第469話 松尾家の秘密 ~各所で――~
◆
カァー。カァー……。
「――どこ行ったんだよ」
俺が松尾の家の外に出るとすでに七和先輩と結崎の姿はなかつた。
近くで何か結崎の声が聞こえる気がするが――カラスが勝っている。というか。たまたま松尾の家の近くの木に止まっているみたいで、カァーカァー鳴いている。
って、カラスではなく。七和先輩たちを探さないとか。
俺はとりあえず松尾の家の前でキョロキョロ。普通に考えて――道があるのは駅の方。
だが駅の方を見ても姿はない。そして――声が何故か反対の方向から聞こえてくる気がする。
でも普通わざわざ道なき道の方へ行くか?もしかし森の中というか。山だから反響しているのだろうか?と、俺は思いつつとりあえず足場がしっかりしている。道がある方。駅への道を小走りで進んでみると――。
『…………止まりなさい!!ちょっと!!』
なんか後ろから声が聞こえてきた。
「……いやいや、マジか」
後ろと言えばやはり山。森の中である。
七和先輩と結崎は――どこで追いかけっこをしているのか。
驚きつつもちょうど駅までやって来た俺は静かで電車すらいない駅を見てから――結局また来た道を戻った。
そして松尾の家まで戻って来て――そのまま家を通過して進んでいくと。
『待ちやがれ――!!』
また声が聞こえてきた。
ちなみに先ほどから聞こえてきているのは結崎の声だと思う。
多分であるが――まあ間違いないと思う。そしてそこそこちゃんと聞き取れる怖さ。結崎めっちゃ大声出せるんだな――などと俺は思いつつそのまま先へと進んでいく。
先ほどまでは固められた感じの道を歩いていたが。次第に草が多く――畑に出た。って、俺この前このあたりで野宿。キャンプしたような――などと思いつつそこも通過すると。今度は完全に森の中。
自分と同じくらいの背丈の草もある中を進んでいく。
一応道がある――ようにも見えなくもないが。でもこれは道なき道だろう。今のところ後ろを振り返れば、松尾の家の――畑?が見えるが。これってこの先に進んでいいのだろうか?と、俺が思った瞬間。
『止まれ!』
また結崎の声が聞こえてきた。
場所は――多分この先。でも先ほどよりも声が小さくなった気がするので――一応まだ聞き取れたが。このまま離されると聞き取れなくなるだろう――って、俺は何をしているのか。追いかけないといけないのだろうが――これ迷子。遭難しないか?と、思うとなかなか進めんかったが――。
『――――六石君どこ!』
ふいに七和先輩の声が耳に届いた。
小さな声だったが――俺呼ばれてる。つまり――無視すると――やばいな。ということで、仕方なく俺は声の聞こえる方へと森の中を進んでいくことにした。
なお、この後数歩進んで――。
ズルッ。
「ぬわっ」
ズルルルル……。
見事に足を滑らせた俺だった。崖から落ちたとかではないが――滑った。足を取られた。いきなり葉っぱ。土まみれになった俺だった。
――俺、何してるんだろ。
そんなことを思いつつ。寝転んでいるわけにはいかなかったので、いろいろ払いながら俺は再度進みだしたのだった。
「にしても、こんなところは知ってるのか?七和先輩も結崎も――すごいな」
◆
ゆえが先輩を追いかけて松尾君の家を出て行くとき。
何かを落とした――布?などと私は思いつつ近づくと――。
「おっ、パンツだ」
私が床に落ちている物を拾おうとすると、隣から手が伸びてきた。
「さらにブラ。って、これゆえちゃんのかな」
床に落ちていたのを拾ったのは石見先輩。
先ほどから私と一緒に居る先輩――って、本当に先輩の手には下着が――なんでゆえそんなの持って……って、納得。なるほど。奪い返した――または持ったまま先輩を追いかけていて、ヒートアップしたところで落としたと見た。
「だと思いますけど――」
一応返事をしつつ。ちらちら確認。間違いなくゆえのだと思う。
私がそんなことを思っていると――。
「よし。隠しちゃおう」
「えっ――?」
すぐに石見先輩が動き出した。手にはゆえの下着。そして私の前から消えて――私は松尾君の家に1人。すごく静か――とか思っていると。すぐに石見先輩は戻って来た。
「にひひー。面白くなるかなー」
明らかに良からぬことを考えているのはわかる。でも――私は関係ないよね。うんうん。
石見先輩がどこに隠してきたのかは知らないが――そんなことを私が考える暇もなく。今度は玄関の方で物音がした。
ゆえが早々と先輩を捕まえて帰って来た?とか一瞬は思ったけど――どうやらそれは違った。
やって来たのは松尾君。すでに何かあった――まああったよね。疲れた感じ?で、部屋に入って来た。
そして――。
「うわぁ……予想はしていたが。なかなかドタバタしたようで」
さらに呆れていた。
そういえば室内散らかったからね。まあこの犯人はゆえたち。
「おっ、後輩。何やらかした?襲った?襲ったの?脱がしたの?」
「――黙りなさい」
「えー」
「ってか、片付けないとか」
そのあと松尾君が石見先輩と話しつつ片付けを開始したので――私は見ているのも――だったので、少し手伝いつつ。まあゆえと何があったのか。なんとなくわかっていたけど、そのことでしばらく松尾君をいじることにしたのだった。
これはこれで面白かったよ?
そういえば、石見先輩はゆえの下着――どこに隠してきたんだろう?松尾君が来てからは全く触れてないというか――松尾君もまさかと思っているからか。そもそも触れないか。とにかくどちらも触れないので――私も知らないふり。気が付かないふりをしておくことにしたのだった。
ってか――まさかだけど、石見先輩。隠して――そのまま忘れてないよね?なんか楽しそうに松尾君を突っついたり。もたれたりしてるけど――って、私ももたれていいかな?よし。ドンドンいじってもたれよう。
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