迷子になっていたみたいなこと言わなかった?気のせい?気のせいだと言ってほしいかな?気のせいだと言って。いや、もう聞こえたからわざわざ聞こえなかったふりをする必要ないと思うけどさ。でも――まじめに今の状況は良くないと思うからね。少しくらい希望が欲しかったよ。


「ありゃー。六石君も迷子?まあ適当に歩いていたら何とかなると思うけどねー。って、とりあえずは六石君も見る?これいい写真だよー。それはそれは鼻血もの?」


 この後どうしようかな?カメラもだけど、本当にどこに今いるのかわからない。

 やみくもに歩いて――松尾君のところに戻れるのかも微妙なところ。いや、無理?

 今までも松尾君のところの畑までしか知らなかったというか。そもそもこんな山の中に入る必要がなかったから。松尾君の家の周りがどうなっているのか。ちゃんと聞いたことがなかったんだよね。私の前では何か楽しそうに――話しているけど。そんな状況でもないと思うんだよね。まあ七和先輩が演技をしていれば話は別だけど――。

 まあ迷子――ということも認めないとだけど、聞こえてくる会話が怪しいから。とりあえず手に持っている硬い物に力を込めておくことにした私。

 そんなことは気が付かなかったのか。私の前では会話が続いていき――。


「えっと何の写真をですか?」

「スクープ。それはもう最高のネタ!しばらくは資金面に困らないかも。ってやつだよ」

「――資金面?スクープ……」

「もう、とりあえず見てみなよ。あとで松尾君に怒られるかもだけど」

「なんで松尾に怒られ――」


 ――びゅっ。


 スクープという言葉に反応していた私は、本当はしたくなかったけど――さすがに七和先輩が私から取り戻したカメラを六石君に見せようとしたため。とっさに私は駆け寄る――ではなく。手に持っていた石を投げた。


 よい子はマネしないように――。


 と、もしこの場に松尾君がいたら私怒られていることをした気がするけど、自分の個人情報保護?のためにとりあえず投げた。

 

 シュルルルルル――。


 すると、石の形がよかったのか。たまたま。本当にたまたま私の投げた石は綺麗に目的の物のところへと向かって行く。

 そう七和先輩に――ではなく。見ようとしている六石君に――でもなく。


 ……グシャ。


「えっとどれど――ひっ!?なんだ!?」

「――――――ぎゃあああああ私のカメラ!!」

「あらー」


 投げた本人がびっくり。

 いや、あんなにまっすぐ綺麗に飛んでいくとは――私の投げた石は、目的のカメラに向かいまっすぐ飛んでいき――まさかのめり込んだ。

 七和先輩や六石君にケガを負わすこともなく。カメラだけにめり込んだ。

 砕けたような音が森の中にしたというより。少しだけ。めり込んだ。食い込んだ。音が一度しただけで、地味――と、言われるかもしれないけど。けれどかなりめり込んだのが私のところからでもわかる状態だった。

 なので――六石君は驚き。七和先輩は少しフリーズがあってからの大騒ぎ。

 ちなみに私はというと、あまりに完璧すぎて、まるで部外者が見ていたような感じでただその光景をしばらく見ていたのだった。

 いや、でもあれは――証拠隠滅?成功した気がする。


「カードカード!!」

「ちょ、七和先輩」

「六石君解体解体!カードだけでも救出」

「いや――なんかこれ――えっ?石?石がめり込んで――」

「いいから!」


 それからは私の前で七和先輩と六石君が地面に座り込んで、私の投げた石がめり込んだカメラの解体作業を始めたのだった――ってか、カードって――もしかしてメモリーカードに写真が。それ奪って壊さなきゃ。と、目の前の光景を見ていた私が思ったと同時だった。


「あっ」


 まずは六石君の声がしてから――。


「――終わった!!!!!!!!!!!!!!」


 七和先輩の絶叫が森に響いたのだった。


 ……いや、私たち何してるの。って、とりあえず今私の視線の視線の先にあるのは、真っ二つになっているカード?小さな小さなカードだった。

 とりあえず――私は任務完了かな?

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