第465話 松尾家の秘密 ~超ドタバタ劇~

 「――松尾君!まだ洗濯してないよね!?」


 俺が――誰のものかわからない。かわいらしいパンツとブラジャーを持ったタイミングで洗面所のドアが開いた。


 あれ?俺お巡りさん行きかな?

 

 左手にパンツ。右手にブラジャー……おっと、洗面所へと入って来た結崎空見ると逆になるか?って、そんなことはどうでもいいか。

 というか、俺地味に冷静なのはなんだろうか?いろいろ脳内であきらめた?それともなんやかんや言いつつも彼氏?特典で許してもらえると脳内で思っているところがあるのだろうか?

 または――すでに今までいろいろあって、この程度では動じない身体になったか――って、これは動じないとだめだよな。無反応は無反応で失礼のような――ちなみにパンツ。ブラジャーともにかわいく。綺麗――って、そんなことを再度思っている場合ではないか。


「――えっと」

「……」


 だが。何を言えばいいのか。言葉が出てこない。

 あとこの状況の説明はどのようにしたらいいのだろうか?などといろいろ考えるがいい案が出てこない。

 ちなみに洗面所へとやって来た結崎は――茹でたタコのように一瞬でなっている。耳まで真っ赤。大げさに言えば手足まで真っ赤――って、さすがにそこまではか?いや、でもマジで真っ赤っかで――目を回して倒れるのではないだろうか?とかとか思ってしまうような感じ。もしかして頭のてっぺんから湯気――って、やはり俺が冷静すぎる気がする。

 なぜに俺冷静――いやいや、冷静ではない。なんか両手に普段は持っていてはいけない物を持っているので――って、これは手放した方がいいのでは?でもこの場に落とすのは落とすでダメだと思うし――洗濯かごに戻すのもおかしな状況だと思うし。

 というか、結崎の表情を見ればこれが誰のかはもうわかったようなもの。

 自分のでなければ――そりゃ少しは似たような反応をするだろうが。ここまで恥ずかしがるようなことにならないと思うし――ならないよね?

 というか、マジでどうしたらいいのかな?

 結崎は完全にこちらを見てフリーズしている。

 俺は俺で入り口に、結崎が立っているため移動できないというか。そもそも両手に持っているものをどうしたらいいのか。

 というか。先ほどからずっと結崎に見せているような状況だが――これはこれでダメなのでは?


「――えっと――何も見てないことはないけど――かごに入っていたんだけど……」

「……わ……あわわわわぁぁぁぁぁ」

「?」


 何とか俺が結崎に声をかけると――結崎が壊れた?と、思った瞬間だった。


 ダダッ。っと、足音が聞こえてきた。


「スクープの雰囲気を察知!シャッターチャンス!!」


 カシャカシャカシャカシャ……

 そしてカメラのシャッタ音がが連続――って、連写。


「――って、おお。松尾君が女の子パンツとブラジャー持って――って、脱がせた?」

「違うわ!」

「きゃああああああ」


 そして俺たちにそんなことを言ってきたのは――新聞部しかいない。というか七和先輩が飛んできた。なんで飛んで来たんだよ。

 あんた石見先輩たちと一緒じゃなかったの?違うの?もしかして終わった?それともマジで勘で来たの?

 ちなみに七和先輩の登場で悲鳴を上げたのは結崎である。というか――ちょっと待て。


 俺――未だにパンツとブラジャーを両手に持っているんですが――終わった?


「――ま、松尾君返して!」


 すると、ひったくるように結崎がパンツとブラジャーを俺の手から奪い取る――って、わかってはたが。結崎の物だったのね。というか風呂を使ってそのままかごに入れたと――馴染みすぎというか。いや、ここはあまり触れない方がいいか。って、そうじゃなくて。


「七和先輩はその写真消せ」

「――無理ー!」


 すると、七和先輩。じいちゃんばあちゃんの家の方へと逃走。


「あっ、ちょ」


 俺はさすがにあの写真はまずいと思ったので追いかけようとすると。


「ま、松尾君待って。あれは――」


 何故か結崎にストップをかけられたというか――。


「これは事故で。その――間違って――って、そうじゃなくて、とにかく忘れて」


 どうやら結崎は洗濯かごに自分の物を入れてしまった理由を説明したいらしいが――って、俺的にも弁明いうのか。今のはたまたまであってタイミングが――それにずっと持っていたのはちょっとしたパニックと言いますか――とかとかいろいろ説明したかったが。今はそれどころではない。

 だって――写真が逃げている。離れて行っているのだから。


「えっと――それはうん。だけど――結崎。七和先輩を捕まえないと。あの写真が公になる可能性が――」

「……あー!!!!!!!!」


 なので、真っ赤な顔をしてわたわたしている結崎に俺が声をかけると――どうやら結崎も気が付いたらしく。


「――そ、その写真消して!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「……大音量」


 どうだろう。松尾家周囲1キロ?もっと?聞こえてもおかしくないような悲鳴のような叫び声?で俺の前からくるりと向きを変えて、七和先輩を追いかけていく結崎だった。


 結崎……パンツとブラジャー手に持ったままだったが――いいのだろうか?とか思っていた俺は、まだ洗面所である。というか。あれは結崎に任せた方がいいような――下手に関われんと思っている俺だった。


 なお。この後のことを言うと――結崎が叫んだこともあり――皆さんに先ほどのことが広まったのは言うまでもないだろう。

 そして――。


 ドッシャンガッシャン――ドッシャン……。


「――家壊れないよな?」


 何やら松尾家の室内からなかなかの音が響いてきたのだった。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る