第467話 松尾家の秘密 ~追いかけっこ~
タタタタッ……。
時たま頭に枝などの攻撃を受けつつも私は走る。
なんか服にたくさん枯れ葉とかが付いているけどそれは関係ない。
とにかく今は走る。
立ち止まることなく走る。
相手があきらめるのを待つ!
タタタタッ……。
「ちょっと!なんで逃げるんですか!」
数メートル後ろから声がする。
ちなみに相手を――見る余裕はない。
なぜならよそ見をしたら木に激突しそうだから。
道なき道だからねー。激突したら間違いなく締め上げられるし。
ということで――前を向いて全力疾走!あっ、とりあえず――声は聞こえているとアピールっと。
「スクープは命だから!」
「意味わかんないですから!七和先輩!」
「無理―!」
「――待ちやがれ!」
「おぉ――めっちゃ必死」
やばいやばい。ちょっと余計なこと私言ったかな?
私の後ろからガチで猛獣が迫ってきている――気がする。
でも!
「ここで捕まるわけにはいかない」
さらに私はスピードを上げる。
どこに向かっているのかはわからないけど、とにかく走る。
ちょっと楽しくなってきたのは――後ろの猛獣に言っちゃったらさらに追いかけるスピードを上げてきそうだから……それは言わない方がいいかなー。
捕まったらそれはそれは、大変な姿に私がされる可能性があるし。
「わぁお」
「あー、もう!先輩!!変なこと言ってないで止まりなさい!!ちょっと!!」
あれ?声に出てたかな?
なんか後ろから聞こえてくる声が近く――いや、さらに元気?になったような……これは――燃える!ここで私が負けるわけにはいかない。
一般人に負けるわけがない。
私の手にはスクープがある。これは――使える!
タタタタッ……。
「あっ、ちょ、もう!なんでそんなに早く走れるの!待て!その写真消せ!ってか渡せ!」
にしても――後ろの猛獣ちゃん性格変わってない?なんか女の子が言っちゃいけないというか――言葉遣い悪くなってない?松尾君?教育してる?ちゃんと指導してあげて?猛獣ちゃんになっちゃいそうだよ?あれ?なってる?これはなっている?つまり――私食べられる可能性がある?
「わぁお」
これは――楽しい。できるもんならやってみろだね。
まあ今どこを走っているかはわからないけど、まあまだ明るい時間だし。適当に走っていればそのうちどこかに出る――はず。
ってか、六石君何してるの。
こういう時こそ助けに来てくれないと。カメラのパスとか。どっちが持っているかわからないようにするために動くとかさ。
もう。こっちの教育も誰がしているのか――って、私かー。もっと教育しないとねー。
「待ちやがれ――!!」
にしても後ろの猛獣ちゃん。
怖いよ。なんか身体から特殊能力でも出ているんじゃないかっていうオーラを見なくても感じるんだけど――ってか、途中で体力切れとかになっても私知らないからね?ってか、できれば体力切れになってほしいかなーまだまだ大丈夫だけど。このまま山道を走る続けるのはなかなかだからねー。
あっ、そうそう、今私は山道を走っているんだよ。
スクープの写真。カメラを抱いてね。
その他の物は何も持っていない。
全部松尾君の家に置いたまま――元気に走っているところ。
元気だよ?めっちゃまだまだ私は元気。
足も問題なし。息切れもなし。
時たま不意打ちで垂れている枝に頭を打ったりするけど、小枝だからダメージなし。それに大きな枝は普通に見えるからね。
そりゃ真夜中だったらこんな早く山道を走れないだろうし。どこかでぶつかって捕まる可能性はあるけど――ってか、猛獣ちゃん――こんなにスタミナあったんだ。
すぐにバテるかと思ったんだけど――ちょっとチラ見。
「……」
「待て!その手に持っているもの渡せ!渡さないなら――」
「……わぁお」
久しぶりにチラ見してみたら、かなりガチな顔で追いかけている猛獣ちゃんが視線に……いやいや、なんか眼なんて獣じゃん。やばいよ誰?あんな猛獣ちゃんにしちゃったの。あれじゃオスが逃げるよ?って――松尾君だから大丈夫かー。あとでなだめてくれるでしょう。
あっ、もしかしたら、今の勢いのままなら松尾君が襲われるパターンのスクープが……これは――再度使える!
「先輩!ろくでもない事考えながら逃げてるでしょ!」
「……わぁお」
まさかの私の脳内を見てきた――この猛獣やるな。
しかし!私はまだまだ捕まらない。
タタタタッ……。
えっと、とにかく今の私は松尾君の家から――脱走。脱出?とりあえず松尾君の家の敷地からは出てしばらく。本当は駅の方へと走る予定だったけど、猛獣ちゃんがね。必死すぎたから駅ではなく、間違って畑?の方へと走って――そのまま森?の中に突っ込んでしばらく。
でもまあ――松尾君の家からはそんなに離れてないはずだし――上手に私は松尾君のところに戻れるように大きく円を描くように走っているはずだから――にしてもぜんぜんどこにも出ないんだけど――まあ大丈夫だよねー。
そして、私の手元にあるカメラは無事。つまり――今のところ画像。写真は私の手の中。
「――はぁ……はぁ。ちょ、先輩!!松尾君の家散らかしてきちゃったから早く止まれ!片付けしないとでしょ!」
「無理ー」
そういえば――そんなこともありました。でも素直に止まる私ではない!
「止まれ!」
猛獣との追いかけっこ――楽しい。ってか――楽しくてちょっと忘れていた。
「六石君!どこー?」
そうそう、お助け必要だよ。ってことで一応叫んでおいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます