第473話 松尾家の秘密 ~たい焼き~
「さて。どこへ行ったのか」
現在の俺はじいちゃんばあちゃんの家の玄関前にて腰に手を当てながらあたりを見ている。
何をしているかというと、姿の見えなくなった方々?というのか。まあ新聞部はいいか。とりあえず結崎を探しているところである。
しかし家の周りには姿がなかった。そこそこちゃんと回ったのだが。姿もなく。声も聞こえなかった。
そしてあまり遠くまで行くと行き違いになる可能性もあったので、先ほど家へと戻ってきたところ。
ちなみに結崎と新聞部は帰ってきていなかった。
「まあまだ明るいから山の中走り回っているんじゃない?って、歩いたから飲み物美味しい!」
俺の横に立って飲み物を飲みつつ声をかけてきたのは長宮さんである。
先ほどまで一緒に家の周りを歩いて結崎たちを探してくれた。
「――その可能性はあるか――あるな。ってか、飲み物どこから出てきたか」
「冷蔵庫。あっちゃんと地下室から補充しておいたから」
「……」
地下室。それは少し前に発見された松尾家の家の中にあった部屋のことである。
俺はマジで知らなかったことである。って、そのことももうちょっとちゃんと調べたいというか。ばあちゃんに確認したい――とかも思っていたのだが。なんかみんな松尾家に住み着いているし。さらにさらに今みたいに騒動?を起こしてくれるからなかなかそっちの方に事が進まない。
普通ならそこそこ長い間生活していた家に新たな部屋があったとか。そっちを重点的に見たいのだが――俺の願いは叶わないだろう。
そりゃ今はまだ昼過ぎ。暗くなることはまだないのでほっておいてもいいだろうが。でもね。一応探しておかないとというか。俺も悪かったというか。もとはと言えば、俺がとあるものを発見したから――って、このことはもう触れないでおこう。
「あっ、松尾君がエッチなことを考えている顔になった」
「――そんなことはない。適当なことを言わないように」
「いやいや、今は考えていたね。まあ仕方ないかー松尾君だし」
「なんかおかしい。っか、そこは――男だから――とかでは?」
「えー、松尾君だからでしょ」
「……」
「あっ、黙った。もう。嘘嘘。松尾君も男の子で安心したってことだよ」
「……」
なんやかんやで一番まとも――ではないが。でもぶっ飛んだことはしていない――いや、しているような気もするが。周りがいろいろやりすぎているからか。まともに見えてしまう長宮さん――の相手だが。これはこれで2人だとなんかペースを握られるというか。いじられるというか。なんか居心地が――だった俺はその後無言をしばし貫いたのだった。
もちろんその間も長宮さんは楽しそうに飲み物を飲みつつ突っついてきたりしたけどね。
っか、男の子で安心って――俺はどのように思われていた?いや――これは考えたら負けではないが。今は無駄なことは考えないでおこう。
――そういえば1人忘れているか?忘れているな。今この松尾家には消えた人以外にもう1人いないと数が合わないからな。
すると、長宮さんの相手?をしつつ。さらに結崎たちどこ行った?とかそんなことを俺が考えていると、ふと、後ろ。じいちゃんばあちゃんの家の方から何やらいい香りがしてきた。
「後輩くん。後輩ちゃん。食べる?」
俺が匂いの方を見ると。それと同時に石見先輩が室内から出てきた。
先ほどからちょっとだけ俺が忘れていたお方だ。そしてその石見先輩の手には――。
「あっ、たい焼き!」
俺が頭の中で思うより先に長宮さんが叫んだ。そして石見先輩のところへと行って――受け取った。
どこから出てきた――?俺はたい焼きなんてあったの知らないぞ?すると俺の脳内を見れていたのか。石見先輩が説明を勝手にしてくれた。
「松尾君ところいい物冷凍でたくさん置いてあったよー。はい。後輩ちゃん1個5000円で」
「高っ!?」
そして高値で売っていた。ぼったくりだ。って、なるほど冷凍庫にあったか。
そういえばたまにおやつで出てきていた気がするが――なるほど。冷凍の物があったと考えるといろいろすっきりか――って、それは置いておいて。
「石見先輩。人の家の食料を勝手に高値で売らない」
「えー、私がレンチンしたんだけど?あっ、見つけてね。ってか、わかった!」
すると、俺を見つつ話していた石見先輩。良いことでも思いついたのか。ニヤッとして――って、ろくでもないことだ。これは間違いなくろくでもない事だろう。
「――石見先輩今ろくでもない事考えていると思うので口にしなくていいです」
「たい焼き1個に付き。松尾君の言いなり1回だって後輩ちゃん」
「……話を聞け」
本当にろくでもないことを。
にしてもよくよく一緒に居るからか。石見先輩の考えそうなことがわかってしまう悲しさ――。
「じゃ、1ついただきまーす」
すると、お昼と食べたないからだろう。長宮さんもお腹が空いていたのか。または石見先輩の言葉はスルーしたのか。普通に石見先輩が持ってきたたい焼きにかぶりついた。
「――あっつ!」
出来立ては出来立てらしい。見ているとおいしそうである。
「おお、後輩くんよかったねー。後輩ちゃんは一生言いなりになるって」
「いやいや、おかしい。というか会話が全然噛み合ってない気がするんですが――」
『――――――ぎゃあああああ――――――!!』
「「「うん??」」」
たい焼きを食べる2人を見つつ俺が呆れていると。遠くから何やら――悲鳴が聞こえてきたのだった。
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