第470話 松尾家の秘密 ~腹ペコ先輩~

「お腹空いたー」


 片付け終了後。

 じいちゃんばあちゃんの家はまあ元通り。

 そこまで酷くはなっていなかったので、片付けはすぐに終了。そしてだ――お腹空いた言っている先輩が横にいるが――ほっておいていいかな?

 多分今のところの空腹では死なないだろうし。一応朝はちゃんと食べているからな。


「後輩くんお昼ー」

「はぁ――」

「ねえねえ松尾君」

「――なんでしょうか?」


 そして、もう1人俺に絡んできているのは長宮さんである。


 まあ俺の周り。両サイドは先ほどから変わってないということだ。なんか妹――ではないが。なんか大変な子守をしている感じだ。

 ここに結崎が居たら――何とかしてくれそうなのにな。

 今のところ結崎は――不在のままだ。どこへ行ったのか――。

 

「後輩くん。ご飯ご飯。あっ、スイーツ求!」


 いや、マジでこの先輩自由ってか、いつも通りいうのか。ガキだ。


「あっ、松尾君今先輩のこと子供とか思ったでしょー」

「……いや、そんなことは――」


 すると。俺のわき腹を突っつきながら長宮さんが指摘してきた。いや、長宮さんも結崎と同じですか。なんかわかるの?俺が顔に出やすいのか?


 ちなみに思ってました。素直に答えることはしないが――脳内で回答。


「うわっ、後輩くんがいじめてきたーいじめてきた。訴える」


 すると長宮さんの言葉に反応した石見先輩が何故か俺に飛び乗って来た。ちょっとバランスを崩したが。何とかこけないで俺は耐えた。というか。石見先輩軽いですからね。


「ちょ、石見先輩――危ないですから」

「後輩くんに重いとか言われたー」

「言ってねー」

 

 マジで言ってねー。むしろ軽いと思ったんですが!?


「言われたー裁判裁判。後輩くん有罪」

「何も思ってませんってか、人の上で騒ぐな」


 本当に子供だ――と、俺があきらめると。


「松尾君ついでに私も乗っていい?」

「意味が分からん」


 何故か横で楽しそうにしている長宮さん。そして何故にこの状況でさらに乗ろうとしたのか。おかしいだろ。とか俺が思っている間にも何故か俺の肩に手をかけてくる長宮さん。いやいや石見先輩乗ってるんだけど?


「これくらい松尾君余裕でしょ。女の子2人を持ち上げるくらい」

「いやいや、何を勝手に――って、それより。出て行った2人はどうなったの?」

「「さあ??」」

「口裏を合わせたように完璧な回答どうも」

「「いえいえ」」

「……」


 話を変えたことにより長宮さんが飛び乗って来ることはなかったが。石見先輩はそのまま俺の背中に――って、邪魔だ。

 あと、無駄に息ぴったりの2人よ。なんなのこれ?


「とりあえず石見先輩降りる」

「えー」

「子どもか!」

「あー、ほらほら、子どもって言った。後輩くん私のこと子どもって思ってたー。後輩ちゃん聞いたね?」

「聞いた」


 そしてちょっとしたことで、俺の両サイドはまたにぎやかに――って、よし。外へと行こう。

 俺は石見先輩の足を持つとかそういうことはせずに歩き出した。すると、次第に石見先輩がずり落ちて――俺の首が絞まる。


「ちょちょ、離す離す」

「後輩くんが持つ」

「なんでですか」

「私に触れることを許可するから。その代わり触ったら有罪」

「それ許可してねー。って、絞まる」


 結局俺は玄関までたどり着くのに少し時間を費やした。

 石見先輩を身体から引きはがして――ちょっかいをかけてくる長宮さんを制止させる――って、2人の相手大変だわ。


 そんなこんなで俺は外へと出た。

 もちろん2人も付いてきている。って――。


「……どこ行った?」

「ゆえちゃんたちいないじゃん」

「まだ追いかけまわっているんじゃない?」


 結崎と新聞部の姿はなし。

 多分長宮さんのつぶやきが正解だろう。

 結崎は――撮られた写真を得るまで追いかけるだろう。または破壊したら戻って来ると思うが――にしても静かだ。

 ちょっと遠くでガタゴトと電車の音が聞こえてくるくらい静かだ。

 このあたりで追いかけっこ。鬼ごっこ?をしていることはなさそうだ。どこ行ったんだよ。

 

すると、俺の隣にいた石見先輩がスマホを手に取った。そして驚いたような声で。いや、嬉しそう?面白そうな声で叫んだ。


『――あっ、サングラスちゃんから極秘映像届いた!』


 いやいや、あの先輩早速流出させよったか。って、結崎逃げられたのか?って、今俺が考えるのはそれではないか。


「石見先輩。見ずに消すように」

「えー、後輩くんも見たいでしょ?ほらほら」


 すると石見先輩はスマホの画面が見えないように俺の方に自分のスマホを出したり引いたり――って、隣に居るのですぐに手首を掴むことはできた。


「ぎゃっ、捕まった――」

「先輩。私にも見せてください」

「長宮さんも見なくていいか――うん?」


 反対側の隣からは長宮さんも手を伸ばしてきたが――捕まえた石見先輩の手にあったスマホ――映っていたのは――普通の写真。それも石見先輩と結崎が記念撮影している写真―――って、もしかして、この先輩……。


「石見先輩。嘘ですか」

「えへへ――なんか後輩くんがボロ出すかと思ったんだけど」

「……紐どこかにあったかなー」

「うわっ、後輩くんが縛り上げようとしてる」

「はい」

「素直!?」


 一瞬だけ流出騒動となりかけたが――結局は石見先輩の嘘だったことがすぐに判明したため。そのあとは石見先輩を縛り上げて――は、できず。

 放置して、少し家の周りの様子を見に俺は歩き出したのだった。

 ちなみに2人もちゃんと付いてきた。


 現状。結崎と新聞部。今も行方知れずである。


「あっ、後輩くんお腹空いたの忘れてた」

「そのまま忘れといてください」

「酷い!」

「ふふっ」

「長宮さんも楽しそうで」


 そしてワイワイ?という感じで俺たちは家の周りを探したが――いや、俺はワイワイしてないか。呆れつつ探したが――結崎も新聞部の姿もなかったのだった。

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