第441話 松尾家の秘密 ~金庫~

 地下室の隅っこで長宮さんが発見した金庫を眺める3人。


「本当に金庫だね」


 少し前まで石見先輩とやり取りをしていた結崎が今は少し前の俺と同じように軽く俺の身体に手を置いて覗き込む形で金庫を見ている。


「――ちょっとー。ゆえちゃん!?後輩くん!無視!?}


 階段の上から何か聞こえるのは――少しほっておいていいだろう。


「で、松尾君番号は?」


 すると再度目を輝かせた長宮さんが俺に確認してくるがもちろん答えは変わらない。


「だから知りませんよ」

「えー。お宝ありそうなのに。松尾君ところ何か隠し持っている可能性高くなったから」

「――奈都。目がお金」


 さすがにそれはないだろう――と、普通なら突っ込んでいたかもしれないが。今の長宮さんマジで結崎のいう通り目がお金のように見えなくもなかった。

 というか。お金と言うより『宝』という字が書いてあるように俺は見えるような――長宮さんこういうの興味深々になるんですね。


「ゆえだって気になるでしょ?」

「――そりゃまあ」

「ってことで、松尾君適当にいじってもいいかな?」


 そう言いながらダイヤルを掴む長宮さん。しかしダイヤルの他に鍵穴もある金庫なので――。


「ダイヤルだけで開かないような――」

「ダミーかもしれないじゃん」

「いや、ここまで作っていてダミーとかはないかと」


 わざわざこんなところに作ってる。いや、組み込んだ?金庫ダミーとは思えないが。でも大金が入っていることは大きさからしてないと思う。そりゃ細長い金庫だと奥にたくさんかもしれないが――さすがにそれはないだろうし。

 

 ガチガチガチ。


 すると長宮さんダイヤルを回しだす――って、俺の許可とか関係なくだな。

 ちなみにダイヤルなどは特にさびている様子もなく。普通に回る。

 そして多分鍵?に、なっているからだろう。地下室内にダイヤルを回すと音が響く。なおある場所で音が変わるということは――なかったので。


「――あー、わかんない!ゆえパス」


 長宮さんすぐにあきらめた。そして結崎が金庫の前にって――結崎もチャレンジするんかい。


「こういうのって――左にいくつ。右にいくつの繰り返しじゃないの?」

「――結崎。マジで開けようとしてる?」

「あっ――いや、なんか……楽しそうで?」


 ……ちょっとだけ。一瞬だけ。俺が声をかけるまで結崎は謎解きゲームでもしているような雰囲気があった――って、もしかしてこの2人は謎解きのゲームとか好きなのかもしれない。リアル脱出ゲーム?だったか。そういうの好きなのかな?


 そしてもちろんだが。結崎が触ったところで。金庫の扉は開くことはなかった。


「――ちょっと!ゆえちゃん無視とか酷い!泣くからね泣く!」


 すると、また地下室内が賑やかになった。


「石見先輩。大声出さなくても聞こえますよ」

「だってー。ゆえちゃんが無視してきたんだよ。せっかく後輩くんと2人っ――あっ。後輩ちゃん忘れてた」


 石見先輩が痺れを切らしてか。また下に降りてきた。

 って、石見先輩なんとなく予感はしていたが。長宮さんの存在忘れていた様子。


「ってか後輩くんたちをあのまま閉じ込めておいたら。ハーレムが出来ていた?一晩で2人と――」

「石見先輩意味わからない事は言わなくていいです」

「えっ?なになに後輩くん私も入ってほしかった?欲張りだなーまあ後輩くんなら私がいじめてあげてもいいけどー」

「そんなこと何も言ってない」


 本当に言ってない。なんでこの先輩こんなに楽しそうなんだよ。

 

「ってか――何して――って、金庫!?」


 すると石見先輩。気が付いていなかったのか。こちらの会話は全く聞いていなかったのか。結崎が触っている金庫に目を輝かせた。

 って、ここに居る女性陣マジでこういうの好きなのか。


「ゆえちゃん変わって変わって」

「ちょ、いろは先輩」

「いいじゃん。私が力技で開けるから。そしてお金持ち――」

「――だから大金はないですよ――多分」

「わかんないよ後輩くん。ここに金塊が――」

「それ長宮さんも言っていたような……」


 やはりここの女性陣考えることが同じらしい。


「こういうのはね――ガチャガチャして――」


 俺が少し呆れつつ石見先輩を見つつそんなことを思っていると。押しのけられた結崎が俺の後ろに。そして結崎が動いたことで、長宮さんが俺の横へと移動してきて――。


「松尾君のところもっと隠し部屋ありそうだね」

「いや――これ以上驚きがあってもなんだけど」

「あるよ。うん。あるね。あとで探検してみようか」

「――大人しくしてくれ」

「いいじゃんいいじゃん」


 そんなことを言ってきたのだが――ないでしょ。と思いつつも。どこかに何かあっても今の雰囲気ならおかしくないとも少しだけ思っている俺だった。


「ってか、こういうのって実は開いているとか?引っ張ったら開きました。とかないの?」


 ガコン。


「「「うん!?」」」


 俺と長宮さんが石見先輩の様子を見つつ話していると。石見先輩がダイヤルから手を放して摘まめるようになっていたところを摘まんで――引っ張ると。少しだけ重そうな音がした後――。


「――開いちゃった!?」


 金庫。開いちゃったよ。

 石見先輩もまさかだったらしく。めっちゃ驚いて口を開けて固まっていた。

 もちろんそれは俺と長宮さんもだが――。


 金庫開きました。中身は――。

 って、誰かこの部屋からいなくならなかったか?

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